サーシャの王子様
【アルバート家】
街でカルーアから強引にKissされたのに、散々照れ隠しを聞かされながら、ようやく我が家に帰って来たヒイロ
「いいかい兄さん、さっきの事は……ぜー~ーったい内緒だからね!…ガチャ、ただいま!」
家に帰ると……サーシャがアリスを看てくれていた
「アリスお姉さまは気持ち良く寝ておられますの♪」
アリスはかなり落ち着いてるらしかったが、せっかく街に出て買ってきたので、気付け薬と回復薬とハーブを混ぜて飲み薬を調合しようとした
「そういうのは得意だから任せてよ♪」
カルーアが調合に立候補してくれた…言うだけあって丁寧かつ素早く、調合を進めていく
「ん?果物も混ぜるのか?」
「そうだよ。甘さが加わると飲みやすいだろ?それに姉さんの好きな干しイチゴも混ぜるのさ♪」
それどころか本来は、薬成分以外の物は入れないのだが甘い系の果物の実をすり潰し、お子様舌のアリスにも飲みやすい様に工夫されていた
「ん?これはぁ?」
「気付け薬だよ。けど姉さんの好きなイチゴも入れたから美味しいよ」
「そうなのぉ?ゴクゴク…美味しい!」
そうして出来た薬を果実ジュースで、アリスに飲ませてあげていた。薬を飲まされると身構えていたアリスも、イチゴ味に喜んでいた
「喜んでもらえて良かったよ♪」
意外なカルーアの姿に、ヒイロもサーシャも感心していた。
【午後のキッチン】
起きてきたアリスも含めて4人で早めの晩ご飯を始めた
「カルーア、助かったわぁ。さすが私の妹ね!でもぉ、どこで調合を覚えたのぉ?」
「えーと…そう!孤児院で世話になってる時に、詳しい人から教わったんだよ」
「へー、そうなんだぁ。私の居た孤児院では、そういう授業無かったからぁ…でもぉ、身に付いてて凄いわねぇ!」
アリスはカルーアの調合技術を素直に褒めているが、カルーアの様子は少し変な感じだ。
「お兄ちゃんもありがとうねぇ!ダキッ♪」
「お、おい///」
ヒイロとカルーアに感謝のハグをしたアリス。2人とも照れているが、アリスは普通の表情だった。そんな光景を見ていたサーシャが……
「お姉さま達は孤児院だったのですね……羨ましいですの…」
3人とも父親のパーティの仲間に、それぞれ育てられていたから、養子にしてもらう前は孤児院に居たと考えていたアリスとカルーア。
「なんだい、サーシャは孤児院じゃなかったのかい?」
「サーシャは何処で義父さんに拾われたのぉ?」
気軽にサーシャに質問したカルーアとアリスだったが……
「…私はお義父さんに拾ってもらう前は奴隷商人の所に居ましたの…」
その言葉に驚いた2人の姉
静かに見守っているヒイロ
(しかし、あくまで予想だが…最近の治安の悪さから想定すると、奴隷と言う事はつまり…)
「お兄さまは気付かれた様ですね……そうです、身体を使って働いていましたの…」
そう言うとサーシャは、俯きながら一度左右に目を配らせた後に立ち上がると上着を脱いで、ヒイロの膝の上に座り彼の目の前に顔を近付けた
「おい、サーシャ?」
そして身体を擦り付けてきて、その小さく柔らかい指でヒイロの顔をなぞりながら、未成熟な下半身をヒイロの腰に擦りつけている
「ちょっとサーシャ、何してるのぉ!」
「そうだよ、兄さんには、そんな事をする必要は無いよ、やめるんだ!」
予想外の出来事に困惑するアリスとカルーア
しかしヒイロは、今回のサーシャの告白と昨夜の寝室での会話で、このサーシャの行動を理解した
「父親から聞いていたけれど、俺の父親と3人の親は3年前にパーティを組んだ。その1年後くらいに、俺の父親以外の3人も資金に余裕が出来たから養子を持とう…と言う話になったらしいんだ…」
「そうだね、わたしも…たぶんアリス姉さんとサーシャも2年前に養子としてもらわれたハズだよね」
「でもぉ、サーシャが奴隷として売られていたって、どういう事なのぉ?」
