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ヒロインに悪役を押し付けられた悪役令嬢、追放エンド後にラスボスの悪役公爵さまに愛重めに囚われる  作者: 秋名はる


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19/55

婚約宣言イベントへ

 そんなわけで、私は再び王都へとやってきた。よく晴れた、春の日のことだった。

 赤いレンガの道を馬車が進んでいく。窓辺から外の景色を除くと、街路樹には花が咲き誇って、甘い花が香り鼻先をついた。


 しばらく進み、王家の紋章をかたどった荘厳な城門をくぐると、中には広大な敷地が広がっていた。石畳の小道の先には、ゲームでよく知る豪華絢爛なお城がそびえ立っていた。


この日、なぜだかロクサーヌさまは人前だと言うのに、いつものあの怪しい仮面を装着していない。


「今日は素顔をお見せになってもよろしいのですか」


「ああ、あれはもう必要ないんだ」


朝方、そのことに気がついた私が問いかけると、ロクサーヌさまは何やら意味深にいった。


* * *


お城のエントランスの前には、既に大勢の貴族たちが集まっている。

馬車を降りると、ロクサーヌさまは慣れた手つきで私をエスコートしてくれた。そのまま彼の手を取って、王宮の広間の方へと入っていく。

すると、すかさず多くの貴族たちの視線がこちらに向けられた


「あれは、まさかマリアンヌ様ではなくて?」


「まさか、そんなはずはありませんわ。彼女はつい最近、ヒース王太子に見放されて国外に追放されたと聞きましてよ」


「一体どんな面を下げてこの場所に戻ってきたというのかしら——」


ひそひそと耳打ちしながら、見知らぬ貴族令嬢たちが顔を見合わせる。

冷たい視線とともに、そんな囁きが漏れ聞こえてきた。


 悪役キャラの役回りとはいえ、私は学園で派手に断罪されて、辺境へ追放になったばかりだ。ヴァロア公爵家の令嬢マリアンヌが追放されたという知らせは、瞬く間に社交界に知れ渡っただろう。


 今や渦中の人物である私が、再び人前に姿を現したのだから、こうした嘲笑は予想出来たことだった。

私は、少しだけ身を固くした。



一方で、好奇の目は私にだけではなく、隣にいるロクサーヌさまの方にも向けられる。

しかし、貴族たちがロクサーヌさまに向ける反応は、私が予想したのとは異なった。


「ところで、マリアンヌさまの隣に連れ添っている方は一体誰なのかしら?」


「さあ、このあたりではお見かけしない方ですね」



(もしかして_みんな彼がロクサーヌさまだということに気がついていないの?)


周りの人が、ロクサーヌ様へ向ける視線を横目に受けながら、私は思った。


ゲーム世界ではロクサーヌさまは、常に仮面を被って素顔を見せないキャラクターとして描かれる。

つまり、彼は今まで社交界のようなオープンな場面に現れる際も、常に仮面を被っていたと考えられる。


そんな彼がいきなり素顔を晒して現れたとしても、気がつくことが出来ないでいるらしい。


「それにしても__なんて麗しい方なのかしら」


貴族令嬢たちは、ロクサーヌさまの素顔を見て、思わず見とれてため息をつく声が聞こえる。


艷やかな銀糸の髪色と、魅惑的な紫水晶アメジストの瞳は、この世界でもかなり珍しいようで、参列していた貴族たちの目を惹きつけていた。


そんな周りの様子を、ロクサーヌさまはこともなげに受け流していた。


超絶美形の見知らぬ青年が、マリアンヌの隣にいることに気づいた貴族たち。彼らは途端に私への誹謗中傷や囁きをやめた。


おかげで、それ以降は私に対する誹謗中傷や囁きはピタリと止んだ。私は正直ほっとしながら、リリィたちの婚約宣言の会場へと入っていった。


* * *


 会場には、すでに大勢の貴族令嬢たちが詰めかけていた。

 そこは、王宮で最も広い広間の一室だった。天井にはきらびやかなシャンデリア、壁には歴代の王家の人々が描かれた肖像画が並んでいる。奥には国王陛下が御成になる豪華な玉座が据えられていた。


 この場所で、リリィとヒース王子は婚約を宣言する。それが、ゲームの第二幕の冒頭部分だった。


(本当に、ゲームイベントで見た光景と全く同じだわ——)


 私は思わず感心してしまった。

 しかし、すぐにこれから起こることを思い出して、気を引き締める。


 しばらくすると、会場にヒース王太子とリリィが姿を現した。リリィは、ゲーム内で見た通りの清楚な純白のドレスに身を包んでいる。


そして、イベントムービーで描かれていた通り、二人は仲睦まじい様子で壇上に立ち、玉座にいる国王陛下の前で婚約を宣言した。


「皆様、本日ここに、ヒース様と婚約する運びとなりました。これからは、ヒース様を支え、共に生きていくことを誓います……」


 リリィは主人公らしく、少し恥じらうように宣言した。

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