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乙女ゲームの悪役を押し付けられた悪役令嬢、追放エンド後にラスボスキャラの悪役公爵様に溺愛されてしまう  作者: 秋名はる


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妹想いなヴィクトルお兄様


そんな日々を過ごしながら学園生活はストーリー通りに進んでいく。

今日も無事に授業が終わった。下校のために荷物をまとめていると、教室の隅で数人の生徒たちがコソコソと話している声が耳に入ってきた。


「マリアンヌ様ったら、近頃はヒース殿下に取り入ろうと必死過ぎませんか」


「庶民出のリリィなんかに嫉妬ばかりして、見苦しいです。」


「この前なんて、ヒース様の気を引こうと必死になるあまり、彼に媚薬を盛ろうとしたらしいですわ

 クラスメイトのリリィさんがそれに気がついて、既のところで阻止したとか」


「魔法を私利私欲のために利用するなんて、同じ魔法学校に通う生徒として失望しました」


「入学当初はもっと気高く、凛々しい方だと思っていましたのに_。なんだか拍子抜けですわね」


同じクラスの生徒たちは、わざと私に聞こえるように、ひそひそと悪口を囁いている。

それも無理はなかった。


ゲームのシナリオは、すでにかなり進行している。

ここまで来ると、マリアンヌはリリィとヒースに徹底的にやられ、学園内での信用は地に落ちていた。学園内での居場所も少しずつ奪われていき、私は形見の狭い重いをすることが多くなっていた。


リリィは、私が中途半端に“悪徳令嬢”を演じることを許さなかった。

なので、私はゲーム内で起こる数々のイベントに、私は気の進まない思いで挑むしか無かったのだ。


悪徳令嬢として彼女を妨害しては、こてんぱんに打ちのめされる――

そんな展開を、何度も何度も繰り返してきた。


(_これも、第一章のストーリーが終わるまでの辛抱よ)


私は、ため息を付きながら呟く。


ゲーム内でのマリアンヌの登場シーンは前半のストーリーが終わるまでだ。

前半でマリアンヌの悪事が暴かれ、彼女が断罪されると、そこから先は彼女の出番はなくなる。後半からはラスボスのロクサーヌが台頭してくるので、もう役回りはなくなるのだ。


なので、ここを乗り越えて無事にゲームから退場できさえすれば、私は残りの人生を、穏やかに過ごすことができると考えていた。


本音を言えば、私だってこの夢みたいなゲーム内の世界を謳歌してみたい。


元の世界にいつ帰れるかわからないから、せめて公爵家の令嬢マリアンヌとして、誰にも邪魔されずに穏やかに過ごしたい。目立たず、どこか地方の田舎の年で悠々自適に暮らすのが夢だった。


そう心に決めているからこそ、私は自分が犯した数々の不本意な妨害行為や、それに対する非難や誹謗中傷にも絶えられる。

私は気を引き締めて、噂話を続ける生徒たちを尻目に、静かに学園を後にした。


** *


学園から屋敷へ帰宅すると、邸内がいつもより騒がしいことに気づいた。

誰か来ているのだろうか、そう思った次の瞬間だった。


「マリアンヌ、私の可愛い妹よ……!」


突然、背後から腕を回され、思いきり抱きしめられる。

驚いて顔を上げると、低く落ち着いた、しかしどこか甘ったるい声が耳元で響いた


「……ヴィ、ヴィクトルお兄様?」


その声を聞いて思い出した。悪徳令嬢マリアンヌには、年の離れた兄がいた。

ヴィクトル・ヴァロア。ゲーム内でも度々登場し、マリアンヌの悪事に加担する重要人物だった。


設定を思い出して、私はヴィクトルへ抱擁を返す。


「久しぶりだな。元気にしていたか?」


「はい、お兄様、わたしも会えて嬉しいですわ。

 お仕事の方は、もうよろしいのですの?」


「ああ、公務で長く外に出ていたが、ようやく帰宅を許されてね」


そう言って、ヴィクトルは満足そうに微笑んだ。

ヴィクトルは、マリアンヌと同じ紫色の短髪に、ルビーみたいな真紅の瞳を持つ、背が高くて精悍な顔つきの若者だった。


そんな彼もまた、ゲームに登場するキャラクターの一人だった。

マリアンヌと同じく強大な魔法(スキル)を持つ。その能力は戦闘に特化しており、全属性の魔力を自在に操れるうえ、剣術にも秀でていた。


彼は現在、王宮で国王陛下の護衛として仕えている。王の身辺警護を任される程の実力者であり、純粋な戦闘能力だけなら、彼の右に出る者はいない。と、ゲーム設定画面のキャラクター紹介で読んだことがあった。


「愛しいマリアンヌ、学園生活は変わりないか」


ヴィクトルは、マリアンヌとよく似た、ルビーみたいな真紅の瞳を細めて、うっとりとそういった。


「は、はい……お兄様。万事、つつがなく……」


(本当は、まったくつつがなくないのだが、それを今彼に説明しても仕方がない……)


「それを聞いて安心したよ。

 使用人たちの話では、最近おまえはあまり元気がないと聞いた。学園で何かあったのではないかと心配していたのだ」


「ご心配には及びませんわ。

 最近は魔術の試験が立て込んでいて、疲れていただけです」


私は、彼を心配させまいと、当たり障りのないこと理由をつけて、とぼけて見せる。


「そうか。でも、もし無礼を働く者がいたら、すぐ兄様に言うんだよ。

 私が、そいつを“消してあげよう”」


ヴィクトルは、さらっと恐ろしいことを口にした。


それもそのはず、ゲーム内でのマリアンヌの兄、ヴィクトルはかなり危険な男なのだ。


表では国王の重鎮として活躍し、裏では反対勢力の排除や暗殺といった汚れ仕事も辞さない。その冷酷さゆえ、社交界では密かに恐れられている存在でもある。


異常なほど妹のマリアンヌに執着していて、悪徳令嬢マリアンヌの言うことを何でも信じる。彼はゲーム内にも度々登場し、マリアンヌの数々の悪事を帳消しにしたり、マリアンヌの悪事のサポートをして、主人公リリィたちを妨害するのに一役買っていた。


「お兄様……そのような物騒なこと、おっしゃらないでください。本当になんでもありませんわ」


本当は、リリィにはいいようにされ、立場も危うい。

本心では、あいつを消してください、といってしまいたいところだけれど。まだここでは彼の登場場面ではないのでやめておく。


それにここで余計なことを言えば、本当に取り返しのつかない事態になりかねない。彼の存在はシナリオ運営上必要なときだけ関わることに留めていた。


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