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稲守任三郎とダンジョン戦記  作者: 正方形の木箱
第三章 新人教導任務 新養老ダンジョン編

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第80話 養老ダンジョン新人教導任務⑪

トカゲモドキは枯れ木に登ったり隠れたりとちょこまかと動く。

ときおり、「キュウ?」と鳴き声を出しながらまるで空き家の内見のように見定めていく。


「キュッ!キュウ!」


枯れ木のてっぺんに登り、こちらに声をかけているのか、何度か鳴き声を発する。


「気に入ったのかい?」


「キュウ♪」


先ほどまでと少し違い、テンションの高いような、明るい鳴き声を出しながらちょこまかと動き回る。

これまで何度も日本語でしか喋っていないのだが、理解しているのか気になって聞いてみる事にした。


「お前は俺の言葉がわかるんだな。日本語なのにわかるなんて頭良いんだ」


「キュウ?」


首をかしげながら鳴くトカゲモドキは言葉がわかるのか、わからないのか。

もしかするとこちらの感情か何かを読み取っているのかもしれない。


「まぁいいか。さて、後は何が必要か…エサ入れと、給水用の容器か…。どっちも無いし木を加工して作るか」


収集箱から手頃な木材を取り出し、加工のためにキッチンへと移動する。


キッチンではすでに笹山も戻ってきており、手には給水用のバケツを持っていた。

おそらくバケツに土やらエサやらを入れてきたのだろう。


「あ、おかえりなさい。それがその子のおうちですか?」


「あぁトカゲモドキ、ヤモリはこういう木で家を作って隠れ家を作ってあげるのがいいんだよ。安心して眠れるようにね」


高須は暇していたのかカップに珈琲を入れて飲んでいるようだ。

室内には珈琲の香りが漂う。


「トカゲモドキ…名前も決めないと呼びにくいが、いなくなると寂しくなるしなぁ…」


「んー、ペットとか飼った事ないので私はどうも」


二人して悩んでいると、押戸が開く音がした。

笹山が帰ってきたのだろう。


「ただいまー」


「楓おかえりー」


高須が楓を手助けしている間に、稲守は木を加工する。


「あ、ヤモちゃんのおうちとかどうですか?」


ヤモちゃん。恐らくこのトカゲモドキだろう。

トカゲモドキは正式にはヤモリなので、その事を知っていたのだろう。


「ヤモちゃん…いいかも」


「何が?」


土や葉のついた枝、ヤモリの餌になりそうなものをかき集めて外から帰ってきた笹山は適当に考えた名前を良いと言われ、少し困惑しているようだ。


「名前、まだ決まってないんだー」


「そうなの?トカゲモドキって確かヤモリでしょ?名前つけるといなくなった時あれだし、ヤモリもじってヤモちゃんかなーって。ね?」


笹山はトカゲモドキを見つめながら話しかける。


「キュウ?」


トカゲモドキも笹山を見つめ返す。


「名前、ヤモちゃんでいい?」


「キュウ♪」


トカゲモドキのヤモリ改め、ヤモちゃんは気に入ったのか、笹山に飛び乗り頭ではなく肩まで上る。


右へ左へと肩を移動しながら何かを確認しているのか、先ほどみたいに「キュウ?」と鳴きながら見定めている。


「キュゥ…キュッ!」


ピョンと飛び乗って木を加工している稲守に飛び乗り、頭へと移動する。


「お前か、名前は決まったのかい?」


「ヤモリのヤモちゃんです。楓が後腐れないようにって」


正直なところ、稲守的にも問題ない名前だと思った。

後腐れないってのも同じ考えで、覚えやすい名前でもある。


「ヤモちゃんか、じゃあま、家は作るけど好きに出入りしてくれ。後で出入口も作っておくから好きな時にな。餌は俺たちがいないときは…それぐらいわかるか」


その後は木を削り出し、エサ入れと水入れを作り、物資等を入れ込んだ箱に入れ、ヤモちゃんの家とした。

置き場所はキッチンの横で、デッドスペースとなっていた場所に置いた。


「本当は水槽みたいに見れるのがいいけど、好きなように出入りするって考えたらこれでいいだろう」


「キュウ?」


枯れ木のてっぺんが丁度箱の縁より上にある為、ヤモちゃんの様子がそこに居たら見れる程度になっている。

