私を理解してくれる人 前編
お、お母さま、怒ってる。
しかも、この怒り方はヤバイ。
ど、どうしようまた私のせいで問題が起きてしまった。
私は自分の安易な行動を恥じると共に学習能力が無い事にも絶望する。
顔を真っ青にしていたのは私だけでなく、お父さまも真っ青というより真っ白といっても過言では無いくらいに青ざめていた。
「説明は下さらないのかしら?」
そんなお父さまに冷ややかな目でお母さまが尋ねる。
「顔を真っ青にしているそのご様子、どうやらシェリーの言っていた事は本当のようね」
と追い討ちをかけるお母さま。
やめてー!
私のせいでまたこんな事になるなんて私はどうしたらいいの?
私が怒りに任せて変な事をしなければこんな事にはならなかったのに。
私が軽はずみに行った行動でお父さまとお母さまの間に亀裂が入るなんて耐えられない!
全部私が悪いのだ。
「お母さま、私が言った事は誤解だったんです!現にここにある物はアーティファクトで間違いありませんし、お父さまが変な小細工をするとは思えません。私の勘違いなんです!」
そう必死に訴えるが、お母さまからは何も返ってこない。
どうしよう、私のせいだ。罪悪感はどんどんと深まっていく。
そんな中、ようやくお父さまが口を開く。
「シャル、君に何も言わず勝手な行動をした事は事実だし、それは俺が悪い。申し訳なかった。でも、君が思っているような事は決してない。これは命をかけて言えることだ」
「口では何とでも言えますわ。そもそも、そんな変な物まで用意してシェリーを騙すなんて許せませんし、浮気の事実を隠したいのならもっとましな嘘をおつきになるべきですわ」
と、お母さまも聞く耳を持たない。
「本物なんです!お母さま!」
私の訴えもお母さまの怒りに油を注ぐ事となり、ついにお母さまは黙り込んでしまった。
また、私は余計な事をしてしまった。
罪悪感で頭がいっぱいになり、もう生きていたくない!そう思い、アーティファクトの短剣に手を伸ばし、自らの喉に突き立てようとした時、
「いい加減にしないか!」
という怒号と共に私の手から短剣が奪い取られる。
驚いて見上げるとそこには怒りから顔を真っ赤にしたおじいさまがいた。
その声にお父さまとお母さまは私がやろうとしていた事に気付き、驚きと共に
「シェリー!」
と叫びながら2人が近づこうとする。
「近づくな!」
そう叫んで2人の動きを止めたのはおじいさまだった。
「シャルロット、お前は恥ずかしくないのか?お前の抱えている傷はわしもよく知っている。その傷がお前があの男を疑う原因となったのも分かる。だが、お前が取った行動は母親としてどうなんだ?シェリーをどんどん追い詰め、最終的に死のうとしていた事に気付いていなかっただろう?シェリーはまだ5歳の子供なんだぞ!自らの怒りから我を忘れ、お前はわしの大事な孫を死なせるところだったんだぞ」
その言葉にお母さまは泣き崩れる。
お父さまも呆然としている。
「貴様も貴様だ。貴様は、昔から何も変わっていない。あの時跪いて一生かけて自分の罪を償っていくと言いながら、やってる事は昔と変わらない自分勝手な独りよがりではないか!」
その言葉にお父さまは何も言わない。言えないのだろう。
なおもおじいさまの糾弾は続く。
「貴様は昔から何も変わらないというより、変わろうとすらしていない。それで娘が納得し、幸せに暮らしているのなら仕方がないと娘の男の趣味の悪さは分かっていたからずっと言いたい事も言わず耐えてきた。だが、今回の事は何だ?勝手にも程があるというものだろう!そんな奴に大事な娘と孫を任せておけん!」
その言葉に黙って聞いていたお父さまが反論する。
「お言葉ですが、今回の事は確かに私が悪かったです。申し訳なく思っております。しかし、アーティファクトを守る神獣はとても力が強いのです。私はあえて愛する妻や娘に何も伝えない事、連絡も取れないようにして早く家に帰るという想いを魔力の糧として結果、予定より早く帰ってくる事ができたのです」
「それが?」
おじいさまの言葉は辛辣だった。




