カルーアの落ち度
【4人でお出掛け】
「クンクン…人がたくさん居る場所はだいぶ離れているんだねぇ」
アリスが言うように、ヒイロの工房はヘルメスの街の東外れに建っている
「中心部から離れた方が土地代が安いという理由もあるけど、鍛冶屋の仕事は大きな音を立ててしまうだろ?だから、民家から離れた場所に建てようと思ったんだよ」
「まぁ!お兄さまはお優しいですのね♪」
サーシャが言ったようにヒイロは遠くて不便だが、街の人の騒音にならないように敢えて遠くに工房を建てたようだ
「結構な散歩になっちゃうね」
「運動不足解消も兼ねると思って我慢してくれ」
ヒイロの言葉に三姉妹は、全然気にしていないよ。と笑顔で答えた
カルーアの身体測定が終わり、ヒイロたち4人は街の中心部にある商業エリアに来ていた
「ちょっとカルーア、大丈夫なのぉ?さっきからなんだかぁ…フラフラしてるみたいだけど?」
「だ、大丈夫だよ、ア…姉さん。身体測定で兄さんの指使いが少しばかり激しかったから…身体が少し驚いているだけで、なんて事はないさ…あはは…」
カルーアは小悪魔的な態度だった。あえて卑猥に聞こえる言葉を選んで話をする……街の人に変な噂をされないか、心配になって仕方ない…
(そう言えば、妖精は悪戯好きが多いと聞くが、森の住人のエルフであるカルーアも同じなのだろうか?)
とりあえずヒイロは、街の中心に位置する冒険者ギルドにやって来た。彼女たちを新たに登録する為だ
「おっ、ヒイロ。娘さん達を連れて早速やって来たか」
50を超えたオッサンのギルマスは相変わらずの口調だ。どうやら心身共に調子が良いようだ
「おじ様、アタシたちをギルドメンバーに登録して欲しいのぉ……そうだ!サーシャはどうするのぉ、戦闘向きではなかったよねぇ?」
アリスが言うように家庭的なサーシャが魔族やモンスターとバトルするのは想像しにくいし、ましてや最年少の12歳だ。なので彼女の気持ちを尊重しなければ…
と、ヒイロは思ったのだが…2人の姉が心配だから、近場以外は回復役として同行したいから登録するらしい
「ここに書けば良いのかい?」
どうやら文字の読み書きは、カルーアが一番出来るようだ。スラスラと名前を書いていく
「ふぅ、出来ましたの♪」
3人の登録手続きをしていると、クエスト募集の大きめの木版を眺めていた2人の女性冒険者から声を掛けられた
「ハーイ!ヒイロ君が商業ギルドの方じゃなく、冒険者ギルドに来てるなんて珍しいわね」
「あら、今日は1人ではございませんのね。可愛らしい3人組ね。ヒイロが街の案内でもしてるのかな?」
双子の女性冒険者のシェリーとシャルルのリーリア姉妹だ
シェリーは刃こぼれが起きているショートソードを軽く叩きながら
「次のクエストを終わらせたら新しいソードを作ってもらおうかな?」
シャルルはくたびれている杖を持ち
「そうだ!私の杖も魔力が溜まりにくくなってるから、一緒にお願いしたいわね」
シェリーの話が終わるのを待っていたかのように、今度はシャルルが口を開く。
「分かった。2人分の素材を用意して待ってるよ」
長年一緒に戦ってきた双子らしく、互いの言葉を遮ることは一度もなかった。
そんなリーリア姉妹は、Cランクまでの任務をこなす冒険者だ
「クイッ」
その時カルーアがヒイロの袖を掴んで引っ張ってきた
「ちょっと兄さん、親しい付き合いの異性は居ない。とか言ってなかったかい?その2人とは妙に親しそうじゃないか!」
「あら青い髪のお嬢ちゃん、嫉妬させちゃったかしら?大丈夫よ、ヒイロはそんな軽い男じゃないから」
「ヒイロが冒険者だったら、パーティに参加して欲しいのですけれどね」
少し機嫌の悪くなっているカルーアさんから、双子との関係を聞かれた。と言うか、白状しろ!と言わんばかりの聞き方だったw
「2人はお客さんだよ。時折、武器防具の強化や修理を頼んでくれるんだ」
「割って入らせてもらうぞ。お嬢ちゃん達、この街には鍛冶屋は2つしか無くてな…街の中心部に工房を構えてる方は、王宮で技術を学んだ凄い職人さんだ。年季も技術も深いからな、凄い腕なんだ…まぁ、その分お高くてな」
そしてシェリーが話を付け加える
「ヒイロ君の工房は安くて、私たちの様な稼ぎの低いCランク冒険者には、年季は浅くても丁寧に仕事してくれるから凄く助かるのよ」
「なるほどね、兄さんがこの大きな街でも、それなり以上に評価されてるのが分かって安心したよ…さて、登録も終わった事だし買い物に行こうよ…悪い虫が付かないうちに。ね、兄さん!」
カルーアは、ヒイロが家族以外の異性と仲良く話しているのが気に食わないようだった
【商店通り】
