アリス獣化
【アルバート家の中庭】
「サーシャも参加するのか?」
ヒイロはアリスを剣による前衛、カルーアを魔法攻撃による中衛、サーシャも魔法回復による後衛と考えているので、今から危険そうなアリスのヴォイド化に立ち会うのは危険ではないかと考えた
「こう見えてもアリスお姉さまと腕相撲では良い勝負ですの。単純なパワーなら役に立てるはずですの…」
しかしサーシャは、家族全体にとって危険のある事を始めるのに、自分だけ蚊帳の外に居るのは我慢できないようだ
「そうか……じゃあサーシャは、俺の背後に離れて控えていてくれ」
サーシャはヒイロの背後10メートル程の位置に立った
「わたしの方も準備オーケーだよ!」
カルーアは家とアリスの中間地点に立った。アリスを止める為の魔法を家に当てたりしない為の配慮だった
「お兄ちゃん、良い?」
「オーケー準備万全だ。始めて良いぞ!」
「グルルルルル……」
アリスは膝を落とし両手を握り締めると、喉から音を立て始めた
「WRYYYYYY!!」
一瞬、アリスの両目が赤く光った!その直後、アリスの筋力は増大し、動きやすさを出す為の少し余裕のある服がピチピチになった
「ワオーン!!バシュッ!」
両手から鋭い爪が伸びたアリスが、大地を蹴飛ばすと凄まじい勢いでヒイロに飛びかかってきた
「バキィィィン!」
「ぐうぅ。これ程とは……」
ヒイロはレンタル用に工房にあった硬さ重視のソードを持ってきていて、それでアリスの攻撃をガードしたのだが……
「グルルルゥゥ…バキィン!」
「何だと!?」
アリスは左手でヒイロのソードを弾き飛ばし、右手でヒイロの首を掴んだ!
「カハッ!?…ぐぬぬ…」
「ワオーン!」
「このっ、バシッ!」
左手の爪による攻撃はギリギリ止められたが、ヒイロの首を絞めているアリスの爪がヒイロの喉に押し込まれた
「ぬおあぁぁ…」
ヒイロは鍛冶屋をしているので筋力にはかなりの自信があったのだが、それでもヴォイド化したアリスを引き剥がせなかった
「お兄さま!?」
「兄さん、大丈夫なのかい!?」
予想以上のヒイロの劣勢に慌てるサーシャとカルーア
「グオッ!?ドスン」
そのままヒイロを押し倒したアリスは大きく口を開いた。鋭い牙がヒイロの喉元に食らいつこうとしている
「グルルルゥゥ…」
アリスの顔が更に近づく。食事中の獣のように唾液を垂らしている。徐々に押されている為、ソレがヒイロの顔にかかる
「サーシャ!キミの馬鹿力でアリス姉さんを背後から引き剥がしてよ!これだけ密着されてると、魔法が使えないんだ!」
「馬鹿力って酷いですわwでも…分かりました。やってみますの!ガシッ!」
カルーアに指示され、背後からアリスに組み付くサーシャ
「ふんぬうぅぅ……」
そして引き剥がそうとチカラを込めた時。僅かながらヒイロから離されるアリスだったが……
「WRYYYYYYYYY!!」
大きな雄叫びをあげたアリスの身体は、更に筋肉が増大した!アリスの身体はすでに、元の体格の3割増し近くになっている
「ビリビリビリィ………」
更に体格が膨れ上がった事により、アリスの服の何ヶ所かは裂け、隙間から素肌が見えた
「グアァァァ!」
しかし、今のアリスは恥ずかしさで動きを止める事もなく、更にチカラを増しヒイロの喉に噛み付こうとしている
「サーシャ!タイミングを合わせるぞ。イチニノサンでチカラを込めてくれ!」
「分かりましたの!」
「イチニノサン!グイッ」
「グルル!?」
何とか10センチほどアリスを引き剥がした
「ここだ!ゲシッ!」
ヒイロはアリスのお腹に足の裏をあて、アリスを空中に蹴り上げた
「今だ、カルーアっ!」
「大気を走りし雷よ、暴走した姉さんを止めるチカラとなれ【雷光柱】!」
「ビシャン!アオーン……ドサッ」
カルーアから放たれた雷撃がアリスに命中し、彼女は短い悲鳴をあげた。落ちてくるアリスをヒイロが両手で受け止めると、ようやくアリスは動きを止めた。
「大丈夫かい?兄さん、姉さん」
カルーアがみんなに走って近寄って来た。
「アリス。無事だよな?…あっ!?」
「ムギュウゥゥ…」
アリスは、ヒイロと激しく戦った後でカルーアの雷光柱を至近距離から被弾した!
