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第28章

 アリアは王子に、自分の知っていることを語り始めた。

「王子様、私の母も、実際に自分の目で見たわけではございませんので、私には詳しいことはわかりません。けれど、私が母から聞いたことは、全てお話致しましょう。

 王様は元々、リュートを奏でる吟遊詩人として、この城にいらっしゃいました。アーロン王様は詩人であった頃、お妃様にお仕えておられました。そして、とても怖ろしい方法で、当時の国王様を退け、玉座にお就きになられたとお伺いしております。アーロン王様は、本当はただのリュート弾きではなかったのでございます。王様は、リュートで人を魔術にかける、魔法使いでいらしたのです。強力な魔力をお持ちで、王様は城中の者を皆殺しになさったと、母は申しておりました。怖しい殺戮のあとで生き残ったのは、王子様のお母上でいらっしゃる、当時はお姫様でいらしたお妃様だけであったそうな。それは、城下の者が、皆噂話として存じ上げていう通りのことでございます。

 その後、宮殿は清められ、母は侍女としてお妃様に近侍すべく、登用されたのでございます。縁続きの者が以前お仕えしておりましたために、母に白羽の矢が当たったのです。そのとき既に、お妃様のお腹には、王子様がいらっしゃって、産み月の準備を、母がお手伝いしたそうです。ですが、その間母は、国王陛下にお会いしたことは、殆どなかったと聞いております。陛下はずっとお部屋に篭りきりで、お妃様にも、お会いにならなかったとか・・・・・・。

 お妃様は、アーロン王様のためにお父上お母上、そして廷臣までも失うという悲しみに見舞われたのにも関わらず、王様のことを大層愛しく思っておられて、一度も悪く仰ったことはなかったそうでございます。母の話だと、お若い頃の国王様は、王子様によく似ていらして、とてもお美しかったそうな・・・・・・」

 王子は俯きながら、アリアの言葉に耳を傾けていた。その様子をじっと見守りながら、彼女は更に話し続けた。

 「お妃様は、王様をとても愛しておいででしたけれど、王様はお妃様を、全く省みられることがなかったそうでございます。そしてそのまま、王子様をお産みになった直後、お妃様はお隠れになられました。その時初めて、王様はお部屋から出ていらして、全ての儀式をご自分で執り行われたのだそうでございます。

 それからの王様は、お人が変わられたように政務にお励みになり、今のようにおなりなのだと、母は申しておりました。母は王子様にお名前をお授けくださるよう、何度も王様にお願いしたそうですが、なぜかどうしても、お聞き届け下さらなかったとか・・・・・・。

 私が存じ上げておりますことは、これだけでございます。全て、王子様にお話致しました」

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