普段は箱が壁となっているため、ストレス軽減にもなるという算段だ。


その後は持ってきた水の量等を確認したり、魔法の練習をして一日が終了した。


次の日、再び魔法の訓練をする。

場所は木の根元で、的は丸太や、岩で代用している。


戦い方に関しては笹山は近接魔法と、土の槍や銃弾生成による遠距離の併用でほぼ確定。

問題は高須の方だ。


近接魔法も中遠距離魔法も全て問題無く使えるのだが、本人の気質もあって、近接は苦手だそうだ。

中遠距離魔法が良いのだが、そもそも中遠距離魔法はそこまで多くない。


というのも、風刃が使いやすすぎるという問題がある。

各属性のものも作られており、今の所、効かないといった事象もないため、これで十分なのだ。


「いいんじゃないか?風刃と水刃があれば」


「もう少し距離があって威力があると良いんですけどね」


稲守と高須が相談している横で、二人用に開発した魔法、風裂掌で岩を粉砕していた。

高須も使えるようだが、モンスター相手だと少し不安があるそうだ。


検証では風属性魔法は苦手だったはずなのだが、近接用の魔法は問題無く使用できる事が分かったのだ。

これにより人によって近接と中遠距離魔法で属性の得手不得手が変わる事が発見された。


稲守自身は近接は火、土、氷、風 中距離は火と風が得意で、遠距離は水のみ。

水属性の魔法は開発があまり進んでおらず、攻撃魔法も一番数がすくない。

あるのは水刃ぐらいで、氷属性の方が物理的なダメージも相まって開発が進んでいる。


「距離はなぁ…。俺も使いたいけど飛ばなくてなぁ…。AI駆使して色々開発してるようだけど、データベースを見てみると何かあるかもな」


5年前と比べてAIも発展しており、各国はAIを併用しての魔法の開発を国家プロジェクトとして進めている。

魔法は生存率にも戦闘力にも関わる為に皆必死だ。


一番進んでいるのはエジプトのようで、ヒエラティックを用いた詠唱を映像とかで見たがかっこよくて少し羨ましかったのを覚えている。


「アメリカとかは銃系の魔法が人気だし、色々見てみるといい」


「ですね。頑張って調査すれば見れるんですもんね」


以前にも説明したが、資料の閲覧には調査員の等級によって制限されているので、今の二人だとそこまで多くは見れない。


「ワーウルフを倒すと一気に解除されると思うから、そこが目標がいいかもな」


「そうだ、稲守さん、うちらってもうワーウルフと戦えそう?」


見た感じではわからないし、結局は戦ってみないとわからない。

身体強化弐式を使ったぐらいには度胸のある笹山は可能性はあるが、最低でもその先、四式を使えないとワーウルフの方に軍配があがる。


「まずはその手前のゴーレムナイトかな。そいつ倒したら身体強化の強いのが使えるようになる。大分辛いけどね」


今の時点の稲守はその先の身体強化を使っている。


「弐式で辛いのに?」


身体強化弐式は身体強化に加えて脚の強化を重点的に行う、参式で度合いをあげて、四式は参式に加えて思考速度を上げるものだが、長時間使うと気絶するぐらいには危険が伴う。


「四式はゴーレムナイト時点だと1分で気絶かな」


「「1分!?」」


凄いと思ったのか、短いと思ったのか。

インターネットでよく言われているそうだ。

俺ならこういう魔法を使う、身体強化なんて地味すぎる、誰でも簡単にできるとか言われているそうだ。


いつもご閲覧いただき誠にありがとうございます。


表題の件につきまして、7月から9月末まで更新頻度を現状の5日から、10日へと変更する事となりました。

更新をお待ちいただいている皆様には大変ご迷惑をおかけする事、お詫び申し上げます。


理由につきましては、私生活に大きな変化が予定されるため、どたばたと更新、執筆作業に影響が

出る可能性が高いからです。

10月以降からは、更新頻度を戻す予定ですので、お待ちいただけると助かります。


更新予定日 7月5日、7月15日、7月25日、8月5日、8月15日、8月25日、9月10日、9月20日、9月30日


以上、よろしくお願いいたします。


正方形の箱

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