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戦えない俺は見捨てて生き残る——戦場の違和感から全てを操る転生戦国記  作者: 黒狐
第3章:逃亡と決断

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第11話 敗戦の先

煙は、まだ上がっていた。


遠く。

黒く、空を汚すように。


「……負けたな」


弥助が呟く。


山はすぐには答えなかった。


目の前の光景は、答えを必要としていない。


道の脇には倒れた兵が転がっている。


動かない者。

うめく者。


助けに行く余裕は、どこにもない。


(今は……無理だな)


視線をわずかに外す。


「……これから、どうする」


弥助が言う。


「戻るのか? 鷹司に」


山は少しだけ間を置いた。


「戻っても、また同じ場所に出されるだけだろうな」


「だろうな」


弥助が鼻で笑う。


玄は何も言わない。

ただ周囲を見ている。


無駄のない視線。

必要な情報だけを拾っている。


(こういう奴は、動きが速い)


山はそう思うだけで口には出さない。


「じゃあよ」


弥助が続ける。


「どこ行く?」


「野良は無理だぞ」


山は視線を落としたまま考える。


選択肢は多くない。


「雇われる形は、ありかもしれないな」


「ただし、無駄な戦は避ける」


弥助が肩をすくめる。


「傭兵か」


「近い」


完全な決断ではない。

ただの暫定だ。


その時だった。


「——助けてくれ!」


声。


道の先。


二人の兵が必死に走ってくる。


その背後には追う影。


(追撃か)


数は多くない。

だが、動きは揃っている。


山は一瞬だけ見た。


(崩せるか)


確実ではない。


だが、何もしないよりはまだいい。


「やるならやる」


短く言う。


弥助が顔を向ける。


「無理なら?」


「引く」


それだけだ。


玄が短く頷く。


弥助も舌打ちしながら頷く。


「毎回それだな」


弥助が小石を蹴る。


乾いた音が走る。


追っていた側の視線が一瞬だけ揺れる。


その瞬間、山は動いた。


正面ではない。

端。


一番崩しやすい場所。


「っ……!」


一人の足が乱れる。


致命ではない。

だが十分だ。


流れが崩れる。


「散れ!」


山の声で、二人の兵が左右に逃げる。


敵の判断が一瞬遅れる。


追うか、止めるか。


その迷いで流れが切れる。


「離れるぞ」


山はそれ以上は踏み込まない。


必要以上に追えば、こちらが崩れる。


弥助と玄もそれに従う。



しばらく走り、気配が消えたところで止まる。


敵はいない。


二人の兵は呆然としている。


「……助かった、のか?」


「なんで……」


山は答えない。


状況だけを見る。


(たまたま、じゃないな)


小さな噛み合わせがあっただけだ。


「運がよかっただけだ」


そう言う。


弥助が笑う。


「軽いな」


玄は黙ったまま二人を見ている。


その時、一人が名乗った。


「……鉄だ」


体格のいい男。


続いてもう一人。


「孫六だ」


細身の男。

軽い笑い混じりだが、目だけは周囲を切っている。


そしてすぐに肩をすくめる。


「助けてくれーって叫んで正解だったな。危ねぇ危ねぇ」


山は一瞬だけ見てから言う。


「状況を聞きたい」


それだけだ。


鉄は短く頷く。


孫六もすぐに姿勢を整える。


「はいよ。俺らも命拾いした側だしな、ちゃんと話すわ」


弥助がため息をつく。


「また面倒が増えそうだな」


山は答えない。


増えるかどうかは、まだ分からない。


ただ一つだけ分かるのは、


(今のままじゃ足りない)


それだけだった。


五人は、まだ仲間ではない。


ただ同じ方向に歩き出しただけだ。


それでも——


戦場は、少しだけ形を変え始めていた。


(続く)

読んでいただきありがとうございます。

この第11話も内容を見直し、より主人公にとって戦う理由を描き、また今回は助けた2人がいるので今後どう活躍するか。

面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです。

続きも毎日更新していきます。

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