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乙女ゲームの悪役を押し付けられた悪役令嬢、追放エンド後にラスボスキャラの悪役公爵様に溺愛されてしまう  作者: 秋名はる


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9/16

庭の散策

屋敷の外に出て、私は数日ぶりに外の新鮮な空気を吸い込んだ。


「はあ……。部屋での生活もそれほど苦ではなかったけれど、

 こうして外に出られるのは、やっぱり新鮮で良いですね」


ようやく、外に出ることが出来た嬉しさから、私は柄にもなくはしゃいでしまっていた。

そんな私の後ろを、ロクサーヌさまがこともなげに歩いてくる。


庭には、見渡す限りの豪華な庭園が広がっていた。

隅々まで整備が行き届き、地面には枯れ葉ひとつ落ちていない。


「こんなに立派なお庭があるのに、訪れる人もいないなんて……

 なんだか、もったいないです」


「当たり前だろう。よそ者に自分の住処を開け渡すような真似をするものか」


ロクサーヌは、当然のように言い切った。

言われてみればたしかにそうだ。悪役公爵として名高いロクサーヌが、簡単に居城を解放するような真似をするはずがない。

それでも、これほど美しい庭を独り占めしていると思うと、少しだけもったいない気持ちになった。


暫く散策していると、庭園の一角、整えられた草木のそばに、こじんまりとした温室が建っているのが目に入った。中には、この土地では育たない温暖な地域の草花が並んでいる。


「これは……!?」


私は思わず声を上げた。


「南国にしか咲かない、珍しい種類の薬草ですね」


私は、温室内に植えられていた草木の一種を指さす。そこにはミントを思わせる、小ぶりで皺くちゃな葉っぱをたくさん茂らせた植物が自生していた。


「それが、どうかしたのか?」


「これは国内でも、極限られた地域にしか自生しない、とても珍しい薬草なのです

 人の魔力を増強させるという、珍しい効用をもちます。」


一見そこらに生えている草にしか見えないが、私にはわかる。これは学園のあった王都のち方では自生しない珍しい薬草の一種だった。


マリアンヌには、どんな効果の魔法薬でも調合できるという珍しい魔法スキルがあった。

冒頭で私が行ったように、私は念じれば任意の効果の魔法薬を生成することができる。

しかし、その能力は万能ではない。だから、私は魔法薬調合を学ぶかたわら、密かにこの国に自生する薬草についても勉強していた。


「これを使えば、私が調合する魔法薬も、もっと効果が強力なものになりますよ」


興奮を隠しきれず、私はそう告げた。


「たしか、お前は魔法薬を調合する能力があったな」


「はい。少しずつですが、調合できる魔法薬も増えてきているところです」


「気に入ったのなら、この温室は好きに使うといい。

 手入れはさせていたが、今まで誰も使っていなかったから」


「ほ、本当ですか?」


思わず、目が輝く。こんなふうに甘やかされてしまって、本当に良いのだろうか。

囚われの身でありながら、私は彼に反抗するする立場を忘れて、素で喜んでしまった。


* * *


それから私たちは、二人で庭の散策を堪能した。

夕暮れ時になり、再び屋敷へ戻る途中、ロクサーヌが、ふいに口を開いた。


「覚えているか。君は昔、この屋敷を訪れたことがある」


「……え?」


思いがけない一言に、身体が強張る。


覚えているはずがなかった。

だって、私がマリアンヌとしてこの世界に転生してきたのは、ほんの数ヶ月前のことだ。

それ以前の記憶など、存在するはずもない。私が知っているマリアンヌの知識や過去は、ゲーム内で語られる情報がすべてだった。


「そ、そうなんですね……。全然、覚えていませんでした」


「無理もない。君はまだ幼すぎたからな。」


ロクサーヌさまはそう言って、更に記憶を思い起こすように続けた。


「君の兄上と私は同い年なんだ。昔は親同士が親密ということもあり両家には何度か交流があった。そして君の家族が我が屋敷を訪れた際に、一度だけ幼い君も一緒に来たことがある」


これはゲームでも語られていない新情報だった。ロクサーヌさま達の公爵家と、マリアンヌの公爵家は昔から親交があったのだ。


「そうだったのですね。

 兄は、ロクサーヌさまのことを話すことがなかったので……存じ上げませんでした」


私はそう言ってはぐらかした。

ゲーム内では、ロクサーヌとマリアンヌの関係性は一切明かされていない。

でも、ここに来て彼と私が幼馴染だったことが明らかになった。



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