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ヘルメスの三姉妹  作者: 龍之介21時
三姉妹との出逢い
27/44

ヘルメスの街 最大の危機

【大密林地帯】


「ぐっ!?グオァァァ!!」


「ふっ、偉そうな口を叩いていた割には大したことなかったね」


アドルフは上位のイフリートを地に伏せさせ、彼の生命のコアとも言うべきクリスタルに、クレリアソードを突き立てていた。


「キミ達が奪ったこの森の生命に謝罪しながら消えていくとイイ!」


「そうよそうよ!ハンセイしなさい!」


クレリアソードにチカラを込めて、クリスタルを貫き砕こうとした時だった…


「ま、待ってくれ!精霊どもには2度と、森や生き物を焼かせないように俺が教育し管理する。だから、見逃してくれないか?」


「生命乞いかい?今までのキミ達の行動から、その言葉を信じるに足るものがあるとでも?」

挿絵(By みてみん)

「どーせ、くちからでまかせよ!」


明るくヤンチャな風に振る舞っているリリアだが、アドルフがイフリートに接近しても火炎魔人の肉体から発する熱に焼かれないように、彼の肩に乗り直接耐火魔法をかけ続けている。


「そ、そうだな……ならばもうひとつ、俺の知るヘルメスの街にとって重要な情報を教えよう。それで……」


「話を聞いてからだな。森を焼いたキミ達を助けるに値するか?どうか?判断させてもらうよ」


「俺はこの密林を住処にしているのだが……ここ数日、この密林に100以上のゴブリンを操っている魔族の男が潜伏しているのを見た」


「うそ!?100ものゴブリンが?」


思わず驚くリリア


「それで?」


「今朝、魔族の男はゴブリンどもを率いて密林を出た。今頃ヘルメスの街は大変なことになっているはずだ……」


一瞬思考したアドルフだが……


「オーケー。街に戻ってその話が本当だったなら、キミ達が次に悪さするまで見逃してやろう。嘘だったら必ず討伐するからね!」


「マーキングっと♪」


リリアはイフリートの体内に小さな光の玉を入れた。


「しばらくはドコにいたってマホウでまるわかりだからね!」


いわゆるGPS機能の魔法をイフリートの体内に埋め込んだリリアを肩に乗せ、アドルフは全力疾走でヘルメスの街へと引き返した




【民家の屋根の上】


「ちょわぁぁぁ……パシっ、ガツっ!」


アリスは落下していくネックレスを追い掛け空中に飛び出すと…右手でネックレスをキャッチし、左手で窓の角を掴んで落下を食い止めた


「はぁはぁはぁ…間に合ったよぉ……」


「んしょ、んしょ……」


1呼吸入れてから壁を伝い、屋根上へと戻っていくアリス。この街は大家族の世帯が多いので、3階建ての家が基本だ。2階と3階の境目にいたアリスは上に戻ることを選択した。


「もうちょっとだぁ……」


屋根まであと少しまできた時だった


「ヴォォォォ…ヴォォォォ!非常事態警報、非常事態警報!ヘルメスの街に大量のゴブリンがなだれ込んでいます。市民の方は至急避難を!冒険者の方と警備隊の方は、大至急迎え撃ってください!」


「うひゃぁぁぁ!?」

挿絵(By みてみん)

アリスがよじ登っている民家の窓ガラスが、あまりに大きいサイレンに振動しているレベルの大きな警報が、街全体を覆い尽くすほどの音量で鳴り響いた。それに驚き手を滑らせたアリス



「くっ、アリス。どこまで行ったんだ……ん!?この警報は……マジかよっ!」


ヒイロは幼き日に1度、この警報を聞いたことがあった。その時は大地震が来て、街の家屋の半分以上が倒壊したほどの災害が起きた


「大量のゴブリンだと?……アリスを探している時間は無いか……すまん、アリス。先に家に戻っていてくれよ!」


ヒイロはアリスを探すのを諦め、背中のリュックを民家の影になる場所に置き、冒険者ギルド目指して走り出した




【街の正門】


街は酷い状況だった


「うわぁぁぁ、助けてくれー!」

「ゴブリンだぁ!」

「私の子が…誰か?」


惨殺される街の住人。連れ去られる女子供。100体を超すゴブリンが暴れ回っていた。そこへ……


「それ以上やらせるかよ!」

「女子供をヤツらから守れ!」

「くそが、なんて数だ!」


冒険者と警備隊が加わりゴブリン退治が始まったが、ゴブリンと冒険者と警備隊、逃げ惑う一般人が入り乱れる有様だった


「邪魔だ貴様らー!ズバッ!」

挿絵(By みてみん)

