表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全滅まであと何日  作者: taki
第7章〜ゴライアク大陸編〜
129/134

129.進軍

 バイオレットは一匹のハネコを捕まえ、闇のなかを飛んでいた。そこで、母家樹(ぼやじゅ)の根元が燃えさかるのを目撃した。


 近くでロドガワ族がその様子を見つめている。何てことだ。あろうことか、巣城に火をつけられてしまった。人間ならともかく、蜂は火を見ただけでパニックを起こす。この群れも終わりだ。あの人間ども、ただでは済まさない。バイオレットは歯ぎしりして、護平達の顔を一人一人見る。全員、記憶した。それから高度を上げ、母家樹の頭頂部にある出入り口に入った。


「大公殿下、お出ましでございます」

 母家樹の家臣達がひざまづいて挨拶する。

「お前達も早く避難しなさい」

「はっ?」

「火事だ」

 バイオレットはそっけなく言い、中層階へ向かった。


 バイオレットは女帝蜂のアグネスから、裏切り者は必ず始末するよう言われている。アーシュラはほかの大陸の女王蜂よりは賢いから、任せてもいいとは思った。だが、その目で見届けろとの命令だ。

 皮肉なものである。アグネスの実子である女王達が信用されず、実子ではない自分が信用されている。さっさと済ませて、火事から逃れなければ。


 やがて、蜂人達の部屋にたどり着いた。アーシュラがリクとカイの首根っこを掴んで、松脂の山に顔を突っこませている。木の子は部屋の隅で、バサバサと葉を震わせていた。

「そのへんにしておけ」

 バイオレットがそっけなく言い、冷たい視線を送る。

「ああ、これはこれは。大公殿下」

 アーシュラはすぐに手を引っ込め、ほかの蜂人達とともに目の前でひざまづく。リクとカイはすんでのところで窒息死を回避し、床に寝転び、ゴホゴホと咳きこんだ。

「で? そいつらか?」

 気だるい調子でバイオレットが尋ねる。

「さよう、裏切り者にございます」

「人間の子ども三人組は?」

「兵士が接触したようで、その者達ももうじきここへ──」


 アーシュラが説明しようとした矢先、一匹の蜂人が体を震わせ、飛びこんできた。

「おおせの通り、人間達が城内に侵入しました。ですが……」

「どうしたの?」

 アーシュラが顔をしかめる。

「人間が。人間が、奇妙な音を鳴らして上がってきます! 聞いた者はみんな硬直してしまって──」

 来た。それは一度会ったことがある、スカイの仲間だ。バイオレットは苦い顔をむける。

「少しは頭を使え」

 バイオレットが、手元の布袋をゴソゴソと漁りだす。皆が見てるなか、バイオレットはそこから丸くて茶色いものを取り出した。ヘカトンケイルマツの、マツボックリだ。その鱗片(りんぺん)を二枚はぎとり、耳の穴に突っこむ。

「こうすれば聞こえない。伝達は脳内会話でするように」

 そう言ってバイオレットがマツボックリを差し出す。

「なるほど。ありがとうございます。承知しました」

 アーシュラはマツボックリを受け取り、部下達とそれぞれ耳の穴に差し込んだ。

(ただちに人間を殺せ)

(了解)

 軍の総指揮官が指示を送り、部下達とともに部屋を飛び出した。

 それをバイオレットとアーシュラ、それに侍従長が見送ったときだった。木の子が背後からしのびより、自分の枝をするすると伸ばすと、三人の首を絞めあげた。


 その頃、スカイ達は順調に穴の中をのぼっていた。

 近づく蜂はロイが大方、イーヨで対処してくれる。ときどき、触覚が折れててこちらに突進してくる個体には、スカイが弓を引いたり、オリバーがナイフで仕留めた。

 ふと、ミケールが妙な鳴き声を出す。ナーゴナーゴと、いつもより低くて太い声だ。

「ねえ。そういえばさ、樹液以外に、なんか変な匂い、しない?」

 スカイが鼻を手で覆う。

「だから皆、お前みたいに鼻利きじゃ──」

 ロイは呆れて言い返そうとして、自分も鼻をつまんだ。確かに臭う。

「何かが焼ける匂い……火事だ!」

 白い煙に気づき、オリバーが目をこすった。

「えっ、なんで」

 ロイの顔は真っ青だ。

「山火事か……」

「いいから、急ごう!」

 スカイが先導切って、スピードをあげた。折りしも、目指す方向から蜂人が突っこんできた。ロイがイーヨを全力で弾いているのに、オリバーが拡声器をあてているのに、まったく効かない。ミケールが怖がってロイに抱きついてしまった。真っ暗な穴のなか、蜂人がどんどん距離を詰めてくるのは分かる。スカイは目を閉じ、弓に矢をつがえた。

「ラコロシュテ・プレレクテ・ピカ。スコティーボ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