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ヘルメスの三姉妹  作者: 龍之介21時
三姉妹との出逢い
11/44

襲われたアルバート家

【温泉宿からの帰り道】


温泉宿を後にした4人


「お兄さま。今日は素敵な温泉宿に連れて来て頂いて、ありがとうございましたの♪」


サーシャは満面の笑みを浮かべていた。やはり奴隷市場に居た彼女は、贅沢に無縁だったようだ


「お前達3人が本当の姉妹の様に仲良くなれるキッカケだからな、ケチケチなんて出来ないよ♪」


サーシャの過去を受け入れつつも、変に特別扱いなどはしなかったこと。お転婆なアリスの世話に追われていたカルーアも、本来の人見知りを出している暇もなかった


そんな一泊を過ごした3人は、本当の姉妹の様に仲良くなれるキッカケを得た


「姉さんは自由奔放過ぎるよw」


「だってぇ、楽しかったんだもぉん♪」


義理の三姉妹が楽しく過ごせたのなら、温泉宿に連れて来て本当に良かったと思ったヒイロ


「ところでぇ、お兄ちゃん。家に帰る道と違う気がするんだけどぉ?寄り道ぃ?」


「姉さんは人の話を聞いてなかったのかい?商業ギルドに寄る、って兄さんが言ってたじゃないか……」


「そうだったけぇ?」


「あぁ、流石に遊んでばかりいたらすぐに資金が尽きてしまうからな…そろそろ仕事もしないとな」


「サーシャが手伝えることがあれば何でも致しますから、遠慮なく言って欲しいですの♪」


「アタシも手伝うよぉ♪」


「姉さんは手伝わない方が良い気がするよ……」

挿絵(By みてみん)

「なぁんでよぉ!」


「あはは♪」


(年頃の出逢ったばかりの女の子同士の姉妹生活。もっと手間が掛かるかと思ったけど、上手くいってるみたいで良かった)


滑らかに会話する三姉妹を見て、心が和んだヒイロ。




【商業ギルド 受付】


「ガランガラン…お邪魔します!」


ヒイロは三姉妹を連れて商業ギルドにやって来た


「ヒイロさん、こんばんはお久しぶりです…6日ぶりになりますね。奥でジュリアンが待っています…どうぞ♪」


「あ!アタシと同じ獣人族のお姉さんだぁ♪」


「うふふ。私は馬科になりますけどね♪」


受付嬢で獣人族馬科のネネカさんからギルドマスターの待つ部屋に通された。

挿絵(By みてみん)