冒険者の中には、先日街中でアリスとサーシャを助けてくれたガルダンも、バスターソードを使い戦っていた




【繁華街】


「おっ!?あの店は……」


とある店を見つけたヒイロは一旦足を止め、その店に向かった。


「おーい!誰か居ませんか?」


「ひ、ヒイロさんですか?ゴブリンが大量に襲ってきたらしいです」


店の奥から初老の店主が、ヒイロの声だと分かり顔を出した


「すまん。ソードを2本売ってくれ。俺もゴブリン退治に加わりますから」


「この店の武器の半分は、ヒイロさんから購入したものです。好きなものを持っていってください」


ヒイロと商売上の契約をしている武器屋であり、話のわかる店主は無料で武器を提供してくれた


「ありがとう。助かります!」


ヒイロは使いやすい長さのソードと、少し短いソードを手に取った。その時……


「こんのぉ、ヤラシイ手で触んな!」


「助けて姉さん!……助けてヒイロー!!」


「ん?この声は……シャルルとシェリーさんか!」


ヒイロは声のした方に向き直ると、20体以上のゴブリンが輪になっていた


「きーさまらー!」


ヒイロは紅血化の能力を発動させ、2本のソードを巧みに操りゴブリンを背後からズバズバ斬り裂いた




【民家の屋根の上】


「くくく、ゴブリンどもめ盛大に暴れているな。俺もその間に例の家を探さなくてはな……」


ひときわ高い屋根の上から、この非常事態に街全体を見渡している男が居る。


「たしか、街のはずれに店を構えているとか言っていたな……ん?」


「誰かぁ……たぁすけてぇ!」


どこかの家を探している謎の男は、近くから助けを求める少女の声を聞いた


「くく、この出会い、何か意味があるというのか?」


男は少女の悲鳴に興味を抱き、声のする方へと向かった


「うひゃぁぁぁ!?」


アリスは警報音に驚いて手を滑らせてしまった。


「わわわっ!? また落ちるぅぅぅ!……ガシッ」


落下しながらジタバタと必死にもがいていると、履いていたズボンが屋根の突起に引っ掛かった。


「た、助かったぁ……」


しかし――


「ズルズル……あれ?なんかズボンがずれてるぅ!?」


アリスの体重がズボンに掛かり、徐々に脱げていた


(このネックレスを離して両手を使えば……うぅんダメ!それだけは絶対!)


アリスの身体能力なら、両手を使えばこの体勢からでも助かるのだが、アリスはヒイロからもらったネックレスを捨てられずにいた。そこへ……


「何をしているんだ?獣人族なら両手を使えば上がれるだろう?」


「うひゃぁ!? 見ないでぇぇぇ!」


屋根の上にアリスが見たことのない男が覗き込んでいた。慌ててズボンを左手で隠すアリス


「こ、このネックレスは捨てられないの。大切な人からもらったからぁ……」


「……………」


考え込む謎の男。しばらくして……


「そうか、お前にも大切な家族とかが居るのだな?ほら、捕まれ」


男は左手に持つソードをアリスに向けた


「え?どうやってぇ……」


男とアリスの距離は2メートルほど離れている。ソードはアリスには届いていない


「少し待て……カチャ、カチャカチャ」


男の持つソードは世にも珍しい連結式のソードだった。10個のパーツに分離し、ソードとソードの間はチェーンで繋がれている。ソードの長さは2メートル以上にまで伸びた


「これで掴まれるだろ?」

挿絵(By みてみん)

「あ、ありがとぅ♪」


「そのまま掴んでろ。今引き上げてやる」


男がソードに魔力を流すと、分離していたソードは1本のソードへと戻っていった



「はぁはぁはぁ…ありがとう。お兄さん♪」


「ふん、たまたまだ。気にするな」


アリスは精一杯の感謝を述べたが、男はただの気まぐれだと言わんばかりだった


「そうだ!助けてやった礼に、この街で鍛冶屋をしている場所を知らないか?」


「鍛冶屋を探してるのぉ?」

(お兄ちゃんのお店かな?ヘパイトスさんのお店かな?)

「アッチとソッチだよぉ」


アリスはアルバート家と、ヘパイトス鍛冶店の両方を指さした。


「そうか、助かる。おっと、街は大量のゴブリンに襲われている。せいぜい気をつけるんだな」


そう言うと男はアリスの前から消え去った


「寂しそうな目をしてたなぁ……あの武器の修理を頼みたいのかなぁ?あ、そうだ!お兄ちゃんを探さなくちゃ!」


我に返ったアリスは、近くにいるはずだと思っているヒイロを探すために下に降りた




【アルバート家】


「カルーアお姉さま。さっきの警報は何だったんですの?」


「分からないよ。でも、凄い音だったね……ん?誰かが来る……」


疲労が出て倒れそうになっていたサーシャに、甘いお菓子を作って食べさせていたカルーアは、この家に向かってくるただならぬ気配を感じた



「くくく、あの家だな。あの男が言っていた義理の息子とやらが居る家は……」


不敵な笑みを浮かべ、アルバート家へと近づいていく謎の男。


「この凄いオーラは……いったい何者なんだい!?」


カルーアは、家へと迫ってくるただならぬ気配を感じ取っていた。


ヘルメスの街を襲う大量のゴブリン。

そして、アルバート家へ迫る謎の男。

果たしてヒイロは、リーリア姉妹と三姉妹を守り切ることができるのか?




続く



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