第112話 狩りの始まり
黒狼は、副将の九鬼と黒川を従え、村へと到着した。
「村……か」
黒狼は、目の前に広がる光景を見渡した。
活気がない。
村を歩く人の数も少なく、ようやく見つけた村人たちも、皆一様に痩せ細っていた。
その顔には、生気がない。
「……ここまでとは」
思わず黒狼が呟く。
その隣で、黒川が村の様子を眺めながら、面倒そうに口を開いた。
「いや〜、遠路遥々来たのに出迎えもないとは。帰ります?」
「おい! そんなこと言うんじゃない!」
九鬼がすぐさま黒川をたしなめる。
「冗談ですよ」
黒川は悪びれる様子もなく肩を竦めた。
「まずは村長の元へ行く」
黒狼がそう言って歩き出す。
三人が村の奥へ進んでいくと、一人の男が慌てた様子で駆け寄ってきた。
「おお!! ようこそおいでくださった!! もはや来ないものとばかり……」
「そのつもり――」
「ゴホンッ!!」
黒川が口を開いた瞬間、九鬼がわざとらしく咳払いをして遮った。
「いや、失敬。待たせてしまい、すまなかった」
九鬼が頭を下げる。
「いえいえ! 来てくださっただけでも感謝でございます!」
村長は何度も頭を下げた。
「それで、賊は?」
黒狼が話を進める。
「はい……恐らく、そろそろ来るはずです」
村長の顔が曇った。
「最早この村には、渡せる物もございません。ならば次は、代わりのものを用意しておけと……」
「代わりのもの?」
黒狼が眉を寄せる。
「……女です」
「……っ」
一瞬、空気が止まった。
黒狼は拳を握り締める。
「そこまで奪うのか……」
怒りを滲ませながら、黒狼は問いかけた。
「賊の場所は分かっているのか?」
「はい……この村の北にある山奥の洞穴に巣食っているようです」
「そうか」
黒狼は立ち上がる。
「なら、こちらから仕掛ける」
「あ、ありがとうございます!!」
村長が深々と頭を下げた。
黒狼は振り返り、二人を見る。
「出るぞ」
「それじゃ〜、狩りといきますか」
黒川が楽しげに笑う。
「油断するなよ、黒川」
「その時は九鬼ちゃんが助けてね」
「お前には必要ないだろ」
九鬼は呆れたように返した。
黒狼は二人のやり取りを聞きながら、北の山へと視線を向ける。
「ご武運を!」
村長の声を背に、三人は賊の巣食う山へと歩き出した。
(続く)
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