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戦えない俺は見捨てて生き残る——戦場の違和感だけで成り上がる転生戦国記  作者: 黒狐
第7章 過去の檻

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第33話 断たれる流れ

「補給隊を立て直せ!!

奴隷列を止めるな!!」


真壁義臣の怒声が、

戦場へ響く。


乱れた蒼鷹軍が、

再び動き始める。


止まっていた荷車が押される。


散っていた兵が戻る。


指揮兵が走る。


崩れかけた流れを、

無理やり繋ぎ直そうとしていた。


⸻


森の影。


山は、

静かにそれを見ていた。


(……そこだ)


視線が動く。


前線ではない。


補給でもない。


見ているのは——


“繋いでいる人間”。


「伝令を通せ!!」


蒼鷹兵が森沿いを走る。


その瞬間。


兵の足が、

木の根に引っかかった。


「っ!?」


体勢が崩れる。


転倒。


抱えていた伝令筒が、

斜面を転がった。


次の瞬間。


山が影から現れる。


無言。


なまくら刀の柄で、

兵の顎を打ち抜く。


「がっ——」


倒れる。


山は伝令筒だけを奪った。


そして、

また森へ消える。


⸻


別方向。


「急げ!!

総大将へ伝えろ!!」


別の伝令兵。


だが——


馬が突然暴れた。


木陰から投げ込まれた石。


小さい。


だが、

馬の目元へ正確に当たる。


馬が嘶く。


兵が振り落とされる。


「なっ……!?」


その隙に、

山は荷車の裏へ滑り込んだ。


姿は見えない。


気配もない。


だが確実に——


“流れ”だけが断たれていく。


⸻


「伝令が来ねぇぞ!!」


「補給隊が動かん!!」


「どこが詰まってる!?」


蒼鷹軍が乱れ始める。


繋がらない。


届かない。


前線と後方が、

少しずつ分断されていく。


⸻


その頃。


鉄は真壁隊を押し返され始めていた。


「チッ……!」


重い一撃。


真壁の刀が叩き込まれる。


鉄が受け止める。


地面が削れる。


「どうしたァ!!」


真壁が吠える。


「先ほどまでの威勢は!!」


蒼鷹兵が押し寄せる。


鉄隊が後退する。


だが——


鉄は笑った。


「はっ」


血を吐き捨てる。


「熱くなってんのは、

テメェの方だろ」


真壁の顔が歪む。


「山狐ぇぇ……!!」


怒声。


その瞬間。


また周囲の兵が動く。


真壁に引っ張られるように。


鉄はそれを見て、

口元を歪めた。


(……乗ってんな)


⸻


一方。


奴隷列。


蒼鷹兵が、

逃げかけた奴隷兵を蹴り飛ばした。


「勝手に動くな!!」


鞭が振るわれる。


奴隷兵が倒れる。


さらに槍が向く。


「次逃げたら斬る!!」


その瞬間。


弥助の目が変わった。


「……あ?」


低い声。


蒼鷹兵が振り向く。


「なんだ貴様——」


次の瞬間。


弥助の拳が顔面へ叩き込まれた。


骨が砕ける音。


兵が吹き飛ぶ。


「ふざけんな……!!」


怒声。


弥助が突っ込む。


蒼鷹兵を掴み、

地面へ叩きつける。


「テメェらが!!

好き勝手弄びやがって!!」


迅が目を見開く。


「弥助!!

来んな!!」


弥助は止まらない。


蒼鷹兵が槍を向ける。


だが——


ヒュッ


矢。


槍兵の喉を貫く。


さらにもう一本。


角笛役が落ちる。


「なっ!?」


木の上。


孫六が静かに弓を引いていた。


「……うるさいんすよ」


淡々とした声。


次の矢。


旗持ちが倒れる。


蒼鷹兵が混乱する。


「どこから撃ってる!?」


「旗を守れ!!」


だが、

孫六はもう別の木へ移っていた。


⸻


迅が荒い息を吐く。


周囲を見る。


管理兵が減っている。


角笛も止まった。


指示も乱れている。


奴隷兵たちの空気が、

少しずつ変わり始めていた。


「……なんだよ」


誰かが呟く。


「蒼鷹が……

乱れてる……?」


恐怖だけだった空気に、

初めて別の色が混じる。


⸻


その時だった。


森の奥。


「——今だ」


低い声。


次の瞬間。


玄隊が飛び出した。


横腹。


蒼鷹軍の再編隊へ、

一気に突っ込む。


「なっ——!?」


槍。


矢。


短刀。


一瞬。


本当に一瞬で、

再編しようとしていた隊列が裂けた。


玄は無言のまま、

敵兵の喉元へ刃を滑らせる。


崩れる。


再び。


蒼鷹軍の流れが、

完全に断ち切られた。


⸻


真壁義臣の顔が歪む。


「伏兵だと……!?」


兵たちが動揺する。


前線。


補給。


奴隷列。


全部が、

同時に乱れ始める。


真壁は奥歯を噛み締めた。


「山狐ぇぇぇ……!!」


怒声が響く。


だが。


もう戦場は、

真壁の手から零れ始めていた。


⸻


森の影。


山は静かに、

その光景を見ていた。


そして——


小さく息を吐く。


(……まだ終わらない)


視線が動く。


奴隷列。


迅。


揺らぎ始めた空気。


山は静かに、

闇へ溶けた。


(続く)

読んでいただきありがとうございます。

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