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戦えない俺は見捨てて生き残る——戦場の違和感だけで成り上がる転生戦国記  作者: 黒狐
第11章 堕ちゆく者編

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第128話 乱入者

黒曜本国――黒曜城。


「黒曜に我らを止める術はない!」


「もう少しだ!!」


 赤堂烈真が声を張り上げる。


「押し込めぇぇぇ!!」


 その勢いは凄まじかった。


 背後の備えなど、ほとんど考えていない。


 ただひたすらに、目の前の黒曜城を落とすことだけに集中していた。


 もし今、久我が戻り、背後から強襲していれば――。


 白蓮軍は壊滅していただろう。


 だが。


 その気配はない。


 久我景定は、未だ影月城にいる。


 ならば――。


「行けぇぇぇ!!」


 赤堂が叫ぶ。


 白蓮兵が一斉に城門へ殺到する。


 破城槌が何度も叩きつけられ――。


 そして。


 ドガアァァァ!!!


 巨大な音が響き渡った。


 黒曜城の門が、ついに開いた。


「よし!! よくやった!!」


 赤堂が拳を突き上げる。


「このまま雪崩れ込めぇぇぇ!!」


「「「うおおおおおおお!!!」」」


 白蓮軍が一斉に城内へ流れ込んでいく。


 その様子を――。


 天守から、黒曜景綱は見ていた。


「…………」


 黒曜の軍事については、全て久我景定に一任している。


 景綱自身は内政に力を注いできた。


 だが――。


 もはや、それに集中できる状況ではない。


「突破されたか……」


 景綱は城下を見下ろす。


 黒曜兵たちは、必死に抵抗している。


 だが、勢いに乗った白蓮軍を止めることはできない。


「……もはや、これまでか」


 誰にも聞こえないほどの声で、景綱は呟いた。


 そして――。


「誰かおるか!」


「はっ!」


 近くにいた家臣が駆け寄る。


「白蓮に降伏を申し入れよ」


「な……なんと!?」


 家臣が目を見開く。


「我らはまだ戦えます!!」


「……いや」


 景綱は静かに首を振った。


「それには、犠牲が多く出過ぎてしまう」


「…………」


「皆、黒曜のためによく戦ってくれた」


 景綱は城下を見つめる。


「ここからは、私の仕事だ」


「……っ!」


 家臣は唇を噛みしめた。


「し、承知ぃぃ!!」


 悔しさを滲ませながら、降伏のための使者が駆け出していく。


「…………」


 その背中を見送り――。


「ふぅ……」


 景綱は小さく息を吐いた。


「……皆、すまないな」


 誰にも聞こえないほど小さな声で、そう呟いた。


     ーーーー


 その頃――。


 白蓮城。


 城内では、未だ激しい戦いが続いていた。


 九鬼影宗と牙城兵馬。


 二人の戦いは、未だ決着していない。


 だが――。


 その力の差は、明らかだった。


 ガキィッ!!


 ガンッ!!


 ギンッ!!


「くっ……!」


 九鬼は必死に牙城の攻撃を弾いていた。


 だが、それが精一杯だった。


「おらおらァァァ!!」


 牙城が怒声を上げる。


「てめェも死ねやァァァ!!」


 仲間である黒曜三騎士の二人を殺された怒り。


 それが牙城を完全に暴走させていた。


「くっ……!」


 九鬼は歯を食いしばる。


 防ぐ。


 受ける。


 そして、なんとか距離を取る。


 それだけで精一杯だった。


「死ねェェェ!!」


 牙城が再び刀を振り下ろす。


 ガキィィィン!!


 九鬼が受け止める。


「ぐっ……!」


 その瞬間だった。


「…………」


 九鬼が、僅かに眉を動かした。


 先ほどまで周囲から聞こえていた、激しい戦闘音。


 兵たちの怒号。


 武器がぶつかり合う音。


 それらが――。


 いつの間にか、静かになっていた。


「…………?」


 牙城も僅かに動きを止める。


 二人とも、自分たちの戦いに集中していた。


 そのため、周囲への意識が薄れていたのだ。


 そして――。


「わあぁぁぁ!!」


「ぎゃあぁぁぁ!!」


「――!?」


 遠くから、悲鳴が聞こえた。


「なんだ!?」


 九鬼が振り返る。


 悲鳴が、徐々に近づいてくる。


「うわぁぁぁぁ!!」


「逃げろぉぉぉ!!」


 そして――。


「グオォォォォォォ!!!」


 巨大な影が、戦場へ飛び込んできた。


「…………」


 九鬼の目が見開かれる。


 大熊。


 巨大な熊が、戦場を駆け抜けていた。


「ああァ?」


 牙城が振り返る。


 その瞬間だった。


 ドガァァァ!!


「ぐおっ!?」


 大熊の巨体が牙城の横っ腹を薙ぎ払った。


 牙城の身体が大きく吹き飛ぶ。


「なっ……!」


 九鬼は驚きのあまり、動けなかった。


 だが――。


 大熊の目が、九鬼を捉える。


「グオォォォォ!!」


「――っ!」


 大熊が九鬼へ向かって突進する。


 その腕が振り上げられた。


「てめェ……!」


 その瞬間。


「動物風情が戦に乱入してんじゃねェ!!」


 ズバァァァァ!!


 振り上げられた大熊の腕が、斬り落とされた。


「オオオオオッッ!!!」


 大熊が絶叫する。


 そして――。


 その目が、牙城へ向いた。


「ああ……?」


 牙城がゆっくりと戦闘態勢をとる。


「俺を狙うってか……?」


 大熊が唸る。


「グルルルル……」


 牙城も刀を構えた。


「上等だァァァ!!」


「グオォォォォ!!」


 次の瞬間――。


 ガンッ!!


 バンッ!!


 ガシャッ!!


 ズバァァァ!!


 ドガァッ!!


 巨大な熊と牙城が、互いにぶつかり合う。


「うおォォォォ!!」


「グオォォォォ!!」


 互いの咆哮が戦場に響き渡る。


 ズバァァァァ!!


 ドガァァァァ!!


 激しい攻撃が、互いの身体を襲う。


 そして――。


 ダダァァァンッ!!


 巨体が二つ、地面へ倒れた。


「…………」


 九鬼は、ただ呆然とその光景を見つめていた。


「こ、これは……一体……」


 何が起きているのか。


 理解が追いつかない。


 そして――。


 その背後から。


 ゆっくりと。


 二つの人影が歩いてくる。


「…………」


 九鬼が振り返る。


 そこにいたのは――。


 黒狼と黒川だった。


(続く)

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