大怪我しないように威力は落としてくれていた様だが…流石に服はさらに破れていた
「ちょっと!兄さんは見ちゃ駄目だよ!」
「あらあらですの❤︎」
「見、見てないからな///」
真正面から近付いたヒイロは、半裸のアリスをモロに見てしまった。女慣れしていないヒイロは、顔を真っ赤にしていた
「こ、この事はアリスには、絶対に内緒にしてくれ///」
「もう、仕方ないなぁ…」
「あらあら、どうしましょう(笑)」
とりあえず上着をアリスに着せたヒイロは、そのまま彼女をお姫様抱っこして家に入った
「あら勿体ないですの!アリスお姉さまなら【お姫様抱っこ】に憧れてる筈ですけど、気絶してますの♪」
「意識があったら、こんな恥ずかしい経験はトラウマになると思うよ」
男女のスキンシップ(相手はヒイロに限る)に抵抗の薄いサーシャと、恥ずかしがり屋のカルーアの差が言葉に出ていた
「カルーアお姉さまは甘いですの!サーシャなら毎日お兄さまにお姫様抱っこされたいですの♪」
「サーシャ…キミは本当に大胆だね///」
誰も大きな怪我をすることなく、アリスのヴォイド化に立ち会ったヒイロたち
【リビング】
「んぅ……ここはぁ?」
「気が付いたか、身体で痛い所とかないか?」
アリスは目が覚めると、服を着替えさせられていてリビングのソファで眠っていた
「いちごスムージーといちごパフェですの。どうぞですの」
「えっ?食べて良いのぉ!?」
アリスも疲れている筈だが、目の前のテーブルに置かれた大好きないちご製品に目を輝かせた
「………もぐもぐ、ゴクゴク…はぁ、美味しかったぁ♪」
「あのさ姉さん。わたしの魔法痛くなかったかい?」
アリスが飲食が終わるのを見守っていたカルーアが、止める為とは言え、魔法を当てたことを謝った
「んーん。前に言ったように全然覚えてないから大丈夫だよぉ」
「そう?なら良かったよ」
「俺もアリスに謝らないとな。気軽に見ておきたい、なんて言うんじゃなかった。一歩間違えてたら大変なことになっていた。正直、覚悟させられるほど怖かったよ……」
「怖かった?……アタシ、このままこの家に居ても良いのかなぁ?」
アリスは孤児院時代に、数人でひとりの子を虐めている現場に遭遇し、無意識にヴォイド化して虐めていた子らに大怪我させてしまったことを思い出していた(虐められていた子を助けたので問題視はされなかったが、周囲の子からは距離を取られることになった事件だ)
(アタシ、この家からも出て行かないとイケナイかもぉ……)
「何言ってんのさ、姉さん。わたし達はとっくに家族じゃないか!」
「そうだぞ。今更出ていくとか許さないからな!」
「出て行かれたらサーシャとっても寂しいですの……」
アリスの心配していたのとは違い、カルーア、ヒイロ、サーシャはアリスを家から追い出すとか、距離を置くなんて事は微塵も考えていなかった
「ありがとう!みんなぁ♪」
アリスはみんなにハグをした。その後三姉妹は一緒に風呂に入った。風呂が空くのを、リビングでコーヒーを飲みながら待つヒイロ
「ふぅ。軽い気持ちでアリスの獣化を見たいなんて言うんじゃなかったな。まさか、あそこまで強くなるとは思わなかったぜ」
「お兄さま。お風呂空きましたの!」
三姉妹の後に風呂を済ませたヒイロ。
【ヒイロの部屋】
「ガチャ、お兄ちゃん。一緒に寝ても良いかなぁ?」
「アリスか、うん。一緒に寝ようか?」
「えへへ。やったぁ♪」
寝巻きに着替えたアリスは、モゾモゾとヒイロの布団の中に入ってきた。アリスの甘い香りが漂いヒイロの鼻を刺激した。
「お兄ちゃん。本当にアタシのこと怖くない?」
「当たり前だろ。あの強さに恐怖したけど、アリスはアリス。俺の妹じゃないか」
「えへへ。だーい好き♪」
子犬のようにヒイロに抱きついてきたアリス。優しく頭を撫でていると彼女は次第に眠りに落ちた
「昼間のアリスは喰い殺しに来る獣だったが…隣で寝ているアリスは、やっぱり可愛い妹だな」
ヴォイド化していた時の獣のようなアリスではなく、土の匂いが混じった純粋無垢な女の子だと感じられた
(アリスの純粋無垢さに心が癒されるな♪)
サーシャに続き、アリスも心に抱えていた不安を家族に受け入れてもらい幸せな夜をヒイロと過ごしたのだった
続く




