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戦えない俺は見捨てて生き残る——戦場の違和感から全てを操る転生戦国記  作者: 黒狐
第11章 堕ちゆく者編

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第120話 崩れゆく白蓮

戦場は、すでに混沌と化していた。


 白蓮兵と黒曜兵が入り乱れ、至る所で怒号と悲鳴が飛び交っている。


「押し返せ!」


「敵を止めろ!」


 白蓮兵たちは必死に刀を振るう。


 だが、黒曜軍の勢いは衰えない。


 次々と押し寄せる敵兵を前に、白蓮兵は少しずつ後退を余儀なくされていた。


「くそっ……!」


 赤堂烈真が刀を振り抜く。


 一人。


 二人。


 三人。


 立て続けに敵兵を斬り伏せる。


「まだだ!」


 息を荒くしながら、赤堂は前を睨みつける。


「ここから先は、一歩も通さねぇ!」


 再び敵兵が押し寄せる。


 赤堂は迎え撃つ。


 だが――。


 ガキィン!


 激しい金属音が響いた。


「ぐっ……!」


 刀を受け止めた瞬間、赤堂の身体が僅かに沈む。


 力で押し返そうとする。


 だが、別の敵兵が横から斬りかかってきた。


「危ない!」


 近くにいた白蓮兵が割って入る。


 敵の刃が、その兵の肩を深く斬り裂いた。


「ぐあっ!」


「おい!」


 赤堂が叫ぶ。


 兵はその場に倒れ込んだ。


 赤堂の顔が歪む。


「……くそったれ!」


 怒りに任せて刀を振るう。


 敵兵が倒れる。


 しかし――。


 また一人。


 さらに一人。


 黒曜兵が次々と押し寄せてくる。


 倒しても、倒しても終わらない。


「……多すぎんだろ」


 赤堂の呼吸が荒くなる。


 握る刀にも、僅かな震えが見え始めていた。


「赤堂!」


 後方から氷牙の声が飛ぶ。


「下がれ!」


「馬鹿言え!」


 赤堂は叫び返す。


「ここで下がったら、もっと押し込まれるだろうが!」


「ならばせめて周囲を見ろ!」


「……!」


 赤堂が振り返る。


 その瞬間――。


 黒曜兵の刀が迫った。


「赤堂!」


 氷牙が飛び込む。


 ガキィン!


 間一髪で刃を弾き飛ばす。


 だが――。


「ぐっ……!」


 氷牙の脇腹に、別の刃が掠めた。


「氷牙!」


 赤堂が目を見開く。


「問題ない」


 氷牙は傷口を押さえながら立ち上がる。


「浅い」


 そう言ったものの、指の隙間から血が滲んでいる。


「強がんな!」


「貴様に言われたくはない」


「……チッ」


 二人は背中を合わせる。


 周囲を黒曜兵が取り囲んでいる。


「……囲まれたな」


 氷牙が呟く。


「だからなんだ」


 赤堂が刀を構える。


「二人なら、まだやれる」


「ああ」


 氷牙も刀を握り直す。


「ここで倒れるわけにはいかない」


 二人が同時に踏み出した。


 再び刃が交わる。


 赤堂が敵を斬る。


 氷牙がその隙を突いて別の敵を倒す。


 二人の連携は、まだ崩れていない。


 だが――。


 戦場全体を見れば、その奮戦が戦況を変えるほどのものではなかった。


 白蓮兵は、確実に減っている。


 負傷者が増えている。


 後退する兵も増えていた。


「隊長!」


 遠くから兵の声が響く。


「西側が持ちません!」


「こちらも限界です!」


「援軍はまだか!」


 次々と届く報告。


 だが、答えはない。


 白蓮には、もうそれだけの余力が残されていなかった。


「……くそ」


 赤堂が歯を食いしばる。


「こんなに押されるとはな……」


「二人がいなくなった穴は大きい」


 氷牙が静かに答える。


 その言葉に、赤堂は黙り込む。


 相良義隆。


 雷姫。


 白蓮を支えてきた二人の四天王。


 二人を失ったことによる影響は、想像以上に大きかった。


「だが……」


 氷牙が前を見る。


「だからといって、ここで諦めるわけにはいかない」


「……ああ」


 赤堂も頷く。


「最後までやってやる」


 その時だった。


 遠くから、ひときわ大きな歓声が上がった。


「道が開いたぞ!」


「進めぇぇぇ!」


 黒曜兵たちの声。


 赤堂と氷牙の表情が変わる。


「……何だ?」


 氷牙が周囲を見渡す。


 白蓮軍の一角が、大きく崩れていた。


 そこから黒曜兵が一気に流れ込んでくる。


「まずい……!」


 氷牙が叫ぶ。


「中央を抜かれる!」


「止めるぞ!」


 赤堂が走り出す。


 だが――。


「ぐっ!」


 走り出した瞬間、赤堂の足が僅かにふらついた。


「赤堂!」


「……大丈夫だ!」


 赤堂は無理やり身体を起こす。


 傷は増えている。


 血も流れている。


 それでも刀を握り直す。


「俺はまだ戦える!」


 氷牙もまた、傷を押さえながら立ち上がる。


「ならば、私もだ」


 二人は再び戦場へ向かった。


 だが――。


 その先に待っていたのは、これまで以上の黒曜軍だった。


 白蓮兵は必死に抵抗する。


 しかし、一人、また一人と倒れていく。


 戦場の至る所で白蓮の旗が倒れていく。


 その光景を見ながら、氷牙は静かに呟いた。


「……もう、ここだけの問題ではないな」


 赤堂が顔を上げる。


「何?」


「このままでは……」


 氷牙はその先を見る。


 白蓮軍の防衛線。


 そのさらに奥。


 白蓮本国。


「本国まで、戦火が届く」


「……」


 赤堂は言葉を失った。


 その時――。


 遠くから、再び黒曜軍の大きな鬨の声が響き渡った。


「進めぇぇぇ!」


「白蓮を落とせぇぇぇ!」


 黒曜の旗が、ゆっくりと前へ進んでいく。


 白蓮の防衛線は、確実に崩れ始めていた。


 そして――。


 戦場の先では、黒曜軍が次なる攻撃へ向けて動き始めていた。


 白蓮本国へ。


 そこを落とせば、白蓮の命運は尽きる。


 赤堂は血の滲んだ刀を握り締める。


「……まだだ」


 氷牙も前を見据える。


「そうだ」


 二人は立っている。


 だが、その身体はすでに限界へ近づいていた。


 そして白蓮を覆う戦火は――。


 さらに大きくなろうとしていた。


(続く)

読んでいただきありがとうございます。

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