そこには細身ながら、鋭い目付きをした20代後半の男が居た


「兄さん、彼がギルマスの方なのかい?若い方なんだね」


「お嬢さん、お褒めの言葉かい?」


カルーアは先に訪ねていた冒険者の方のギルドマスターが、厳つい男性だったので、細身でカッコ良いジュリアンに驚いた


「お嬢さん達、初めましてだな。俺がギルマスのジュリアンだ、覚えてくれよ」


「ヨロシクね!ジュリアンさん」


「よろしくお願い致しますの」


アリスは元気に、サーシャは丁寧にジュリアンに挨拶を返した



「さてヒイロ、早速だが武器防具の修理依頼が8人分来ている。代金はヒイロの言い値で構わないそうだ」


「金払いの良い依頼人は助かります」


「コッチが本題なんだが…ケヌマ・ウロヤを知ってるな?」


「同じ孤児院に居たケヌマですか。発掘調査隊の見習いをしていると聞いてましたが?」


「そうだったんだがな…アイツが東の古代遺跡で何かを見つけたらしいんだが、ソレを組織に提出せずに行方を眩ましたそうだ。それに…お前の成功を妬んでるって噂だ」


ヒイロを兄として信頼し始めていた三姉妹は、彼を良く思わない男の話が出てきたので、不機嫌な顔色に変わった


「ヒイロお兄さまを妬むだなんて……」


特にヒイロと距離を縮めていたサーシャは、我慢できずに口から不満が出ていた。


【ケヌマウロヤ】

ヒイロとほぼ同じ年頃で、孤児院から発掘調査隊に就職した、ヒイロと同期の男だった

生真面目に働くのはヒイロと同じだが…コツコツと腕と信用を積み重ねていくヒイロとは反対に、ケヌマは一攫千金を狙う性格だ


「お兄ちゃんはぁ、真面目に働いてるもん!そんな不真面目な人がぁ、お兄ちゃんに勝てる訳ないもん!」


「お嬢さん達、ヒイロの事をよく分かってるんだな。その通りだ、いわゆる逆恨みってところだな。陰湿な性格な奴だ、気を付けろよ」


「そうですね。少し常識外れな行動をする奴でした……」


「それと最近、街の周辺でオークとの戦闘報告が増えている。お前への修理依頼が今後も増えるだろう。頑張ってくれよ!」


ヒイロは商業ギルドと契約している。仕事に集中すると、仕事依頼の来客が呼び鈴を鳴らしても気付けないので、ココに中継してもらっているのだ


「リヤカーを貸しますので、これで依頼品を運んでください」


「有難うございます、ネネカさん!」


ネネカから修復依頼の装備品を複数個受け取ったヒイロはリヤカーを押し、三姉妹と共にギルドを後にした




【夜の帰り道】


すっかり日も落ちかけ、辺りは薄暗くなってきていた。リヤカーを引くヒイロ。後ろからリヤカーを押すアリス。サーシャは右に、カルーアは左に並んで帰っていた


「ねぇ兄さん…さっきから気配が…」


「うん。誰かついてきてるよぉ…」


カルーアの魔法探知と、アリスの鼻がアルバート家族たちについてくる存在を感知していた


「おっと、鋭いお嬢さん達だな…小娘。動くんじゃねーぞ!」


「ひいっ!?」


物陰から現れた男がサーシャに近付き、彼女の首にダガーを押し当てた


「ケヌマか!?本当に俺を妬んでいたとはな……」


「ピーヒョロヒョロロ♪……ズシンズシン…」


ケヌマが白銀の長笛を吹くと、暗闇の中から緑色の巨漢の3体のオークが現れた


「んっ!?オークか。それと、その長笛は古代遺跡で見つけた物か?」


「その通りだ、良く知ってるな。オーク共、女どもの相手をしていろ!」


3体のオークは1体ずつ、アリス、カルーア、サーシャの前に立ちはだかった。


「ヒイロ。お前は俺の手で息の根を止めてやるぜ♪」


サーシャをオークに任せたケヌマは、腰の革袋から変わった形のナイフを取り出した


「毒を流せるナイフか……」


「よく知ってるな。流石は鍛冶屋ってとこか?貴族たちが愛用する毒牙のナイフだぜ……」


ケヌマはナイフの持ち手部分の丸ポチに指を掛けた。


「ナイフで切った時に、その丸ポチを押すと毒が流れる仕掛けのヤツだな」


「流石、よくご存知だ。しかし、丸腰の相手を襲うのは……少し気が引けるなぁ♪」


言葉とは裏腹に、薄ら笑いを浮かべてジリジリとヒイロに歩み寄っていくケヌマ。



「お兄ちゃん!コレを使ってぇ!」


リヤカーに乗せていた、温泉宿のお土産コーナーで買ってもらった日本刀の長い方をヒイロに投げ渡したアリス


「パシっ。助かったぞアリス!」


「くっ……オーク共!さっさと女どもを始末しろ!」


丸腰のヒイロをいたぶるつもりだったケヌマは、アリスに阻止され不機嫌になっていた


「アリス!カルーア!サーシャ!無理をするな、逃げろ!」


「クケケ♪そのオーク共は足も速いんだぜ。逃げられると思うなよ♪」


10代前半の三姉妹がオークに対抗出来るはずがないと考えているケヌマは、ヒイロを見ながら薄気味悪く笑った


「グオァァァ…ドサッ!」

挿絵(By みてみん)

「逃げる必要なんて無いんだけど?」


右手からの雷の光を出しているカルーアが、自分に向かって来ていたオークを軽々と撃破していた


「やるねカルーア!アタシも負けてられないんだからぁ!えぇい!」


アリスはもう1本の短い方の日本刀を持ち、オークと戦い始めたが……


「きゃあぁぁ!助けてくださいですの!」


武器も持たず、魔法も使えないサーシャがオークに追い込まれていた


「その女を人質にしてしまえ!」


「ケヌマ…ソレ以上、妹達を傷付けるなら俺も容赦はしないぞ!」


サーシャを危険に晒され、温厚なヒイロも怒りに震えていた


「はっ!この状況でテメーに何が出来る!お前の妹達は、後で俺様がトコトン可愛がってやるから安心しろ♪」


「ケヌマぁ!」


ヒイロの怒りは頂点に達した。その時ヒイロの両目は紅く染まった


「な、何だその目は?」


ヒイロが大地を蹴ると一瞬でケヌマとの間合いを詰めた。右手の日本刀でダガーを弾き飛ばすと、左手でケヌマの腹に鋭い拳を突き込んだ!


「ゲボハァッ!?」


くの字に曲がるケヌマは苦悶の表情を浮かべた


「オラァッ!」


すかさずヒイロが蹴り飛ばすと、背後の巨木にぶち当たり気を失ったケヌマ


「お兄さま…強いですの❤︎」


ヒイロは深呼吸すると、次第にいつもの目の色に戻った。そしてサーシャに近づいた


「怖い思いをさせてしまったな」


救出したサーシャをヒイロは優しく抱き留めた。


「えへへ。ちょっぴり怖かったですの♪」


涙を浮かべながらも、助けられたサーシャはヒイロに抱きつき笑顔を向けた


カルーアは雷の魔法で3体のオークを気絶させていた。アリスはリヤカーから見付けたロープでかなり強くケヌマを縛り上げた


「カルーア、強いんだな♪」


「ま、まぁね。ところで兄さん、この男はどうするんだい?」


「そうだな…リヤカーに乗せて冒険者ギルドに手渡すか」


4人は冒険者ギルドでケヌマを引渡してから、被害届を出しケヌマは逮捕された。


「く、くそぅ。こんなはずでは…」


目を覚ましたがロープで縛られているケヌマを見下ろし、サーシャは言った


「ヒイロお兄さまに嫉妬した挙句、逮捕されるなんて…とんだマヌケ野郎ですの♪」


同じ孤児院の出身ながら、牢獄に入れられたケヌマには今後、臭い飯と労働が待っている。


「お兄ちゃん、カッコ良かったよぉ♪」


「わたしも見直したよ///」


「流石はお兄さまですの♪」


ケヌマが牢獄へ連れて行かれる一方、ヒイロは三姉妹と共にアルバート家へ帰っていく。


一攫千金を夢見て近道ばかりを探した男と、目の前の仕事を一つずつ積み重ねてきた男。


二人の歩んできた道は、いつの間にか大きく違っていた。


「お兄ちゃん、帰ったら何食べるぅ?」

挿絵(By みてみん)

「姉さん、さっき露店で焼き芋を食べたばかりじゃないか……」


「ふふ♪」


そんな三人の声を聞きながら、ヒイロは笑って工房へと歩いていた。




続く




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