前世と今世 前編
また少し長くなってしまったので前後編となっております。
よろしくお願いします。
ヤバイ!次の授業1階なのになんでトイレこんなに混んでるの!?
私、天城美沙は大学でトイレ待ちをしていた。
しきりに腕時計を何度も見ている。あーもー、次の教授厳しいんだから!と、苛立ちを感じながら順番をまっている所だ。
ようやく自分の番になり、手早く用を済まし、慌てて手を洗い、近くにある外階段を使い、今いる5階から1階の教室に向かっていた。
その間、急いでいた為、手を拭かず、カバンからハンカチを取り出そうとしながら階段を駆け下りる。
と、その時だ。私は足を滑らせ階段から落ちそうになる。慌てて手すりを握ろうとしたが、スピードが出ていた事と、手が濡れていた事が相まってか私は手すりから滑り落ちそのまま地面に落下する。
最後に思ったのは、あ、ただ愛!だった。
そこでハッと目が覚める。
すると、私の手を両手で祈るように握り締めているお父様が居た。
「おとうさま?」
絞り出すようなか細い声を出すと、この世の終わりのような顔をしていたお父様のが安堵の表情に代わり、
「神よ!貴方に感謝します!」
と、信心深くも無いくせに涙を流しながら神にお礼を言っている。
初めまして見る光景だというのにお父さまは相変わらずだな。と思ってしまう。
隣を見ると同じように安堵の表情を浮かべたお母さまがお父さまの手に自分の手を重ねていた。
「お母さまもどうしたの?」
次に出た声は声は小さいものの聞き取れ無いほどではなかった。
「シェリー、覚えて無いの?あなた、突然倒れたのよ?それから3日目が覚めなくて私達がどれ程心配したことか!」
と涙を流しながらお母さまが答える。
お父さまは相変わらず人目も気にせず泣きながら神に感謝の言葉を述べている。
お母さまの言葉で当時の事を思い出してみる。
苦しかった事は覚えている。
でも、私は何も口にしてないし、触れてもいない。
あれは突然やってきたのだ。
まあ、何にしろ、やってくるのは突然だよな。と、妙に冷静に捉えている自分に驚く。
そして思い出すのは先ほど見た夢。
私は2人に覚えがあった。見覚えというより名前を知っている。
両親なのだから当然だというそういう知り方では無い。
2人は天城美沙がボロボロになるまで何度も何度も読み返した18禁小説に出てくる主人公夫婦なのだ。
タイトルは『愛の無い結婚、ただ私だけが愛してしまった』通称ただ愛だ。
その小説は長年支え続けてきた婚約者にパーティ会場で婚約破棄を言い渡されたお母さまこと、シャルロットが、お父さまこと、クリストファーに見初められ、婚約し、結婚するという表向きの話を作り、実際は契約結婚というまあ、ありふれた出だしの小説なのだが。
私が特に気に入って今でもそのシーンを思い出すほと好きだったのは、美しい泉の前でお父さまが「君を愛することはできないが、家族として愛情を注ぐ事を約束するよ」という素敵なプロポーズをし、お母さまが涙ながらに了承するところ。
実は別に好きな人がいたが結ばれることは無いと諦めていたお父さまが婚約時代にお母さまを好きになってしまっている事に気づかず結婚。
普段は聡いお父さまが自分の気持ちには疎いというなんとも言えないもどかしさを感じたものだ。
そして、初夜での破瓜の痛みから涙するお母さまに誰か他に好きな人が居ると勝手に勘違いし、獣の如く犯しまくってしまい、気恥しさからしばらくお母さまに素っ気ない態度を取ってしまい、後々これが周囲の誤解に拍車をかける事になるのだが。
それでも優しく家族として愛情を注ぐという約束を守り、自分のピンチを助けてくれるお父さまを愛してしまうお母さま。
そして、自分の一方通行の愛に苦しみながらも夫を支える良き妻であり続けようとする健気なお母さま。
そん中、お父さまの好きな人と言われている女性が現れ一波乱。
結婚後のお父さまの態度もあり、周囲はその女性とお父さまは再婚すべきだという空気に。
それは、女性の悪知恵で公爵家の家族からもそういう空気が流れ始め、徐々に孤立しながらも懸命にお父さまを支え続けようとするお母様には涙が止まらなかった。
まあ、この間、お父さまの幸せの為、自分が身を引くべきなのかと真剣に悩むお母さまに、ここにいて欲しいとお父さまは告げる訳だが、周りが許さない。
お母さまもお父様のその真意に気づかない。
このすれ違いも堪らなかったのだ。
結局、公爵家を追い出され、実家に帰ったお母さま。
そんな中、お父さまが愛の告白をしにお母さまの実家に行き、温室での愛の告白。
それを受け入れたお母様とのお互いを想いあったエッチに涙が止まらないお母さまとお父さま。
あのシーンは正直私も涙が止まらなかった。
推してて良かったと心から思ったものだ。
読んで頂きありがとうございます。
よろしければ後編も読んで頂けると嬉しいです。
全年齢対象で大丈夫ですよね?




