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悪役を押し付けられた悪役令嬢、追放エンド後にラスボスキャラの悪役公爵さまに溺愛されてしまう  作者: 秋名はる


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突然の婚約宣言!?

「——では、こうしよう。

 私はマリアンヌを婚約者として迎え入れる。それでどうだ?」


「……はあ?」


「ちょっ、ちょっと待ってください。

それはすこし気が早いのではありませんか?」



とんでもない一言が飛び出して、ヴィクトルお兄様は唖然としていた。私も、思わずロクサーヌさまの方を振り向く。



「いいや、なんの問題もないはずだ」


ロクサーヌさまは、なぜだかとても確信じみた雰囲気で構えている。

そして、さらに衝撃の一言を口にした。


「ヴィクトル、お前なら知っているはずだ。そもそも、私とマリアンヌは許嫁の関係だった」


「ええーっ!!」


(初耳なんですが…)


しかし向かいに座っていたヴィクトルお兄様は、歯ぎしりをして押し黙った。兄は、どうやらこの縁談の話を知っているらしい。


「貴様……その話を今更持ち出してくるとは」


「タイミングなど関係ない。

私にはマリアンヌを屋敷におく正当な理由がある」



状況から察するに、どうやら本当にマリアンヌはロクサーヌさまとは許嫁の関係だったらしい——。


少し前に屋敷内を散策していた時に、マリアンヌは昔この屋敷を訪れたことがあると聞いた。マリアンヌの生まれたヴァロア家とロクサーヌのアスタリス公爵家は古くは親交があったということなのだろうか。


二人のやり取りを聞きながら、内心私はほくそ笑んでいた。

うまくすれば、本当に帰らなくても良くなるかもしれない。


「あのー。ロクサーヌさまもそう言ってくださっているわけですし。ほとぼりが覚めるまでは、この屋敷で大人しくしていたいと思いますが——」


おもむろにそう提案してみた。


「本気なのか!?」


「まあさすがに、婚約の話は、まだ気が早いかとは思いますけれど——」


「——では決まりだな」


ロクサーヌさまは、私がまだ言い終わらないうちに結論を出すと、話を切り上げてしまった。


取り残されたヴィクトルお兄様は、最後まで納得できないという顔をしていた。

けれども、外でもない私自身が戻りたくないという意思が固いことを伝えると、最終的には悔しそうに屋敷を後にしていった。


* * *


(せっかく探しに来てくださったのに、ヴィクトルお兄様には可哀想なことをしてしまったかしら……)


私は、あとになって心が痛くなっていた。

ふと、何気なく横を見上げれば、同様にこちらを見下ろしていたロクサーヌさまと目が合う。


「あんな事を言ってしまったけれど、君の意見をちゃんと聞いていなかった。

もし、不満があればいつでも兄のもとに帰ってもらって構わない」


彼は、なぜだかとても私の意思を尊重してくれた。

ロクサーヌさまは、未だ私がどこかでヒースへの思いを捨てられていないのでは? と勘ぐっているのかもしれない。


そんなふうに言わなくても、私のヒースへの気持ちなんて、もとからこれっぽっちもないのに——。


「いえ、私は最初から、戻る気なんてありませんでしたから!」


彼を安心させるために言うつもりが、あまりにもきっぱり言いすぎて、私は言い終わってからすこしだけ動揺する。


「——と、とはいえ。

 私がロクサーヌさまと許嫁の関係だったことには、正直驚きでした」


私は、動揺を悟られないように話題を変えた。


「ああ、あれはお前がまだ幼い頃に決まったことだった。君が覚えていないのも当然だろう」


そう言うと、ロクサーヌさまは部屋の窓辺に目を向けながら、遠い過去のことを思い返すように教えてくれた。


「元々は、おまえが生まれる前に、お互いの家同士が決めたことらしい。我々は、伝統ある家柄同士だ。昔は親交も深かったと聞いている」


確かに、ヴァロア家もアスタリス家も、由緒ある公爵家同士だ。


「しかし、我が父が国王陛下との仲違いをしたことで、両家の縁談もこじれてしまった。

ヴァロア家は、かねてより国王陛下の腹心として王家との関係を重視していたから、王政に仇なす我らとは、相容れないのだろう」


現在のこの国の国王は、ヒース王子の父親であるエドワード王である。

ゲームでは、このアスタリス家とエドワード王家の確執が、二人の闘争を招くことになる。


「そうだったのですね」


私は静かに頷いた。

縁談が白紙になった背景には、そんな事情があったのか——。


しかし、ならば今のロクサーヌさまが、その縁談を改めて持ち出したのはなぜだろう。お兄様をその場で黙らせるための方便に過ぎないのか、それとも……。


「でも、もちろん私は家同士の確執など、気にはいたしませんので。あらためて、これからよろしくおねがいします」


たとえ家同士に確執があろうとも、今の私の気持ちに変わりはない。

むしろ、こうして婚約すると決まったからには、私も婚約者として彼に恥じない振る舞いをしなければ、と張り切っていた。


決意を持ってロクサーヌさまの方を見上げれば、彼は少し驚いたような顔をしている。

澄んだ紫陽花色の瞳を見開いて、こちらを見据えていた。


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