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ヘルメスの三姉妹  作者: 龍之介21時
三姉妹との出逢い
21/44

初クエストと受付嬢

【アルバート家リビング】


「それでは片付けてきますの♪」


サーシャの昼ごはんを完食したアルバート家の4人。サーシャはいつものように片付けのため、キッチンに向かった。


「うーん……お腹も膨れたし、お兄ちゃんが作ってくれたアタシのソードを、実戦で試してみたいなぁ……」


「姉さん、はしゃぎすぎだよ。ソードが良くなっても、姉さんが強くなったのとは違うんだよ?兄さん、あのソードそんなに良い物なのかい?」


あまりにも嬉しそうにしているアリスを見て、ヒイロに新しいソードの価値を聞くカルーア。


「あれは鋼のソードを作る段階で、素材に鋼鉄の成分を1割ほど混ぜて作ったんだ。切れ味は変わらないが、耐久性がかなり向上しているぞ」


「そうなんだ……あ!サーシャ、わたしも片付け手伝うってば!」


カルーアは1人で4人分の食器を運ぼうとしていたサーシャに慌てて駆け寄り、半分持って一緒にキッチンへ向かった。


「みんなの為にもこのソードでクエストがしたいなぁ……」


「そうか……なら、これから冒険者ギルドに行ってクエスト受けてくるか?」


「えっ!?いいのぉ?」


アリスは目を輝かせながら、ヒイロに問い掛けた


「Dランクのクエストだったら任せるぞ。難しいのはやめておけよ?」


「うん、分かったぁ!ドタドタ…ねぇ、カルーア、サーシャ。それ終わったら、冒険者ギルドに行こうよぉ!」


「今からクエスト受けに行くのかい?まぁ、いつかは行かないと。とは思ってたけど、兄さんは行かないのかい?」


カルーアとサーシャからヒイロは来てくれないのか?と聞かれたが、ヒイロは間もなく受け取りに来るであろう、クレリアソードの最終調整をするので付いて行けないようだ




【冒険者ギルド】


「ガチャ。失礼します」


冒険者ギルドの扉を開いたカルーア。それに続いて、アリスとサーシャも中に入った


「あら?ギルドマスターさんが居ませんの?」


「本当だぁ。代わりに綺麗なお姉さんが居るよぉ」


三姉妹が受け付けのカウンターを見ると、いつものゴツイ身体をした50代の男性ではなく、20代半ばくらいの美しいエルフが座っていた

挿絵(By みてみん)

「いらっしゃいませ。昨日からギルドマスターに代わり、受付嬢をさせていただいていますアップルです。冒険者登録ですか?それとも、クエストの受注ですか?」


「わたしと同じエルフなんだね。久しぶりに同族と会ったよ。なんだか懐かしいな……」


「あら、本当ですね。親近感を覚えてしまいますね♪本日のご用件は?」


受付嬢は笑顔で答えた


「そんなに難しくないDランク向けのクエストってないかい?」


「えっ!?Dランクなのぉ?お兄ちゃんに恩返ししたいからぁ、もっと凄いの受けようよぉ!」


「その兄さんから「Dランクのクエストを受けるのならな」って言われてたろ?約束を破る気かい?」


「あ!?約束……うん。Dランクにするよぉ!」


カルーアとサーシャは目をパチクリした。アリスが簡単に意見を変えたからだが、アリスは以前にヒイロから言われていた「約束」の重さを思い出したからだった


「やる気になったら、中々考えを変えてくださらないアリスお姉さまがイッパツで……」


サーシャの言う通り、コレ!と決めたアリスが意見を変えるのは珍しかったのだ



「Dランククエストで宜しいのですね?それならば…えーと…このランブルベアの討伐は如何ですか?募集はCランク以上、もしくはDランク3人以上のパーティとなっていますよ」


アップルは3人の顔色を見ていた。この世界でも、熊型の魔物は懐かないことでも有名な凶暴な魔物だからだ。


「それにしようか?ソード、魔法、回復が揃っているわたしたちなら、ランブルベア1体なら可能だと思うよ」


(なるほど、あのエルフのカルーアちゃんがパーティの司令塔なのですね)


「このクエストを受けてくださるなら、ギルドから馬車が無料でレンタル出来ます。もちろん後で、成功報酬から引かせてもらいますけどね」


「えぇ!?お金取るのぉ?」


成功報酬が減ることに不服そうなアリスだったが、サーシャの意見は違った。


「アリスお姉さま。ギルドの方は、かなり譲歩してると思いますの。だって失敗した場合は、馬車のお金を取らないんですのよ?」


「そうだね!今の話なら、クエストに成功した場合のみ料金が発生するんだもんね。失敗した人には請求しないんだから、かなり良心的だね」


「そっかぁ……そうだねぇ。その条件でやるよぉ!」


(ふむふむ。アリスちゃんが前衛でムードメーカー役、カルーアちゃんが中衛で分析役、サーシャちゃんが後方で回復役ですね)


「えっとですね。昨日、王都クラウンから最新の地図が出来上がりましたので、今なら1枚だけ無料で提供しますけど?」


「それは助かるね。馬車の代金代わりにもなるし、お願いするよ♪」


(やはりカルーアちゃんは賢いですね。理解も早いし、そう聞かされたらアリスちゃんも納得しやすいですね)


アップルは小さく口元を緩ませると、棚の下の引き出しから1枚の地図を出し、カウンターに広げた

挿絵(By みてみん)

