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戦えない俺は見捨てて生き残る——戦場の違和感から全てを操る転生戦国記  作者: 黒狐
第11章 堕ちゆく者編

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第118話 白蓮、窮地

白蓮への帰路。


 黒狼と九鬼は、ほとんど言葉を交わさなかった。


 二人とも表情は暗い。


 村で起きたことが、頭から離れない。


 その一方で、黒川だけはいつもと変わらなかった。


「いやぁ、それにしても大変でしたねぇ」


「……」


「黒狼殿?」


「……なんだ」


「いや、ずいぶん静かだなぁと思いまして」


「……少し黙っていてくれ」


「は〜い」


 黒川は素直に口を閉じた。


 だが、その表情からは何を考えているのか読み取れない。


 三人がしばらく歩いていると、前方から一人の男が馬を走らせてくるのが見えた。


 男は三人の姿を確認すると、馬から飛び降りるようにして駆け寄ってきた。


「申し上げます!」


「何事だ?」


 九鬼が尋ねる。


「現在、白蓮が黒曜軍による攻撃を受けております!」


「……なに?」


「九鬼殿、黒川殿は急ぎ帰還し、迎撃せよとのことです!」


「なんだと!?」


 九鬼の表情が一変した。


「黒曜が、今この時に……」


 黒狼も顔を上げる。


 村から戻ったばかりだというのに、今度は白蓮が戦場になっている。


「急ぐぞ!」


 九鬼の声に、三人は白蓮へ向かって駆け出した。


 その頃――。


 白蓮側の本陣では、すでに激しい戦闘が繰り広げられていた。


「くそが! やつら、こっちが落ち着く前に攻撃してきやがった!」


 赤堂烈真が怒鳴りながら敵兵を斬り伏せる。


 だが、周囲から押し寄せる黒曜軍の勢いは止まらない。


 牙城兵馬。


 篠塚景虎。


 鷺森宗玄。


 黒曜三騎士による猛攻が、白蓮の陣を容赦なく削っていく。


「それが定石だからな」


 氷牙が冷静に戦況を見ながら答えた。


「あの軍師のやりそうなことだ」


 その脳裏に浮かぶのは、黒曜軍師――久我景定。


 白蓮内部の混乱。


 四天王の相良義信と雷姫を失ったこと。


 そして、その直後の隙。


 久我がこの好機を見逃すはずがなかった。


「……相良殿の仇討ちをする機会でもある」


 氷牙が刀を握り直す。


「俺たちがここで負けるわけにはいかない」


「ああ!」


 赤堂が吠える。


「俺も前回は不覚を取ったが、今回はそうはいかねぇ!」


 赤堂の目に殺気が宿る。


「白蓮に攻め込んできたことを、後悔させてやる!」


 だが――。


 二人の意欲とは裏腹に、戦況は厳しかった。


 相良義信。


 雷姫。


 白蓮を支えていた二人の四天王を失ったことで、白蓮の戦力は大きく落ちている。


 それに加え、黒曜軍はこの機を逃すまいと一気に攻勢を強めていた。


「押せぇぇぇ!!」


「白蓮を落とせ!!」


 黒曜兵たちの怒号が響き渡る。


 白蓮の兵たちは必死に食い止めるが、少しずつ押し込まれていく。


 その頃、黒曜軍本陣。


 戦場を見渡す高台で、一人の男が静かに戦況を眺めていた。


 黒曜軍師――久我景定。


 その目には、一切の焦りがない。


「悪いが、この好機をみすみす逃す必要はない」


 久我は淡々と口にする。


「この戦で、白蓮を滅ぼす」


 周囲の兵へ次々と指示を飛ばしていく。


「右翼をさらに押し込め。中央は崩すな。敵が退けば追撃しろ」


「はっ!」


 兵たちが一斉に動き出す。


 その少し前方では、黒曜三騎士が戦場を駆けていた。


「やれやれ、久我殿も人使いが荒いですねぇ」


 鷺森宗玄が刀を振るいながら愚痴る。


「そう言うな」


 篠塚景虎が敵兵を斬り伏せる。


「これで白蓮を滅ぼせば、楽ができるのだ」


「はっはァ!」


 牙城兵馬が豪快に笑う。


「強ェ奴とやれりゃ、なんだっていい!」


「相変わらずですねぇ」


 宗玄が呆れたように笑う。


 三人はそれぞれの戦い方で、白蓮の陣を切り崩していく。


 戦場に怒号が響く。


 刀がぶつかり合う。


 血が舞う。


 白蓮も必死に抗う。


 だが、黒曜の猛攻は止まらない。


 白蓮と黒曜。


 両軍の命運を懸けた戦いの火蓋が、今まさに切って落とされた。


(続く)

読んでいただきありがとうございます。

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