お父さまの怒り 前編
シェリアサイドにようやく戻ってきました。
王子サイドが長くなりすぎて私の悪いとこが出てるなと反省。
読んでもらえると嬉しいです。
重い……
何が重いって空気が重い。
王子が勝手に伯爵家に来ていたことが判明し、そこまで何とも思っていなかった私と違い、周りの大人たちはそうではなかった。
お父さまは怒り狂い、結界を念入りに張り、その後、激しい怒りを宿した眩しいほどの金色の瞳で移動魔法で何処かに消えた。
まあ、間違いなく王城へ行ったのだろう。
先触れもなく行って大丈夫なのか?と思ったが、あの状態のお父さまに何か言うなんて恐ろしくて出来なかった。
恐らく、王城でも誰も何も言えないだろう。
というか、あんなお父さまを初めて見たので驚きと恐怖が入り交じった何とも言えない気持ちだった。
こんな事になるなら言わなければ良かったのかも知れない。特に気にするような何かされた訳でもないんだし、それに言われた事もそこまで怒り狂う程の事だっだろうか?
正直、次に会ったアシュリー様やいとこ達の個性で忘れかけている。
その親戚達もお母さまの本気の怒りに恐れをなしてすごすごと帰って行った。
まあ、お母さまに嫌われたくなかったというのが本音だろう。
アシュリー様の世界はお母さまを中心に回っているのだから。
そして、おじいさまは相変わらず頭を抱えている。
お母さまも相当お怒りのようで先程から何も喋らない。
重い空気だけを残し、永遠とも思える時間が過ぎていく。
私は自分の軽はずみな言動でこんな事になるとは思っておらず、言ってしまった事を激しく後悔しているとお父さまが帰ってきた。
さぞ、お怒りだろうと思っていると、
「シェリー、お腹空かないかい?本当はあの王子の丸焼きでも食べようかと思っていたんだけど、流石に出来なくてね。ごめんよ。代わりに王族が使っている特別で貴重な食材を根こそぎ仕入れて来たからそれを使った晩餐を作るように執事のほうに言って食材も渡してあるから安心してくれ」
そう、ニコニコしながら告げてくる。
瞳の色はまだ金色に染まっており、お父さまの怒りが消えていないことを示していた。
「お義父さまもそれでいいですよね?」
と、ニコニコしながら聞いているが、この状況で既に食材まで渡しているのにダメだとは言えないだろう。
「あ、ああ」
おじいさまの声は引くを通り越して明らかに恐怖を感じていた。
それはそうだろう。お父さまの言った言葉の中に恐ろしい単語がいくつあったことか。
一国の王子を丸焼きにするだの、それが出来なかった事を謝ってくるだけでなく、王室の貴重な食材を根こそぎ仕入れてきたと本人は言っていたが、実際は奪ってきたのだろう。
よく生きて戻ってこられたな。
私でもそう思ったのだ。貴族の上下関係をよく知っているおじいさまの考えは私には想像もつかない。
そんな空気を破ったのは
「まあ、それは楽しみね。私としては王子の丸焼きも食べてみたかったわ」
というお母さまの言葉だった。
お、お母さま、しょ、正気ですか!?
これにはおじいさまも顔を青くしていた。
「ごめんよ、シャル。次はきちんと仕留めてくるからね」
お、お父さま??王子を狩りの獲物と勘違いしてません?ち、違いますよ?王子は人間で、狩りの獲物じゃないですよ?というより、王族に対してそんな事言っていいんですか!?
恐らく、おじい様も同じような事を考えていたのだろう。座り込んで頭を抱えていた。
いつもならお父さまの暴走を止めるのはお母さまの役目なのに、煽ってどうするんですか!
私は本当に申し訳なくなって、
「ごめんなさい、おじいさま」
と思わず口に出していた。
すると、まるで示し合わせたように
「シェリーが責任を感じる事はない」
「シェリーが責任を感じる事はないわ」
と二人の声がシンクロする。
いや、今のおじいさまを見て何も感じない方がどうかしているのでは?そう思い、
「おじいさまを見てください!この姿を見て何とも思わないんですか!?」
私はそう叫んでいた。
「シェリーは優しすぎるわ」
意外にも先に口を開いたのはお母さまだった。
「正直、私はあの第1王子にはいい感情を持っていないの。妃殿下も王子の考え方や振る舞いに頭を抱えておいでだったわ。時には涙を流しながらどうしたものかと私にお聞きになる事もあったの。それでこの騒動。妃殿下のお気持ちを考えると胸が苦しいわ」
「シャルをこんなに苦しめるだなんてやはりあの王子、消すべきだな」
お母さまを抱きしめ、恐ろしい事を口にするお父さま。流石の私も素敵ー!など言っていられなかった。
伯爵家の調理場の人達大変だろうな。とか、見た事もないような高級食材を大量に押し付けられた執事の思いとか考えると、
迷惑だよなって思いますが、冷静さを失っている人にそんなことまで気が回るわけもないよなとも。
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