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戦えない俺は見捨てて生き残る——戦場の違和感から全てを操る転生戦国記  作者: 黒狐
第11章 堕ちゆく者編

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第114話 麻痺する感覚

洞穴の奥へと進むにつれ、賊の数は減っていった。


逃げ場を失った者たちは武器を手に取り、必死に抵抗してくる。


だが、黒狼の足は止まらない。


一人を斬り、また一人を斬る。


黒刀・孤影が振り抜かれるたび、赤い血が宙へ散った。


斬った。


その事実は理解している。


だが――以前のような震えは、もうなかった。


手も、足も動く。


呼吸も乱れていない。


ただ、目の前にいる敵を斬る。


それだけだった。


二人も殺してしまえば、後はもう何人斬り殺そうが、段々と何も感じなくなってくる。


そんなことを考えながら、黒狼は目の前の賊へと刀を振り下ろした。


「慣れてきましたね〜」


隣で賊を斬り殺した黒川が、いつもの軽い口調で言った。


黒狼は黒刀に付着した血を振り払う。


「慣れてなどいない。ただ殺さなければ、こちらが殺されるからだ」


「へぇ〜」


黒川は楽しそうに笑った。


「それを世間では、慣れてきたって言うんですけどね〜」


黒狼は答えなかった。


遠くから、賊の叫び声が響いた。


「ぎゃあぁぁぁっ!」


「敵わねぇ!! 逃げろぉぉぉ!!!」


「どこに!?」


「後ろからも殺られてんだぞ!!」


「知らねぇ!! とにかく逃げ――」


スパッ。


言葉の途中で、その男の首が落ちた。


身体が地面へ崩れ落ちる。


その後ろに立っていた黒川が、血の付いた刀を軽く振った。


「いやいや、行かせるわけがないでしょ〜」


黒川は倒れた男を一瞥すると、刀の切っ先を地面へ向ける。


そして、血に濡れた刀で土を指した。


「お前たちが還る先は、ここなんだから」


「ひぃぃぃ!!!」


残った賊たちが恐怖に顔を歪める。


武器を握る手が震えていた。


もう戦う気力など残っていない。


ただ、生き延びるために逃げる。


「ほらほら、狩り放題だよ!」


黒川の声が洞穴に響く。


逃げ惑う賊たちの背後へ、黒狼も向かった。


一人。


また一人。


背中へ黒刀を走らせる。


逃げている。


抵抗することもできない。


それでも、黒狼の手は止まらなかった。


斬る。


血が飛ぶ。


男が倒れる。


それを見ても――何も思わなかった。


黒狼は一瞬だけ、自分の手を見た。


震えていない。


以前なら、刀を握る手が震えていた。


今は違う。


「……」


黒狼は何も言わず、再び逃げる賊へと視線を向けた。


そして、その背中を追った。


どれほどの時間が経ったのか。


やがて、洞穴の中から人の気配が消えた。


外では、賊が身を隠していた洞穴が炎に包まれている。


黒煙が夜空へと立ち上っていた。


その周囲には、幾人もの賊が地面に伏している。


黒狼は燃え上がる洞穴を黙って見つめていた。


やがて、後方から足音が近づいてくる。


「……あらかた片付きましたね」


九鬼影宗だった。


その手にも、賊の血が付いている。


九鬼は倒れた賊たちを見渡し、小さく息を吐いた。


「これで村への被害はなくなるでしょう」


黒狼は炎から視線を外した。


「ああ」


そして黒刀・孤影を鞘へ収める。


「ご苦労だった。戻って村長に伝えよう」


「承知しました」


三人は洞穴を後にする。


その背後で、賊の住処は炎に包まれ続けていた。


黒狼は振り返らなかった。


ただ歩く。


人を斬ったという事実も。


何人殺したのかということも。


今はもう、考えなかった。


それが恐ろしいことだと気づくことさえなく――。


(続く)

読んでいただきありがとうございます。

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