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乙女ゲームの悪役を押し付けられた悪役令嬢、追放エンド後にラスボスキャラの悪役公爵様に溺愛されてしまう  作者: 秋名はる


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最悪の追放エンディング

ある日の放課後のこと、私はリリィから呼び出されていた。


「いよいよ、ここからストーリーの後半ね。

 もう少ししたら、ヒースの天敵であるロクサーヌが登場するはずだわ。」



リリィは言った。私もこのゲームを熟知しているから知っている。

ストーリー後半で、リリィはヒース宿敵である辺境の悪役公爵のロクサーヌから妨害行為を受けて、その命を狙われる。



「ここから先は、ロクサーヌの刺客とのバトル展開なんかもあるはずよね。何か策はあるの?」



ゲーム上での後半のストーリーは、前半で培った魔力だとか、ヒースとの好感度とかが重要になる。あらゆる要素が十分に達成できていないとクリアできない難易度の高いゲームなのだ。


ただし、ここまでリリィはろくに魔力の習得を行っていないし、ヒースとの好感度上げも、正直十分なのか怪しい。私が心配して言うと、案の定リリィは匙を投げた。



「そんなのあるわけ無いでしょう。

私、戦闘なんてとてもじゃないけどやりたくないし。」


「……。 でも、クリアしないとハッピーエンドにならないんじゃない?」



この先はいくつかの戦闘も交えたストーリーをクリアしないと、バッドエンドになってしまう。



「分かっているわよ。」リリィは焦っていた。


「でも、そのためにわざわざリスクを犯して自分の命を危険に晒すわけにも行かないわ。それで考えたの。」


「…?」



「“私の代わりに、あなたがロクサーヌのところへ言って、彼を足止めしてきて”」


「_はあ?」意味がわからなかった。


「何言っているの?」


冗談でしょ?と、思いながらリリィの方を見上げれば、彼女は少しだけ眉をひそめた。



「わたし、実はまだ、魔力と好感度が少し足りていないみたいなの。

 このままだと戦闘展開で負けるから。あなたが時間を稼いできて。」


「そんな展開ストーリーにはなかったじゃない。

 私にはストーリー通りやるように強要したくせに。」


「あなた後半はもうそんなに出番無いんだから暇でしょう。私が無事にクリアできたら、今度こそ好きにしていいから!」


リリィはいつになく焦って私に寄り縋ってきた。


「……いくらあなたの要求でも流石に無理よ」



こればかりはどうしようもない。そもそも、私が彼のもとにいったところで、私に一体何ができるというのだ?


ゲーム内でのロクサーヌの恐ろしさは身にしみて分かっている。彼は他人を簡単に信用したりしないだろうし。関係ないマリアンヌが行ったところで、言うことを聞くようには思えない。


そもそも、私はリリィのハッピーエンドのためにそこまでしてやる義理はない。

これまでだって既に私は何度もリリィのために裏方として色々手助けをしてやっているのだ。


「……ったく、使えないわね。」


私が承諾しないのを見かねて、リリィは小さく舌打ちをした。


それでも、彼女はそれ以上追求することはしなかった。私は私はリリィが諦めてくれたと思って安堵し、そのまま解散して、一人で次の授業へと向かっていった。


実は、この時リリィは心の中で、再び良からぬ企みを企てていたのだけれど。私はついに気づくことが出来なかった。


** *


そして、さらに物語は進み――。

ストーリー通りに行動してきた私とリリィは、ついに第一幕のクライマックスを迎えた。


これまでのマリアンヌの数々の悪事が白日の下にさらされ、マリアンヌが断罪される場面。


「マリアンヌ、言い逃れはできないぞ。

 お前の悪事は、すべて白日のもとにさらされた」


「くっ……。ヒース様、聞いてください。

 すべては、そこにいるリリィのせいなのですわ!」


学園中の生徒たちが見守る中、私は膝をつき、うなだれて聴衆の前にさらされる。


「とぼけるのもいい加減にしろ。すでに証拠は揃っている。

 これまでお前がリリィに行ってきた悪事の数々は、すべてお前が仕組んだものだったのだな」


「いいえ、それは誤解です!

 あなたは、そこのリリィに騙されているのです。どうか目を覚ましてくださいまし!」


私は、ストーリー通り、必死にヒース王子にすがりついた。けれど、ゲーム進行上、激昂したヒースがマリアンヌの言葉に耳を傾けるはずもない。


「おまえには、国外追放を言い渡す。

二度と、私の前に顔を見せるな」


「そ、そんな……あんまりですわ……」


(よし、ここまではゲームシナリオどおりよ。)


私は心のなかで頷いた。

ここで、リリィがマリアンヌに対して温情を発揮すると、私は罪を許してもらえる。国外追放ではなく学園から追い出されるだけ。それがゲーム内でマリアンヌの最も罪状が軽いエンディングだった。それはリリィと取引の条件として約束していた展開だった。


学園からは退学処分になるけれど、自分の家に戻ることが出来して、そこから先は悠々自適な生活が遅れるはず。


私は、心してリリィのその一言を待った。


「ヒースさまの言う通りですわ。

残念ながらマリアンヌ様の罪は言い逃れできるものではありませんね__。」


(……あれ?)


リリィはセリフを忘れているのか、マリアンヌに対して温情の声をかけて来ることはなかった。私は、内心焦りだした。だって、リリィは、自分の言うことを聞いていれば、悪いようにはしないと言っていたのに。


(どういうこと?

どうして私が追放されることを止めてくれないの・・?)


思わずリリィの方を見上げると、彼は更にとんでもないことをいい出した。


「マリアンヌ様。あなたの悪事は、帳消しにはできません

どうか、遠い“アスタリスの辺境の地”でご自身の罪を償ってくださいまし」


「アスタリス!?」


私は思わず聞き返した。これでは話が違う。

そして、“アスタリス”という地名を聞いて、私はほんとうの意味でのリリィの企みを理解した。


「アスタリス」という場所、そこはラスボスのロクサーヌが治める土地であった。リリィはどうやら、私をむりやりロクサーヌのもとへ追いやろうとしているらしい。


「ちょっと、リリィ……! 何を言っているの?

それじゃ、話が違うわ!」


思わずマリアンヌらしからぬ声が出てしまった。


けれど、リリィがそう言い切った以上、ヒースやその他周りの人がそれ以上は私の話を聞いてくれるはずもない。抵抗も虚しく、私は学園から引きずり出されてしまった。


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