伯爵家での日々 前編
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「ねえ、今日の観劇楽しかったね」
「そうね」
「あの俳優さん、新人だけどなかなかの演技で驚いちゃった」
「そうね」
「うーん、ジーンはどう思う?」
「いいと思うわ」
「ジーンさっきからそればっかり、ちゃんと人の話聞いてる?」
「ちょっと待て、シェリー、おじいさまは人形遊びに慣れていないんだお手柔らかに頼むよ」
「ジーン、私はリリーだって言ってるでしょ?」
「そ、そうだったね、リリーすまなかった」
「もう、ジーンは時々年寄りみたいでそんなんじゃお嫁に行けないわよ?」
「年寄りは酷いと思うぞじゃなくてわ」
「ジーンってほんとに面白いわね」
私はおじいさまとたまに人形遊びをしている。
その時の私の名前はリリー、おじさまの名前はジーンだ。この設定は変えず、色々な設定で遊んでいる。
クスクスと私が笑うとおじいさまはぐったりりとした顔で
「お人形遊びはわしには敷居が高すぎる。というより、シェリーの設定が毎回おかしいんだ。もっと子供らしい
設定にできんのか」
「そう言われても私は読んだ本に出てきた事を題材にしてるだけだけど」
「ロマンス小説か……」
「女友達同士って設定なんだからおじいさまも頑張って」
そういいながらニコニコする。
使用人の前でお人形遊びさせられているだけでも恥ずかしいだろうにこうして付き合ってくれる。
内容はともかく、一生懸命頑張ってるおじいさまを見るのが楽しくてつい意地悪してしまう。
「シェリーは楽しんでるのか?」
「もちろん、色んな意味で楽しいわ」
「……」
何か言いたげな目でおじいさまから見られるが、気にしない。子供なのだから大目に見てね。と開き直っている。
「続きやる?」
と聞いてみる。
「シェリーが楽しければ続けるが」
真剣に答えるおじいさまにクスクスとまた笑ってしまう。
「シェリーの人形遊びは普通の子と目的が違っていると思うんだが」
「だって、おじいさまがあまりにも不慣れな様子で一生懸命頑張ってる姿が嬉しいのと面白くて」
そう答えると
「そういう所は本当にあいつに似ているな。まあ、どんな理由であれ、シェリーが楽しければそれでいい」
おじいさまの言葉にもういじるのは止めておじいさまの得意なジャンルで遊ぼうと思い、
「この間少し教えてくれたチェスがやりたいな」
と言うと、
「あれはシェリーにはまだ早い。もっと子供らしい遊びをして欲しいんだが」
「子供らしい遊びなら侍女から色々教わってやってるよ?ちなみに、アンと人形遊びをやるとドロドロの愛憎劇になって楽しいし、ユーリを巡る三角関係とか楽しすぎたな」
「いや、だからそれは子供の遊びとは……と、いうより、あやつら、子供になんて事教えとるんだ!」
「え?私が読んでるロマンス小説とかには普通に出てくるよ?今、流行ってるみたい」
「……子供がそんなもの読むんじゃない!」
「えー、楽しいのにー」
まあ、どちらかと言ったらこうやっておじいさまをからかうのが面白いのだが、それはおじいさまも分かっているのだろう。特には何も言わない。
コンコンとドアをノックする音がする。
おじい様が入る許可を出すと、執事が入ってきておじいさまに何か伝えている。
おそらく、いつもの連中が来るのだろう。
楽しくなるぞー!
なんだかんだでいとこ達とも楽しく遊ばせて貰っている。
おじいさまの子供らしいとはかけ離れているのかもしれないが、私はこの時間が楽しかった。
正直、チェスには興味があるのだが、おじいさまが教えてくれないのなら本を読んで学べばいい。
「シェリー、チェスはもう少し大きくなってからだぞ」
えっと、おじいさまってもしかして人の心が読めるの?
