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ヒロインに悪役を押し付けられた悪役令嬢、追放エンド後にラスボスの悪役公爵さまに愛重めに囚われる  作者: 秋名はる


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リリィの思惑

(どういうこと? 一体なにが起きているの)


リリィは眼の前の光景が信じられなかった。


混乱の最中、王太子とその婚約者であるリリィとヒースは真っ先に会場から避難していた。


護衛に伴われて、真っ先に会場から抜け出していたリリィであったが、その際に一瞬だけ背後の様子を目撃していた。

それは会場の中央の方で、何者かが魔物と交戦している光景だった。

混乱の最中に慌ただしく逃げてきたので、かの人物の顔までは目撃していない。でも、あの風貌はもしや


(あのロクサーヌが、式典を妨害するのではなく、逆に魔物を倒して参列者を助けたですって……)


こんなのはゲームのシナリオにはないことだった。

彼は、本来であればリリィ達のイベントをぶち壊すために現れる。


(やはり、私がロクサーヌを式典に招待したことで、シナリオが少し変わったみたいね)


リリィは、ゲームシナリオで今日起こるはずの出来事を知っていた。だから、それを回避するために先手を打ってみた。



(それにしても、マリアンヌは一体なにを考えているの? ますますわからなくなってきたわ……)


リリィは、ここへロクサーヌとマリアンヌを招待した経緯を思い起こす。


ヒースを陥れた罪で断罪され、アスタリスの地へ追放されたマリアンヌ。彼女はそこでリリィのために、ロクサーヌの足止めをするはずだった。


しかし、マリアンヌは最近、リリィ達の予想していなかった動きを見せている。


リリィが唯一危惧していたのは、マリアンヌがリリィを裏切ってロクサーヌに取り入ってしまうことだった。


リリィと同様にゲームのシナリオを熟知している彼女であれば、ロクサーヌ側に入れ知恵をして、リリィがバッドエンドになるように仕向けることができる。


だから、リリィはマリアンヌの思惑を探るために、二人を式典に呼びつけた。


結果は今見たとおりだ。彼らは魔物を召喚してイベントを台無しにするどころか、逆に窮地を救ってしまった。


一見すると、マリアンヌは未だにリリィ達に恨みはなくて、ロクサーヌがリリィ達に危害を加えないように取り計らってくれているようにも見える。


でも、真意はまだわからない。


(やはり、本人に直接確かめるしかないわね…)


リリィは腕を組んだ。


(それにしても、ロクサーヌってゲームでは仮面を被って、素顔を隠しているのではなかったかしら__?)


リリィは、会場からの去り際に、魔物と退治するロクサーヌらしき銀髪の青年のことを目撃していた。


しかし彼は、ゲーム内での設定と異なって仮面を付けていなかったように見えた


(遠目だったので、顔はよく見えなかったけれど_)


リリィは首を傾げた後、気を取り直して廊下へ出た。


* * *


魔物が無事に退治されて暫くしたのち、ようやく王宮内の護衛部隊の増援が到着した。


駆けつけた部隊は、何者かによって既に魔物が討伐されたことを知ると、目を丸くして驚いていた。


しかしすぐに気を取り直して、今度は会場内に取り残されていたけが人の救護や、瓦礫の撤去などに取り掛かかる。


彼らの案内によって、私を含め会場にいた参列者たちは、全員会場から避難した。今は別室に集められて手当などをしている。


「まったく、せっかく気が向いて久しぶりに王都へ出かけてみれば、魔物の襲来に遭遇するとは。

 王家の警備は一体なにをやっているのだ」


「本当に、災難でしたね」



この頃になっても、ロクサーヌさまの周りにはの活躍に感謝の意を伝えようと、彼の周りに集まってくる大勢の列者達が絶えない。ロクサーヌさまは、そんな彼らの歓迎をサラリと受け流していた。


幸いにも、魔物に襲われた参列者の中に死者は出なかったようだった。何人か、瓦礫の下敷きになって怪我をした者がいたが、命に別状はないそうだ。今頃は王室付きの治癒魔法士たちによって治療が施されているだろうから、彼らもすぐに良くなると思う。



 ヒースとリリィの婚約報告は、このようなトラブルに見舞われながらも、一応は終了した。


私はロクサーヌさまに庇っていただいたおかげで特に怪我もなく元気だったので、怪我人の救護を手伝ったりしていた。



 そんなとき——。


「アスタリス公爵、そしてマリアンヌ嬢」


振り返ると、そこには先程まで会場の復元にあたっていたはずの近衛兵が数人立っていた


「先程の魔物の襲撃で、貴殿が魔物を討伐したと聞いた」


「そうだが」


近衛兵は、まるで私達を脅すような鋭い目を向ける。

ロクサーヌさまはそんな彼らの態度に、警戒の色を濃くし、一歩彼らの前に躍り出た。


「ヒース王太子より、今回の魔物討伐について直々にお礼をしたいとの仰せだ。ご同行を願いたい」


「お礼? ふん、そんなものは必要ない。

 たまたまあいつの不手際の尻拭いをしてやったまで。この借りはいつか必ず返してもらうと、あいつに伝えておけ」


ロクサーヌさまは不愉快を露わにして、近衛兵達を突き返す。


「ま、まあまあ、良いではないですか。

 せっかくですし、ヒースさまにもご挨拶をしてから帰りませんか」


その場を取り持つように、私は提案した。


せっかく王都にまで出向いたのに、このような散々な目にあったので、当然といえば当然の反応だろう。


しかし、私たちにはまだ、ヒースやリリィに対して確かめられていないことがある。


私の提案にロクサーヌさまが渋々頷く。

そのまま近衛兵達に連れられて別室へと向かっていった。


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