表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役を押し付けられた悪役令嬢、追放エンド後にラスボスキャラの悪役公爵さまに愛重めに囚われる  作者: 秋名はる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/38

王都の疫病2

王都へ向かう馬車の中で、私は今回の疫病のことをひとり考え続けていた。


ゲーム内でも、王都に疫病が流行する事件が起きる。ゲームではロクサーヌの呪いが原因で、それをリリィが聖女の力で治癒するという展開だ。ゲーム後半でリリィは魔法を習得して聖女の力に目覚め、ヒースとともにロクサーヌから差し向けられる困難を乗り越えていくことになっている。


でも、王都の現状を見る限り、リリィはまだ動いていないようだった。


これまでシナリオをいくつか変えてしまったせいで、リリィが鍛錬をやめてしまったのだろうか。それとも、これから動くつもりなのだろうか。


(リリィが対応するつもりなら、私が先に動くのは余計なお世話かもしれない)


でも、少しでも貢献できるなら——そう思いながら、私は馬車の揺れに身を任せた。


* * *


「今回はくれぐれも無理をするな。所領内と違い、ここで病に倒れたら簡単には屋敷に戻れない」


「わかっています。もうあのような真似はいたしません」


また彼に看病されることになるのは、色々な意味で大変だ。言われるまでもなく、前回のヘマは繰り返すまいと心に誓っていた。


王都にたどり着いた私たちは、さっそく近隣の診療所へ向かった。中には既に大勢の患者が詰め込まれていて、皆が村での症状と同じ高熱に苦しんでいる。


私はスタッフに事情を説明してから、回復薬の調合を始めた。


どんどん薬を生成して、温室で採取した薬草の搾り汁を加えていく。葉を一枚ちぎって瓶に入れると、みるみるうちに薬液が濃いオレンジ色へと変わった。


「この薬草を加えることで、中の薬の効果が増強されます」


魔法を使うにはMPが必要だ。単純な薬であれば連続で百人分ほどまで生成できる。でもそれ以上は限界が来る。だからこそ、この薬草との組み合わせが重要だった。


「これで、一度に大勢の方に服用させることができます」


出来上がった濃いオレンジ色の強化魔法薬を小さな小瓶に分けて、診療所の看護師たちに配っていく。最初は見知らぬ貴族二人組に首をかしげていた看護師たちも、私が魔術師だとわかると快く協力してくれた。


「なんと……本当にあっという間に病が治ってしまいました」

「王室の役人たちは、ずっと何の支援もしてくださらなくて困っていたのです」

「貴方様が来てくださらなければ、助からなかったかもしれません。本当にありがとうございます」


ここにいる患者全員に薬を飲ませ終えると、皆たちまちのうちに元気を取り戻した。薬草を使った強化魔法薬も、期待した通りの効果を発揮してくれたようだ。


ただ、診療所のスタッフの話を聞く限り、リリィたちや王室の役人たちは、私が来るまで何ら対応をしていなかったらしかった。


* * *


無事に治療を終えて、帰り支度を整えて診療所から出た矢先——。

外に、王室の紋章を付けた大勢の衛士たちがやってくるのが見えた。


「マリアンヌ? 一体どうしてここに?」


衛士たちを伴って現れたのは、ヒース王子だった。

ヒース様は私たちを見るなり、明らかに警戒の色を浮かべた。


「屋敷に戻ったのではなかったのか。ここは疫病が蔓延している危険なところだ。どうして君たちが……」


私はヒース様にこれまでの経緯と、診療所での治療のことを説明した。


「というわけで、ここにいる患者の治療は終わりました。もう心配いらないと思います」


ヒース様は目を見開いた。


「まさか、君がここにいる患者を全員治療したというのか?」


「はい。所領内で流行っていた病と同じものでしたので、難しくはありませんでした」


「そうだったのか……。世話をかけてしまったな」


ヒース様はそう言って肩を落とす。そばでやり取りを聞いていたロクサーヌさまが横槍を入れた。


「全くだな。本来これはお前が対処すべき問題だろう。中央政府は怠慢ではないか」


「……確かに、我々はこの疫病への対応に苦慮していた。治療士が治癒を施しても感染者が増え続けて埒が明かなかった。治療魔法では歯が立たないので、近々王室の聖職者や聖女たちを集めて祈祷を行い、鎮めようとしていたところだったんだ」


聖女、という言葉に私はハッと息をのんだ。


ゲームシナリオでも、この病は治療魔法では対処できない。だからこそリリィの聖女の力が重要になるはずだったのだ。


「君たちが来てくれなければ、もっと深刻なことになっていただろう……」


ヒース様は素直に詫びた。


「いえ、とんでもありません」


そう答えながら、私は複雑な気持ちを抱えていた。


(ゲームどおりであれば、本来ここはリリィがなんとかすべき場面だったはずだ)


一体彼女は今、何をしているのだろう。私は少しだけ心配になった。


「患者の治療は済ませました。薬も余分に備蓄しておきましたので、また何かあればお使いください」


そう言って、余っていた薬の瓶をヒース様に差し出した。


「では、私たちはこれで——」


「ちょっと待ってくれ」


その場を去ろうとした私たちを、ヒース様が引き止めた。

正式にお礼がしたいと言って、私たちを王宮に招きたいという。


こうして私たちは、再び王宮を訪れることになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