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ヒロインに悪役を押し付けられた悪役令嬢、追放エンド後にラスボスの悪役公爵さまに愛重めに囚われる  作者: 秋名はる


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王弟ロビンくん

その後、私たちは王宮で国王陛下からも直々にお褒めの言葉を頂いた。


 元々現国王と因縁があるロクサーヌさまは最後まで良い顔をしなかったけれど。

 それでも、こうしてロクサーヌさまの婚約者として活躍できたことは嬉しかった。


 端から見れば、私たちはゲーム内でもそうであるように、社交界からは忌避される存在のはずだった。

 でも、先日のロクサーヌさまの魔物撃退の件もそうであるように、私たちは少しずつ周りから感謝され、尊敬される存在になっている実感があった。


 まあ、リリィはそれが面白くないみたいだけれど――。


 たしかに私は所詮、主人公ではなく、本来は単なる悪徳令嬢のマリアンヌだ。人助けをするなんて柄にも無いのかも知れない。

 あまり目立つつもりはないけれど、せめて嫌われない程度に徳を積んでおくことは悪いことではないはずだ。


 国王陛下へのご挨拶も終わり、私たちは屋敷に戻ろうとしたのだが――

 ここでもヒースさまが、私たちの功績を称えてもてなしたいと聞かないので、お言葉に甘えて、この日は王宮に滞在することになった。


 せっかくなので、私は王室の魔術師たちに、疫病の治療薬の調合方法などを伝授して回る。


 これから毎回私が直しに来るわけにもいかないので、これより王室付きの魔道士や治療士たちに私の生成した魔法薬を伝授し、後の対応を任せるつもりだった。


 一通りそれが終わって、ロクサーヌさまの待つ部屋に戻ろうとしたときのことだった。


「うえーん……!」


 廊下の先で、誰かが泣いている声が聞こえた。

 近づいてみると、小さな男の子が階段の踊り場にうずくまって泣いているのが見えた。


「一体どうしたの?」


 私は、すぐさま男の子の方に駆け寄った。

 うずくまって泣き喚いている幼い男の子。

 彼は、ヒース王子によく似た栗毛色の髪に、濃いブラウンの瞳をしたあどけない幼児だった。

 ゲーム内では登場していないキャラクターだ。見覚えがない。


「どうして泣いているの? 私はマリアンヌ、君の名前は?」


「ぐすん……。僕はロビンといいます」


 私はロビンくんを抱え起こして、事情を聞くことにした。


「おねえさん、助けて! 僕、勉強が嫌で逃げ出してきたんだ」


「勉強? それでそんなに泣いているの?」


「先生が、僕に魔法の発動を教えようとするけれど、全然うまくいかないんだ。もうやりたくないよ」


 そう言って、ロビンくんはさらに泣きわめく。

 どうやら彼は、王室付きの家庭教師の授業中だったらしい。魔法呪文の練習でうまく発動できない魔法があるようだった。


「そうだったのね。でも、きっと大丈夫よ。今は難しくても、いつかきっとできるようになるわ」


「だめだよ。何度やってもうまくいかないんだ。先生にまた叱られる。もうやりたくないよ」


「困ったわね……」


 ロビンくんは、私にしがみついて全然離れようとしない。

 こんなに大声で泣きわめく彼の様子に、なんだか不憫な気持ちが湧いてきた。


「泣かないで、きっと大丈夫よ。そうだ、おねえさんがいいものをあげるわ」


 そう言って、私はドレスのポケットからいつもの魔法薬生成用の空き瓶を取り出した。

 瓶に念じて、ある薬を調合する。瓶の中には、澄んだ海の色みたいな青い液体が生成された。


「なあに、これ?」


「私が生成した魔法薬よ。これを飲めば、今日一日あなたは何をやってもうまくいくはず。あなたの魔法もきっと成功するわ」


 ロビンはしげしげとその薬を眺めながら受け取った。


「――本当にうまくいくの?」


「絶対なるわ、そう信じていればね」


 半信半疑ながら、ロビンくんは恐る恐るそれを飲む。


「――なんだか、楽しい気分になってきた」


「そうでしょう?」


 私ははにかんだ。


「うん、なんだかうまくいきそうだよ。ありがとう、おねえさん」


 元気になったロビンくんは、勉強に戻っていった。

 私は、その背中を見送った後、ロクサーヌさまの元へ戻っていった。


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