第92話 第三章後編 閑話 過去話③
ワーウルフ対策が纏まらずに5分が経過した頃、稲守が帰って来るのと同時に、相手側の準備ができたようで、声がかかる。
『待たせて済まない!こちらは準備ができた!相手は誰だい?』
「お、次はルルちゃんか」
『この声はにんちゃんかい!?久しぶりじゃないか!どうだい?一戦やらないかい?」
「すまないルルちゃん!今回は他の人の付き添いなんだ!」
そんなやり取りをしていると、加賀は話をさえぎるようにエリアに入る。
「お話もいいですがそろそろやりましょう」
いつになく、怖い顔をしている加賀。
他の3人は察しているが、稲守は気づかないようだ。
『あら、綺麗な子がきたもんだ。いいのかい?その可愛い顔に傷がついちまうよ?』
「構いません。それより、彼との関係を聞きたいぐらいですが、今は戦うのみです」
『ふふふ、いいね。じゃあやろっか』
加賀の装備はいつものライフルではなく、フルオートショットガンを採用していた。
弾は大粒タイプのバックショットシェルを採用、殺傷能力とストッピングパワーを求めた結果だ。
ワーウルフに銃は不向きとされているが、高速で移動しながら撃てる実力があれば威力はあるので有用だ。
稲守が使うハーフライフルより弾薬の数が多く、連射速度も上だ。
加賀とルルが同時に走りだす。
先ほどの吉川と同様に加賀は身体強化でワーウルフの移動速度に着いて行く。
ドンッ、ドンッとマズルフラッシュによって、加賀が射撃しているのがわかるが、見えるのは光りと煙だけだ。
『やりづらいねそれ!』
加賀に足払いを繰り出したり、長い腕を振って攻撃をしかけるも、加賀は一定の距離を保ちつつ、ワーウルフの隙を見つけてトリガーを引き、銃撃を浴びせる度にワーウルフの四肢に少しずつ弾痕が増えていく。
大粒タイプのバックショットシェルは本来近距離では余り弾はばらけないのだが、加賀が使っている弾は少し違うのか、2~3mという近距離でも弾がばらけているように見えた。
『長引くと不利なら!』
ルルもロロと同様の技を繰り出す。
『空爪連撃!!』
ロロとは違い、低い体勢から放つ低空、避けづらい腰より少し上あたりにと避けづらい攻撃を放つ。
飛んでくる攻撃を加賀は被弾しないようにと避けつつ、ショットガンのトリガーを引いていく。
ドンッ!ドンッ!ズガガと音を立てながら地面には抉れた後や大きな穴が形成されていく。
(油断してますね)
射撃するタイミングをわざとずらし、避けるので精一杯な風に装っていると徐々に攻撃の溜めが長くなっていく。
威力は上がるが、連撃でない分、加賀としては避け安くなっているのだが、ギリギリ服を掠めるように動き、相手の油断を誘う。
一発、さらに長くなった溜め攻撃に合わせ、今までしてこなかったスライディングで避けつつ、腰にある手榴弾のピンを抜くと同時に片手でショットガンを操作、射撃と同時に手榴弾の操作音を消す。
(3、2、1 …今!)
ドンというショットガンの射撃音と共に手榴弾を投げる。
これは以前使った特区研究所製の閃光弾で、ルルの手前で爆発したそれは大きな音と共に爆音が戦場に響く。
『キャンッ!?』
耳と視界が潰されたルルは隙を晒すまいと闇雲に空爪連撃を放つも、そんな攻撃が当たるわけもなく、背後をとった加賀は背中にショットガンをフルオートで撃ち込む。
ドンドンドン!
残った弾倉3発分。
至近距離で食らったルルは胴体に風穴を開ける。
『うそっ…でしょ…。あなた…やるわね』
そう言い残しルルは光の粒子となって霧散した。
「はぁ、はぁ、はぁ」
ショットガンを杖がわりにし、身体を支える加賀。
吉川と違ってワーウルフを完全に倒したからか、戦場中央に宝箱が出現する。
よたよたと宝箱に近づくと中には、黒い袋と一枚の紙が入っていた。
(雌型ワーウルフ用戦闘用着?ただの下着みたいだけど…身体強化魔法の負荷の軽減と、出力の増加効果に、自動で体にジャストフィット?、さらに身体を引き締める効果!?防寒に防暑!?なんですかこれは!)
黒い袋は他の人に見られないようにする処置なのだろう。
手にもち、皆が待つ方に必死に戻る。
身体強化の長時間使用は思ったより身体への負荷があるようで、解除後の疲労で歩くのもままならない。
なんとか戦場を出ると同時に、稲守に抱かれそのまま姫抱きされてトレントエリアへと運ばれていった。
「加賀さんつっよ」
「同意します。身体強化の練度、そしてあの胆力は素晴らしいですね」
「そろそろチエリさんの番?」
「ふふふ、それはどうでしょう」
~一般自衛隊員の挑戦~
お袋へ
元気かな?
今更手紙なんてって思うだろうが、もしかするともう会えないかと思うと居ても立っても居られなくてさ。
もし、この手紙と俺の隊服とかバッチが届いたら、察してくれ。
俺を育ててくれてありがとう。
島上 忠正
「では、次は自分が行きます」
『俺の相手は誰だ!?このガガが相手になるぞ!』
自衛隊、茨城県霞ヶ浦駐屯地、一等陸曹、島上忠正。
茨城県で活動している調査員で、ダンジョン庁としての評価は、中の上という評価だが、それでもオークを倒し、ナイトゴーレムを倒しているので、一定以上の実力はある。
島上は身体強化を行使し、エリアに入ると同時に全力でワーウルフに向かって突撃する。
『ほう!自ら向かってくるとはな!』
ガガも同時に駆け出す。
「…」
両者が激突する瞬間、島上は構えているアサルトライフルを捨て、腰にあるソードオフショットガンに手をかける。
背中側にあるので、相手からは銃の存在はわからないのか、隙が出来たと思い右腕を大きく振りかぶる。
『得物を捨てるとは!』
ガガの腕が当たったと誰もがそう思った。
しかし何故か空ぶってしまい、大きな隙を晒したところに島上はショットガンのトリガーを引く。間合いを計っていたのか、直前で止まったことでガガの攻撃を避けたのだろう。
ドンッと大きな音と共にガガはのけぞってしまう。
『何!?』
胴体、それも至近距離のショットガンの威力は、加賀が証明しているが防御が間に合ったせいか致命傷にはならず。
しかし、防御に使った振りかぶった左腕は使い物にならなくなっていた。
『くそっ!』
ガガは後ろに下がろうとバックステップをするがそれを逃がさない。
接近し続け、しつこく、粘り強く逃げるガガを追いかける。
(片腕を潰せたのは好機!逃がさず押し込む!)
島上は集中する。
魔法は詠唱でバレてしまうが、それも使いようだ。
「火、速、点、狙、射、閃…」
『魔法か!なら・・』
詠唱しながらショットガンのトリガーを引く島上。
ガガは魔法が来ると思い隙が出来たと思い腕を振りかぶるが、思い切り胴体に直撃する銃弾。なんとか壊れた腕で守るが、範囲の広い散弾タイプな為か被弾は避けられない。
島上が持っているソードオフショットガンの装填数は6発、使ったのは2発なので、残り3発あるのだが、それを知らないガガは攻撃ができないこの状況にイラつき頭に血が上ってしまう。
さらにはショットガンをガガに向けたら魔法を放ったりと、島上は小技を多用するようだ。
『くそが!』