「沢山のお店が並んでますの…活気のある街のお店は品揃えも凄いですのね。それはそうとカルーアお姉さま…先程の突っかかる様な言い方は、良くないと思いますの!」
家庭的なサーシャは街の人との、良好な関係の必要性を言っている様だ
「きっとぉ、カルーアはアタシ以上に大人の階段を登らされたからぁ、お兄ちゃんと仲良く話してた双子のお姉さんに嫉妬したのねぇ…カルーアもまだまだ子供ねぇ♪」
アリスは姉が妹を諭すような言い方をしていたが、カルーアはまだ、ご機嫌斜めの様だ
「そ、そんなんじゃないって…」
それから4人で街の店舗を見て回り、4人の食材と工房で使う材料を買い揃え、最後にダブルベッドと大きめの保冷庫を注文し帰路についた
「あの大きなベッドなら、3人一緒に寝られるだろ?」
「あら?サーシャはお兄さまと一緒で構いませんのよ♪」
「さ、サーシャ?」
サーシャの大胆な発言に驚くカルーア
ベッドや保冷庫等の大きなアイテムは、後でお店のスタッフが馬車で購入者の家まで送り届けるサービス付きだ
ひと通りの買い物を済ませながら、街の観光を済ませたヒイロたちは家に帰る事にした
帰るなり俺は採寸した時のメモを頼りに、アリスとカルーアの武器防具作りに入った
「カツーン、カツーン!」
その間、3人は買ってきた家具などの配置や食材などの整理をしていた
「うーん、ちょっと狭いかもねぇ…」
「お店で一番大きなベッドを買ってもらったんだから仕方ないさ」
「やっぱりサーシャがお兄さまと一緒に♪」
ダブルベッドを買いはしたが、三姉妹が並んで寝るには少し窮屈な様だ。それを除けば大体の整理はついたので…少し早いけど、3人はお風呂に入る事にした
風呂場では年頃の娘の3人の、キャッキャッ話し声が、工房で作業しているヒイロにまで聞こえてきていた
「アリスお姉さまは、細身なのに筋肉も多いですのね。速さを活かす戦闘向きの身体ですのね」
「確かに!アリス姉さんは戦闘向きだね。その貧相な胸では兄さんを誘惑するのは難しそうだねぇ(笑)」
「ちょっとぉ!ソレは酷いんじゃないのぉ!?…大体3人とも大して変わらないじゃないのぉ、プンスカプンなんだからねぇ!」
「それでも1番年上のアリス姉さんが、1番控え目な発育具合ですのね」
「う、うるさいなぁ…あれぇ!?ところでさぁ、サーシャ…おっきくなぁい?」
「そう言えば…そうだね…12歳でそのサイズは将来かなり大きくなるね…」
「あ、ありがとうですの///さて…お姉さま達。そろそろ出ましょう?」
「いや、わたしはもう少し入ってるよ。長風呂が好きなんだ」
アリスとサーシャはカルーアを残し、姉妹の部屋へと戻って行った
「ふぅ、骨格部分は出来たな…」
ヒイロは2人の防具作りに区切りがついた。耳を澄ますと、さっきまで聞こえていた姉妹の会話は静かになっていた
「さて、一汗かいたし、俺も風呂に入ってサッパリするかな」
道具を片付けタオルを取り、お風呂場に移動するヒイロ。しかし彼は知らなかった…カルーアがまだ、1人で残っている事を…
「ガチャ!」
誰も居ないと思って普段通りにドアを開けたヒイロだったが…
「えっ?……えぇ!兄さん!?」
突然ヒイロが入ってきたことに驚いたカルーアは、浴槽の脇に置いておいたバスタオルを掴んで巻き、身体を隠した
「はい!?カルーア、何故いまだ居るんだ?」
お風呂場が静かだったので、てっきりもう誰も居ないハズだと思って入ってきたヒイロは、予想外にカルーアと遭遇したので大きな声で驚いた
「あっ!ちょっと兄さん大きな声出さないで!2人にバレちゃうからぁ!」
「お、おう、そうだな…」
………………………………
その時、ヒイロの頭脳が珍しくある閃きへと辿り着いた!!
(昼間あんなにからかわれて恥ずかしい思いをさせられたんだ。少しくらいなら仕返ししても構わないよな?)
「カルーア達の防具を一生懸命に作ってたから、けっこう疲れたんだよなぁ。そんな俺に…優しい妹が背中を流してくれると…嬉しいんだがなぁ(ニヤ)」
「なっ!?ちょっと、ナニ言ってるのさ!」
ヒイロは今日、何度もカルーアにからかわれたのを思い出しちょっとした仕返しをしようと企んだ
「おいおい、騒ぐと2人にバレちゃうだろぉ(笑)それは困るんじゃないかぁ♪」
「ぐぅ、私とした事が、何たる落ち度なのさ…こ、コレっきりだからね!調子に乗ったら、許さないよ!」
「あんまり大きな声を出すとふたりに聞かれても知らないぞ(ニヤニヤ)」
カルーアは真っ赤な顔のまま観念したように小さくため息をついた。
「……こ、これっきりだからね。」
その夜、一番恥ずかしい思いをしたのは、果たしてどちらだったのだろうか…
続く




