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悪役を押し付けられた悪役令嬢、追放エンド後にラスボスキャラの悪役公爵さまに溺愛されてしまう  作者: 秋名はる


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ヴィクトルお兄様の来訪

引き続き屋敷で平穏に生活をしていた、ある日のこと——。突然、屋敷の門をけたたましく叩くものが現れた。


「マリアンヌ! 無事か!?」


「ヴィ、ヴィクトルお兄様!?」


戸を開けてびっくり、そこにいたのは、なんとヴィクトルお兄様だった。

私は慌てて兄の元へ駆け寄る。すると、兄は私をしっかりと抱き寄せて離さない。


「見つかってよかった。

 学園を追放されたと聞いて、方々を探し回っていたのだぞ」


「お、お兄様。私も会えて嬉しいですわ」


そう言って、私もヴィクトルお兄様に抱擁を返す。

しかし、その一方でこんなところをロクサーヌさまに見られてはまずいのでは? という一抹の不安がよぎっていた。


「ヴィクトル・ド・ヴァロア。このようなところへ押しかけてくるとは、一体何用だ?」


すぐさま私の不安は的中した。

恐る恐る振り返れば、エントランスの階段の上に、ロクサーヌさまが仁王立ちして悠然と構えている。


一気に、現場に緊張が走った。


「ロクサーヌ、私の愛する妹が世話になっていると聞いて駆けつけてきた」


ヴィクトルお兄様は、まるでロクサーヌさまを煽るかのように、とんでもないことを言い放った。


「妹を誘拐するとは一体何事だ?」


「ゆ、誘拐!?

 お兄様、それは誤解ですよ……」


(一体何を言っているんだ、この兄は——)



私があたふたしている横で、ロクサーヌさまは階段をおりて玄関口まで歩いてくる。そしてヴィクトルお兄様と正面から対峙した。


「聞き捨てならないな、マリアンヌは自らこの屋敷にやってきたのだ。

 それを、私が寛容な心で受け入れたまで」


「そんなことを私が信じるとでも?」


「……ふたりとも落ち着いてください!」


そう言って、私は一触即発の二人をなんとか引き離すと、まずは二人を客間の一室へと案内した。そして、私はここへ来るまでの一部始終を、ヴィクトルお兄様に聞かせた。


「——というわけで、しばらくロクサーヌさまのお屋敷で過ごすこととなったのです」


「——要するに、誘拐されて、この屋敷に監禁されていた。ということだな?」


「お、お兄様……」


私が懇切丁寧に説明しているにもかかわらず、兄は全然話を理解しようとしない。


「マリアンヌ、話は後だ、今すぐに私と共に帰ろう。

 ヒースには私から説得してあげるから」


そう言って、ヴィクトルお兄様が私の手を取ろうとする。

すかさず、ロクサーヌさまが立ちはだかって遮った。


「聞いていなかったのか?

我が所領内において、私は自らの手中に置かれたものを簡単に手放すつもりはない」


「実の妹を家に連れ帰るのに、貴様の許可は必要ないはずだ」


両者はいがみあって、一歩も引く様子がない。


(ややこしいことになってしまった——)


目の前で起こっている険悪な雰囲気に、私は頭を抱えていた。


膠着してしまった状況を打開すべく、ここで私はおもむろに口を開いた。


「お兄様、せっかく屋敷まで迎えに来ていただいたのは嬉しいのですが。できれば私は、しばらく実家には戻りたくないのです……」


「なんだと!? 一体どうして?」


私は、初めてみんなの前で、自分の胸中を打ち明けた。


「私がヒース様を思うあまり、リリィや他の生徒達に迷惑をかけたことは事実です。

そのせいで、私は学園を追放されました。既に学園や社交界にも、私が追放されたことが知れ渡っているでしょう。今戻っても、私は渦中の人物として居場所がありませんわ」


私は慎重に言葉を選んでそう言った。


正直を言うと、私はこのところ、もうあまり王都へ戻りたいとは思わなくなっていた。

だって、学園にはあの性悪なリリィがいるし、それ以外にも、彼女のせいで私は学園や社交界での信用を落としてしまった。たとえ兄の力で屋敷に戻ったとしても、後ろ指を刺されながら居心地の悪い思いをするのは嫌だった。


それに、私はそもそも、リリィにロクサーヌさまの足止めをしろと言われてこの地に追いやられた背景がある。


不本意とはいえ、アスタリスに追放されたはずの私が、のこのこと都に戻ってきたりしたら、またリリィに難癖をつけられて迫害される可能性が否めなかった。



(——ここにいれば、取り急ぎは平穏な日々を送ることができる。

 王都からは離れているし、そこそこ快適だし、帰らなくて良いなら帰りたくない)


と、密かに考えていた。



「なので、ロクサーヌさまがお許しいただけるのであれば、このまま屋敷に置かせてもらうのも悪くないと思っているのです」


「……マリアンヌ、正気か?」



ヴィクトルお兄様は空いた口が塞がらない、といった様子で言葉を失っている。

そんな様子を見て、隣のロクサーヌさまは勝ち誇っていた。


「決まりだな。本人が望んでいる以上、貴様にも手出しはできないだろう」


「勝手なことを言うな。

まだ嫁入り前の妹をこのままここに置いてのこのこと帰れるか!」



そう言って、ヴィクトルお兄様は今度は私に向き直った。


「マリアンヌ、考え直すんだ。

 このままでは妹に何をされるか分かったものではないだろう」


ヴィクトルお兄様の目には、帰らないなら力ずくでも連れて帰るぞ、という気迫が見え隠れしている。私は、返答に困ってしまった。


——そのとき、ロクサーヌさまが静かに口を開いた。


「——では、こうしよう。

 私はマリアンヌを婚約者として迎え入れる。それでどうだ?」


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