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戦えない俺は見捨てて生き残る——戦場の違和感だけで成り上がる転生戦国記  作者: 黒狐
第11章 堕ちゆく者編

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第130話 新たな国主

白蓮城前。


 三人のもとへ、ゆっくりと足音が近づいてきた。


「……玄庵か」


 黒狼が呟く。


「お疲れ様でした。見事、白蓮の防衛に成功なさいましたね。流石でございます」


 現れた六道玄庵は、いつものように穏やかな笑みを浮かべていた。


「今頃になって、なんの用だ」


 黒狼は冷たく言い放つ。


「いえ、私には戦う術はありませんので。こうして戦後処理に来たのですよ」


「まだ終わってないだろ」


「そうですね。しかし、先々を考えて行動するのが私の性分ですので」


「……勝手にしろ」


 黒狼は興味を失ったように視線を逸らす。


「それでは、皆さんは白蓮城にてお休みください。牙城はこちらで運びますので」


 玄庵は倒れている牙城へ目を向ける。


「落ち着き次第、改めて今後のことを話しましょう」


「…………」


 黒狼は答えなかった。


 ただ、玄庵に背を向ける。


 その後ろを、九鬼と黒川が続いていった。


     ーーーー


 黒曜城。


 黒曜国主――黒曜景綱は、拘束された状態で城内へ連れてこられていた。


 その前に立つのは、白蓮四天王の一人、赤堂烈真。


「降伏は賢明な判断でした」


 赤堂は国主を前にしても、礼儀を崩さずに言った。


「これで、流れる血は大きく減りました」


 景綱は赤堂を見据える。


「……黒曜の民、兵士たちの命の保障は、必ずしてくれ」


「勿論です」


 赤堂は迷うことなく答えた。


「白蓮四天王、赤堂として。その約束を無碍には致しません」


「……ならば、よい」


 景綱は静かに目を伏せる。


「それでは、白蓮城へ連行します。そこで改めて、処遇が伝えられるでしょう」


「ああ」


 景綱は抵抗しなかった。


 分かっている。


 自分がどうなるのかなど――。


 拷問の末に処刑されるのか。


 あるいは、白蓮城へ到着する前に暗殺されるのか。


 そんな考えさえ、景綱の脳裏には浮かんでいた。


 もはや、自分の死に方を選べる立場ではない。


 それでも――。


 最後に、黒曜の民と兵士たちの命だけでも守れた。


 それだけで十分だった。


 やがて、黒曜国主・黒曜景綱が降伏したこと。


 そして――黒曜が敗北したことが、各地へ伝えられていく。


     ーーーー


 その報は、影月城を守る黒曜の軍師――久我景定のもとにも届いた。


「…………」


 報告を聞いた久我は、静かに目を閉じる。


「……そうか」


 その一言に、全ての想いが込められていた。


 久我は、しばらく黙っていた。


 そして――。


「これ以上の抵抗は無意味だ」


 ゆっくりと目を開く。


「開城せよ」


「はっ!」


 兵士が頭を下げる。


 久我は負けなかった。


 だが、その上が敗北した。


 国主が降伏した以上、ここで戦いを続ける意味はない。


 影月城もまた、戦を終えることとなった。


 抵抗する者もいた。


 それでも――。


 黒曜国主の降伏を知った各地で、少しずつ戦が止まっていく。


 白蓮四天王二人による、背水の陣となった決死の攻撃。


 それによって黒曜本国が落ちたことで、戦の終わりは瞬く間に広がっていった。


 長きにわたって続いた白蓮と黒曜の戦。


 その終わりが――。


 今、各地へと広がっていた。


     ーーーー


 黒曜城が落城したとの報告が届いてから、しばらくが経った頃。


 白蓮城。


 城内の一室に、白蓮に残る上層部たちが集められていた。


 その中央に立つのは、六道玄庵。


「さて」


 玄庵が、集まった者たちを見渡す。


「皆さんの賢明な判断と行動により、黒曜との永きにわたる戦に終止符が打たれました」


 誰も口を挟まない。


 皆、安堵したような表情を浮かべていた。


 長かった。


 ようやく終わったのだ。


 そう思っていた。


 そして――。


「今、黒曜国主、黒曜景綱が赤堂殿に護衛され、この白蓮城へ連行中との報が届きました」


「……!」


「黒曜国主が?」


「もうこちらへ向かっているのか?」


 部屋にざわめきが広がる。


 だが、降伏したのであれば納得もできる。


 玄庵はそんな一同を見ながら、静かに続けた。


「ただ……」


 その一言で、ざわめきが止まる。


「今現在、白蓮には国主がおりません」


「…………」


「黒曜の国主と対談するにしても、国主不在というのは何かと面倒です」


 再び、室内がざわつき始める。


「確かに……」


「国主がいない以上、どうする?」


「そもそも、今後の白蓮を誰が――」


 様々な声が飛び交う。


 そんな中――。


 玄庵は、静かに口を閉じた。


 そして、わずかな間を置く。


「そこで――」


 全員の視線が、玄庵へ集まった。


「私は、白蓮城を守り、黒曜三騎士を退けた黒狼殿を――」


 玄庵は、ゆっくりと言葉を続ける。


「白蓮の国主に推薦します」


「…………!?」


 室内に――。


 大きな動揺が走った。


(続く)

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