稀に魔力が無くても特殊な能力を持って生まれて来るものが居ると魔術の勉強中に学んだ。
どちらにせよ、私にはどうでもいい事だ。深く考えても答えは出ない。
おじいさまはおじいさま特殊な能力が有ろうが無かろうがその事実は変わらない。
コンコン、再び扉がノックされ、おじいさまの、許可が出ると、おばさまといとこ達が入ってくる。
私はこの家で過ごすうちに小説に振り回されるのは控えよう。そう思い、アシュリー様と心の中で呼ぶのを止めた。
「シェリーちゃん、久しぶりねー!」
「こんにちは。昨日も会ったと思うんですけど?おばさま」
そう言って子供のする簡単なカーテシーをする。
「久しぶり、シェリー」
そういうのは長男レインハルト
「レインとはほんと、久しぶりよね、勉強大変なの?」
「まあ、覚える事が多くてね」
レインは最近、当主教育を受け始めている。今までの勉強よりも大変なのは当然だろう。
「シェリーと会えなかった時間は僕には永遠とも思える暗闇を歩いているようだったよ」
「……」
こいつ、今度はなんの影響受けてるんだ?いきなり会話に入ってくる常識のなさに不安になるが、次男フロイズのおかしな言動にも慣れてきている自分を怖く感じる反面、面白がっているのも事実だ。
まあ、おばさまが観劇に子供も連れて行っているのだからおそらく、そこで影響を受けているのだろう。侯爵家の人間としてはこの影響の受けやすさはどうなんだとは思う。
おじさまは好きにさせているらしい。それもどうなのだろう。
手遅れになる前に何とかすべきなのでは?と思うのだが、もう既に手遅れなのかもしれない。
まあ、これもこいつの個性として楽しんではいるが、将来が本当に不安になる。
考えても無駄だ。これは我が家の問題では無いのだから。
話題を変えよう。そう思い、
「今日はカイを連れてきてないんですね」
とおばさまに尋ねる。
「最近、カイには魔術の指導者を付けたの。夫がそろそろつけた方がいいと言ってね。私はもっと色んなところに遊びに連れて行ってあげたいけど、魔力持ちだから……って、ごめんなさい、シェリーだって色々あったのに」
おばさまも私の魔力暴走以降、態度が変わった。詳しい内容などは知らないはずだが、思うところもあり、私の負担にならないよう、気を使ってくれているのだろう。
おそらく、カイへ指導者を付けたのも私の事件が関わっているのだろう。
そこにおじさまの愛情を感じて、なんか怖そうなイメージだったけど、ちゃんと子供の事考えてるのよね、おじさまって。
「おばさまは付いてなくていいんですか?」
「本当は一緒に付いてあてあげたいんだけど、そこは夫が譲らないのよねー」
その言葉になるほどと納得してしまう。
侯爵が睨みを聞かせることで指導者となった魔術師はカイにおかしな事はできない。
おばさまだと、失礼だが侮られて下手をしたらカイを懐柔されてしまう可能性もある。
厳選はしているはずだが、信用はできない。魔術を持つと言うだけでそれを利用しようと近づく者も多いとお父さまが言っていた。
ふとお父さま元気にしてるかしら。
と、思うが、あのお父さまだどこかで何らかの魔術で私たちを見ているのは確実だ。
何も言ってこない、してこない。それがわたしの考えの裏付けとなっている。
お母さまの謹慎も解け、お母さまともきちんと話し合い、和解もし、今は公爵家に帰っている。
そうして欲しいと私が頼んだのと、お父さまと二人で話をして少し私と距離を置くという事にお母さま自身にも意味があると考えての事だ。
もうすぐ王冠の譲渡が行われ、新しい王が誕生する式典の準備などで忙しくなるというのも大きな理由の一つにある。
そんな中、呑気にここに遊びに来ているおばさまに大丈夫なのかと本気で思うが、まあ、その分おじさまがカバーしているのだろう。
ここまで自由な侯爵夫人なんておばさまくらいだろう。
それが可能なくらい働いているおじさまが倒れないか心配だが、クルーゼル家の問題に子供の私が口を挟むのはフロイズの問題と同じで、おかしな事なので何も言わない。
シェリーも楽しくやっですよ。という報告回です。
お父さまとお母さまの事もちらっとですがご報告を。
お母さまの考えは書きたいなという気持ちがあるので番外編的なものを後で出したいなと思ってます。
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