どうやらアリスとカルーアの親は孤児院に、養っていく孤児を引き取りに行ったようだが…サーシャの義父は奴隷市場に行ったみたいだ
「私が9歳まで育った小さな村は突然、戦争の敗残兵達に襲われましたの…村では略奪が行われ、金品を奪われ、大人達は殺され、女子どもは連れ去られましたの…」
サーシャから話される内容は、あまりに予想外過ぎて、俺たちはただ無言で聞くだけだった
「そして私と数人の子供は奴隷として、敗残兵達に連れて行かれましたの…ところで、姉さん達は白馬の王子様ってお話、聞いた事ありますか?そう…ピンチに現れ命懸けで助けてくれると言う人」
「おとぎ話とかで聞くヤツだね…」
カルーアはサーシャの話の内容に圧倒されながらも、何とか返事をした
「私たちを連れた敗残兵の人達は、移動しながら私たちを売る旅をしていましたの…でも、ある日…敗残兵の人達はモンスターの群れに襲われて、敗残兵の人達も奴隷の子も何人か死にましたの…」
アリスはプルプル震えながら聞いている。今にも涙がこぼれ落ちそうだ
「私は若い敗残兵の1人に守られて、モンスター達から逃げ切りましたの…そうですの、私のピンチを助けたのは奴隷商人に成り果てた、敗残兵だったんですの」
ヒイロはあらかた予想が付いた
9歳まで生まれた村で普通に育っていたサーシャは、戦争絡みで村を失ってから、かなりツラい生活を味わって来たのだろう
「サーシャの義父はかなり荒い戦いをする人で気性も難しいから困ったものだと、義父から聞いた事がある。サーシャの義父さんは孤児院でなく、性奴隷を買いに行ったんだな」
「…その通りですの……でも、義父さんの好みの女性は居なくて、ソコに居たのは幼い私たちでした。ソコで義父さんは、回復魔法が少し使える私を買い取ってくれたのですの」
「でもでもぉ、養子になったのなら、性行為?ってのはしなかったんでしょ?じゃあ、お兄ちゃんにもしなくて良いんじゃないかなぁ?」
アリスの考えの中には、義父とは言え小さな少女に性的に手を出す事は有り得ない前提で話をしている
「けど、サーシャは義父にその…性的な奉公を…してたんだね…」
カルーアは最悪の予想をして、サーシャに質問を投げかけた
「そうですの…」
サーシャは静かに首を縦に振った。息を飲むヒイロとカルーア。驚きで目をかっぴらいて固まるアリス
「義父さんは最初のうちこそ、娘として育てようとしてくれましたの…けれど男性の性欲は…特に義父さんのソレは抑え難いようで…苦しむ義父さんを可哀想に思ってしまい…私の方から誘ってしまいましたの…」
話の途中でアリスは泣きながらサーシャを抱きしめた
「ごめんなさい、アタシ年上なのにサーシャの苦労を何も知らないで…ごめんなさいぃ…」
カルーアもサーシャに抱きついた
「今度からは、わたし達が居るからね!」
「もう安心して良いんだよ」
ヒイロはサーシャの頭を優しく撫でた
「うあぁぁぁん!」
サーシャは泣き崩れた!
長年溜めてきた悲しさのダムは決壊し、サーシャの両目からとめどなく涙が流れ続けた
(やっと普通に暮らして良いのですね)
その小さな身体で、耐え難い辛さと悲しみを受け止め続けていたサーシャだが、この家に来てようやく苦しみから解放された
【三姉妹の部屋】
「やっぱり狭くないかい?」
「サーシャはお兄さまと重なって寝ますの♪」
「サーシャったら、ずるうぃ(笑)」
「今夜はゆっくり寝ような♪」
その日の夜、ヒイロたち三姉妹の部屋のベッドで、4人が重なって寝ることにした
(初めて…否定されませんでしたの)
この日サーシャは、アルバート家が普通の家族として暮らせる場所だと認識した
(こんなに温かい家族が、本当にあったのですね…)
アリスとカルーアもお互いの性格を理解できたので、気持ち良く眠ることができた
その夜。
サーシャは生まれて初めて"安心して眠る"という幸せを知った。そして四人は少しだけ本当の家族へ近付いた。
続く




