アリスの告白
【アルバート家】
ケヌマ率いるオーク達に襲われたアルバート家族は、ようやく家に帰った。
「紅茶と昼間に商店街で買ったフルーツを用意しますの♪」
「あ!アタシも手伝うぅ」
キッチンに向かったサーシャに小走りについて行ったアリス。リビングにはヒイロとカルーアが残った
「さっきは助かったよカルーア」
「え?なんの事だい?」
普通に話しかけたヒイロに対し、少し気まずそうな顔をしているカルーア
「さっきの魔法、凄かったよ。成体のオークを一撃で倒すなんて、カルーアの魔法は強力なんだね」
「あー、そのことか。これでもエルフ族だからね。特に私は雷を含む風系の魔法は得意なんだよ」
「そうなんだ。あれだけ強い魔法が使えるならアリスとカルーアだけでも、クエストに出られそうだな」
「う、うん。頑張ってみるね」
素直に褒めているだけのヒイロだが、カルーアには何か言いづらい事があるように見えた
(みんなで温泉宿に一泊したとはいえ、まだまだ出会って数日なんだから無理に聞くのは良くないよな……)
何かを感じたヒイロだが、無理に聞き出そうとはしなかった
「ガチャ。お待たせしましたの♪」
マグカップに4人分の紅茶と、ガラスボウルに入ったいちごを持って2人はリビングに戻ってきた
「ぐびぐび…ふぅ。落ち着いたよ」
「このいちご美味しいね♪ところで姉さんは何を手伝ったんだい?」
「いちごのヘタ取りと水洗いですのよ♪」
「うん!アタシ頑張ったよぉ♪」
「うん、姉さんはそれくらいにしておいた方が無難だろうね(笑)」
「ちょっとぉ、カルーアったらぁ!」
アリスとカルーアの漫才のようなトークに、クスクス笑うヒイロとサーシャ。
ヒイロが温泉宿の帰りに商業ギルドで受け取った修理依頼品は、剣が6つに鎧が2、そして盾が1個だった
「ねぇ、お兄ちゃん。お土産で買った日本刀はまだ使えそうかなぁ?」
「だいぶ刃こぼれしているな。やっぱりお土産品だな。アリス用のソードも併せて作るから、それまでは日本刀で稽古しててくれ」
次の日ヒイロは丸1日を掛けて、修理品を全て直し終えた
その日中庭では、アリスが日本刀で剣の修行をし、カルーアが魔法と弓の修行をしていた
サーシャはヒイロの鍛冶屋仕事を手伝っていた。水を汲んできたり、材料を用意してくれたり、出来る範囲で頑張ってくれた
「皆さん。晩ご飯が出来ましたの♪」
その声でリビングに集まった家族は、サーシャの用意してくれた晩ご飯を美味しく食べていた
「サーシャ疲れてないか?仕事の手伝いもしてくれた上に、3食用意してくれたろ?」
「大丈夫ですの!それに朝食と昼食は、カルーアお姉さまも手伝ってくれましたし♪」
やはりサーシャは、このアルバート家を大切にしていて大人でも大変そうな仕事量を嬉しそうにこなしていた
「サーシャは働き者だね。わたしも頑張らないと、って気持ちになるよ」
「そうだよねぇ、アタシも料理が出来たらなぁ…そうだ!お兄ちゃん、アタシのソードはそろそろ出来そうかなぁ?」
「明日の午前中には完成する予定だよ。そしたら終わった修理品を持って商業ギルドに向かうよ」
「サーシャもついて行きますの!やっぱり、もっと多くの食材を買い置きしておきたいですの」
「サーシャは本当に偉いな、ナデナデ♪」
あまりのサーシャの働きっぷりに、ヒイロは感謝の意味を込めてサーシャの頭を優しく撫でた
「えへへ♪あの、お兄さま……」
「なんだい?」
「今夜、お兄さまと一緒に寝てもよろしいでしょうか?」
頭を撫でられて嬉しそうな表情を浮かべたサーシャは、自ら一緒に寝たいと申し出てきた
「サーシャ。エッチィのはダメだよ?」
「普通に寝るだけなら構わないよ♪」
「えへへ。ありがとうございますの♪」
サーシャがまた、エッチなスキンシップをしないかと心配しているカルーア。それを理解したヒイロは「エッチなのを抜きなら」と受け入れた
【ヒイロの部屋】
ヒイロの部屋。と言っても普段ヒイロは工房で仕事しているか、リビングに居るのでこの部屋は鍛冶屋関係の本を読むための机と、寝る為のベッドと、服を入れておくタンスくらいしかない
「どうしてサーシャはあんなにも頑張ってくれるんだ?」
「……サーシャは、この家族が大好きですの。みんなの為に役立てる事が出来るのが嬉しいんですの♪」
そう答えたサーシャの目には嘘偽りはなかった。純粋に嬉しそうな目でヒイロを見ていた
「今日はお疲れ様でしたの」
「そうだな……久しぶりに丸1日鍛冶仕事をしたから、少し疲れたな。寝ようかサーシャ?」
「はい♪」
サーシャはヒイロに寄り添い嬉しそうに眠りについた。一方、三姉妹に与えた部屋での大型ベッドでは……
「ん、うぅ…重いよ……」
「いちご大好きぃ♪」
お腹の上にアリスの足を置かれたカルーアが、辛そうな顔をして寝ていた
【翌朝】
早速、修理した依頼品を持って商業ギルドを訪れたアルバート家族。ヒイロは褒賞金として27万ゼニー(27万円)を受け取った。
