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戦えない俺は見捨てて生き残る——戦場の違和感だけで成り上がる転生戦国記  作者: 黒狐
第4章 見捨てる覚悟

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第14話 崩れる均衡

翌朝。


山たちは、あの情報屋のところへ向かっていた。


黒鉄郷のざわめきは、昨日よりわずかに強い。


(……動いてるな)


そう感じさせる空気だった。


⸻


「また来たのか」


軽い声。


情報屋は、変わらない様子でそこにいた。


(……見てるな)


これまでの結果も、今いる人数も。


⸻


「で?」


視線が山に向く。


「次の仕事だ。今回は——ちゃんと金になる」


弥助が鼻で笑う。


「前も似たようなこと言ってなかったか?」


「今回は違う」


情報屋は肩をすくめる。


「状況が動いてる」


⸻


空気が、少しだけ変わる。


「今は三つ巴だ。黒曜、蒼鷹、白蓮」

「どこか一つが欠ければ——均衡は崩れる」


山は黙って聞く。


「先日、黒曜は例の軍師を連れて蒼鷹を叩いた」


「あの時の奴だな」

弥助が呟く。


「ああ。あいつだ」


(……やっぱり、あいつか)


⸻


「で、その黒曜が——今度は背後を突かれてる」

「白蓮だ」


玄が、わずかに視線を上げる。


「破竹の勢いで押してる。境界線の拠点は二つ落ちた」

「残り一つ。それが落ちれば、この一帯は白蓮のものだ」


沈黙。


⸻


「だから防衛しろ、って話だ」


弥助が顔をしかめる。


「……は?」

「なんで黒曜守んだよ」


⸻


その横で、孫六が小さく息を吐く。


「いやぁ……また面倒そうなの来たなぁ」


軽く笑いながらも、視線は情報屋から逸らさない。


「こういうのってさ、だいたい巻き込まれる方が損なんだよな」


弥助が横目で見る。


「お前も嫌そうだな」


「嫌に決まってんだろ」


即答。


だが声は軽いまま崩れない。


「でもまぁ……話は聞いとかないと後で困るしな」


(線を引いてる)


山はそう見ている。


⸻


情報屋は続ける。


「報酬は弾むぜ」


弥助がうなる。


「いやぁ……金は欲しいがなぁ……」


⸻


「白蓮か」


山が小さく呟く。


「動きが早すぎる」


情報屋が口角を上げる。


「噂じゃ、“雷姫”がいるらしい」


「雷姫?」

弥助が眉をひそめる。


「速さと火力が異常だとよ」


「見た奴は“雷みたいだった”ってな」


⸻


一拍。


「一撃で、馬ごと斬られたって話もある」


「避けたと思ったら——次の瞬間には首が飛んでた、とかな」


(……速さ特化)


(正面で当たれば終わる)


沈黙が落ちる。


⸻


その時、孫六がぼそっと言う。


「うわ……それは嫌だなぁ……」


笑い混じり。


だがその目は一瞬だけ鋭くなる。


(距離でしか勝てないタイプか)


すぐに視線は戻る。


「ま、俺は遠くからやるだけだから関係ないけどさ」


軽い。


だが“役割の線”は明確に引いている。


⸻


(どうする)


黒曜は消耗。

白蓮は勢い。


守る側は——不利。


⸻


「……受ける」


弥助が顔を上げる。


「マジかよ」


「ただし」


山は続ける。


「正面からはやらない」

「場所と時間は選ばせてもらう」


情報屋が目を細める。


「無理なら受けない、か」


「……ああ」


⸻


一拍。


情報屋が笑う。


「いいねえ。そういうの、嫌いじゃねぇ」


⸻


弥助が頭をかく。


「なんか、もう決めてる顔だな……」


「勝てる形ならな」


⸻


玄が静かに言う。


「前は任せろ」


弥助が呆れる。


「お前そればっかだな」


⸻


その時、孫六が軽く肩をすくめる。


「まぁさ、やるならやるでいいけど」


少しだけ間を置いてから続ける。


「ちゃんと帰れる形で頼むわ。そうじゃないと面倒増えるし」


軽い冗談。


だがその中に“死にに行く前提では動かない”線がある。


⸻


山は視線を外す。


(……巻き込む)


一瞬だけ、引っかかる。


「……無理はするな」


ぽつりと言う。


「お前が言うな」

弥助が即座に返す。


玄は何も言わない。

だが、わずかに頷いた。


⸻


「場所は?」


「ここから三日」

「急げば二日半だが——余裕見とけ」


「分かった」


山は短く返す。


⸻


五人は歩き出す。


黒鉄郷を背に。


⸻


道中。


荒れた道。


「結局、また戦場か」

弥助がぼやく。


「……まあな」


⸻


自然と隊列ができる。


前に玄。

横に弥助。

後ろに鉄、孫六。


孫六は歩きながら、ぼそっと言う。


「こういうのってさ、慣れたくないんだよなぁ……」


弥助が笑う。


「慣れろよもう」


「無理だっての」


軽く返す。


だが視線は常に周囲を拾っている。


(距離を保って全体を見る)


その立ち位置は崩れない。


⸻


(形になってきたな)


山は前を見る。


(俺は戦えない)


だが——


(見ることはできる)


(選ぶことも)


⸻


小さく息を吐く。


(今度は——)


(流されない)


⸻


視線を細める。


(どう動かすか)


まだ、答えはない。


だが——


考えることは、やめない。


(続く)

読んでいただきありがとうございます。

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