「大陸の中央には、滅んでしまったエルドラド王国の跡地があります。その東側に、この大陸最大のエルドラ山脈。そして山脈のさらに東側には、大陸を北から南まで縦断している大河が流れています。そこからさらに東へ進むと……僕たちの住んでいるヘルメスの街に辿り着きますよ」


「へ~。分かりやすいね♪」


「お姉さん。今、僕って言ったァ?」


「はい。僕はずっと僕と言っていますよ。それでですね、このヘルメスの街から真っ直ぐ西を目指すと大河に当たり、大きな橋が掛けられています。地図で見ると……その左下に森林地帯がありますね。ここにランブルベアが単独で居まして、ヘルメスの街とその橋を行き来する行商人たちが、何度も襲われているそうなんです」


「エルドラ山脈の手前の橋、この前ヒイロお兄さまと行きましたの!」


「そうなのかい?」


「おっきな橋だったよねぇ。そのまま馬車で渡れたんだもん♪」


カルーアは留守番していたので知らなかったが、ヒイロとアリス、サーシャは馬車でその橋を渡っていた。


「既に場所はご存知でしたか。それなら、迷子になったりする可能性はありませんね?」


「ここから馬車で行くと、その森林地帯までどれくらい掛かるんだい?」


「えと……前にお兄さまと行った時は、5時間弱くらいだったでしょうか? たぶん、それくらいですの」


顎の下に手を添えて、サーシャがその時の記憶を思い出している


「5時間弱か…日が沈む時間に到着するね。ねぇ、アップルさん。クエストに行くのは明日でも構わないのかい?」


「はい。このクエストは、受注後3日以内が期限となっておりますので…」


カルーアはランブル討伐の依頼書を受け取り読み始めた


「ふむふむ、なるほど。殺した場合と追い払った場合では成功報酬額が大きく変わるね…そりゃそうか。再発の危険が残るからね」

挿絵(By みてみん)

「でしたら明日、早めに家を出て向かえば夜までにはギルドに帰って来れそうですの」


「うん、そうしよぉ!」


横で聞いていたアリスに、難しい内容は分かるはずもなかったが、カルーアとサーシャが理解している顔は見ていたので、大丈夫と確信したようだ


「それでは、この書類にサインをお願いします。3人のお名前と住所をお願いします。それから、冒険者の証をご提示願いますね」


「冒険者の証……何それぇ?」


「もう、姉さん!前に兄さんと来た時に登録して、ギルドマスターからもらったろ?」


大事な冒険者の証の話を、全く覚えていないアリスに憤慨するカルーア


「大丈夫ですの。サーシャが3人分の証を持ってきましたので♪」


「ふぅ、末っ子のサーシャが1番シッカリしてるなんて、わたしは頭が痛いよ……」


「えへへ。ごめんねぇ……」


(仲良しさんですね。それぞれの長所で上手く補い合っているのですね)


三姉妹のコメディのようなやり取りを、冷静に観察していたアップル


「それでは最後に、馬車のレンタルの承認に代表者のサインをお願いします」


「わたしが書いておくよ」


「それでは1度、お家に帰りましょう♪」


「そうだね。兄さんにクエスト内容を説明しておくのは良い事だね」


「アップルお姉さん、ありがとぉ♪」


「いえいえ、頑張ってくださいね」


受付嬢アップルは笑顔で手を振り、出ていく三姉妹を見送った




【アルバート家 リビング】


「なるほど、ランブルベアの討伐か……奴はデカイうえに素早いから気をつけろよ」


「そんなに速いのかい?」


カルーアからの質問に考えるヒイロ


「そうだな……前に義父と戦った事があるんだが……戦闘速度は俺と同じくらいだったな……」

挿絵(By みてみん)

「えぇ!?お兄ちゃんと同じくらい速いのぉ?」


実際に訓練で何度もヒイロと戦っているアリスは、その例えでイメージ出来たようだ


「それでいて、熊の怪力なんだろ?わたしと姉さんが上手く連携しないと危なそうだね」


「大丈夫でしょうか……」


戦闘経験が全くないサーシャは、かなり不安そうな顔をしている


「まだ日が沈むまでには少し時間があるな。よし、今から庭でアリスとカルーアの連携を指導してやるよ。戦いの予習は役に立つからな」


「やったぁ!カルーアと一緒に訓練だぁ♪」


「姉さん!明日は生命賭けのクエストなんだよ。遊びじゃないんだから、本気でお願いするよ!」


「いくらヒイロから討伐シミュレーションを施されようと、1度熊の爪を突き刺されれば、生命を落とす可能性だってある」


エルフ族のカルーアは、野生の魔物の怖さを知っているのでアリスに喝を入れた


「サーシャは戦闘の役には立たなさそうですね。すみませんですの」


「何言ってんのさ。多少の怪我ならその場でサーシャが治してくれる。それだけで凄く心強いんだよ!」


「ありがとうございますですの♪」


(アリスへの気構えを指摘し、サーシャへの配慮も欠かさない。カルーアがパーティのリーダーだな)


ヒイロも受付嬢アップルと同じように、三姉妹パーティの分析をしていた



三姉妹はヒイロから、ランブルベアの討伐方法を授かり明日の早朝に出発して、初めてのクエストに向かう


初めてのクエストで三姉妹は、どのような経験をするのだろうか?




続く

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