「ヒイロ達がケヌマを撃退してくれてから数日、街の近くでの戦闘が起きていないので今回は、ヒイロ宛の修理依頼は無いぞ」
「分かりました。有難うございます!」
修理は一般素材の物なら、一律3万ゼニーで受けているヒイロ。その方が揉め事が起きにくいからだ
【商店街】
サーシャの提案だった食材の備蓄を買いに来ていた。途中、アリスとカルーアの要望で果物屋に寄ったりして、少し多めなくらいに買った
「ねぇ、お兄ちゃん!あんなにお金もらったんだから、もう一着ずつ服を買って欲しいなぁ♪」
「ダメだよ姉さん!わたし達の3着でも数万ゼニーは飛んでいくんだよ?それに、兄さんは前回自分の服を買ってないんだよ?」
「すまないなアリス。カルーアの言う通りで、この金で修理する為の材料を買ったり食材を買ったりしないといけないから、簡単には使えないよ」
「そっかぁ…じゃあ仕方ないねぇ……」
(へぇ。前回、俺が自分の服を買わなかったことを、カルーアはちゃんと見ていたんだな)
三姉妹の中で一番、人付き合いが苦手なイメージがあったカルーアが、細かいところまで見てくれていたことに感心したヒイロ
「サーシャ重いだろ?俺も持つよ」
「大丈夫ですの。サーシャはチカラには少し自信がありますの。それに、お兄さまは買った仕事の材料を持っていますもの」
今回も嫌な顔をせずに、重い食材の袋を3つも運んでいるサーシャ
「ヤレヤレ、本当にサーシャは働き者だね。姉さん、わたし達も1袋ずつ持つよ」
「うん、分かったぁ!」
(カルーアも気が利くな。アリスは配慮が行き届かないけど、言われたら断らない優しい子だな)
三姉妹の個性が更に見えてきたヒイロは、満足そうに三姉妹と家に帰った
【アリスの告白】
4人でサーシャが作ってくれた昼食を食べているアルバート一家。
「ハンバーグ美味しいよぉ♪」
「お買い物してる時にアリスお姉さまが好きだと言われてましたので、頑張ってみましたの♪」
「本当にサーシャは優しくて働き者だね。俺ももっと頑張らないとな!」
「わたしもお菓子作りだけじゃなくて、普通の料理も覚えるね」
比較的、軽めなオカズの量にデザートも添えられていた。ソレらを食べ終わる頃、ヒイロやカルーア、サーシャを見渡したアリスが、何かを決意して立ち上がった
「サーシャは、辛い秘密を打ち明けてくれてありがとうねぇ。カルーアには何度も迷惑掛けてるしぃ、お兄ちゃんは優しくてぇ、その、あのねぇ…アタシも言わなきゃならない事があるのぉ…」
「姉さん……」
何故か?意を決して立ち上がったアリスの行動に対し、下を向いたカルーア
「アタシはワーウルフの村の生き残りなのぉ…」
「確か、ワーウルフの戦士には、倒した魔物の力を取り込んで戦う者がいるって聞いたことがある……ということは、アリスもその戦士なのか?」
「そうなのぉ、1度倒したモンスターの能力をその身に吸収してぇ、様々な戦い方が出来るって教わっているよぉ。村を襲った狂暴化した【ヴォイドゥルフ】の能力を使えるよぉ」
「でも、確かワーウルフの村は全滅したんだろ?どうやって倒して、チカラを得たんだい?」
「1年半くらい前かなぁ?義父さんと修行の旅に出ていた時にぃ、はぐれのヴォイドゥルフと出会ったのぉ。アタシは義父さんと協力して倒したのぉ。人型に近い獣のチカラしか取り入れられないからぁ、この前のオークはアタシは倒していないから、チカラは得られてないのぉ……」
「なるほどな、ちなみに今のところはヴォイドゥルフだけなのか?……そうか、1度見ておきたいな。使うと、どんな感じなんだ?」
「それがねぇ、使ってる間は記憶が無いのぉ。自由に獣化出来るけどぉ、意識が無いから自分では戻せないのぉ…義父さんの前で見せた時はぁ、気絶させたらようやく解けたと言ってたよぉ……」
「自由に出せるけど、自由には解けないか…俺の紅血化と反対だな。俺は本気で怒らないとチカラが出せないが、解くのは自分の意思で出来るんだ」
アリスの義父さんは人前では見せない様に釘を刺していたようだ。そんな珍しい能力を持ってるなんて知られたら、捕まれば見世物小屋行きだろう。
「サーシャも秘密を教えてくれたのにぃ、アタシが言わなかったらレディじゃないもん!」
「ありがとうございますの。アリスお姉さま♪」
「偉いぞアリス!」
「…………」
その言葉でカルーアは、また表情を曇らせた。彼女も言いがたい何かがあるのだろうか?
「でもサーシャは見てみたいですの!この前、お兄さまの凄い強さも見せてもらったことですし、アリスお姉さまのチカラも1度見せて欲しいですの」
「そうだな、俺も興味があるし保護者としては、意識が飛ぶほどのアリスのチカラは理解しておくべきだろうな」
危険性もあるアリスの能力を知っておく必要があると判断したヒイロは、4人で中庭に移動した。
続く




