王族として 後半◾︎
切る所間違えたかな?とも思ったのですが。
読んでもらえると嬉しいです。
「僕は父上とは違います」
かろうじてそう反論するが、それが許されるとは考えていなかった。
「当然だ。だから、お前が早くその考えが如何に間違っているかを失敗を通して学び、正しい目を持つ人間へと成長することを望んでいた」
父上は、深いため息をつく。そして、言葉を続ける。
「だから、今まで勝手に城下へ遊びに出たりしても知らないフリをしていた。そこで、学んでくれればと思ってな。奴の他にも信頼できる護衛騎士をいつも付けていたのもそう思っての事だ」
その言葉に僕は驚く。アノルドの他に護衛騎士がいたなんて気付きもしていなかったからだ。
「そして、お前はよりにもよって伯爵邸に不法侵入するという法を犯すだけでなく、トラビス家を怒らせ、敵に回したのだ」
「確かに、伯爵邸への不法侵入は僕の落ち度です」
その言葉にギロリと両親から睨み付けられる。
「いえ、私の落ち度です」
僕は慌てて言い直す。
「しかし、その程度でなぜここまで怒られるのです?ハクスレイン伯爵が怒るのなら分かるのですが、なぜトラビス家が怒るのです?」
僕は疑問を口にする。
その言葉に激怒したのは父上でなく、母上だった。
「その程度?ウィルリッヒ、貴方は事の重大性を分かっていないようね!そして、どうして、どうやってあの日トラビス一家がハクスレイン家に行くことを知っていたのです?何故法を犯してまで伯爵家に侵入したのです?何故、このようなことをしたのです?そして何故よりにもよって!」
そこまで言って母上は泣き崩れた。
父上が慌てて母上の肩を抱き、自分の方へ引き寄せる。
気丈な母上が泣く姿を初めて見た僕は自分がとんでもない事をしてしまったのだとようやく気付く。
が、同時にそこまですることか?とも思う。
「申し訳ありません」
とりあえず、謝っておこう。そう思い放った言葉に
「謝る相手が違うだろう」
父上の声はどこまでも冷たかった。
「最初に言った通り、お前は王族としてだけでなく、人として最低な事をトラビス嬢にしていた自覚はあるのか?」
そう尋ねられ、僕は何の話をしているのか分からなかった。
「はぁ、分からないようだな。」
父上の落胆した声が聞こえる。
「では、はっきり言ってやろう。お前は、心の病で療養に来ている令嬢に『もう頭ぶつけなくて大丈夫?』とバカにしながら言ったそうではないか」
その言葉で温室で、トラビス嬢への嫉妬から自分が如何に恥ずかしい行動をしたのかを知る。
「申し訳ありません」
僕はそう言うしか無かった。自分が恥ずかしくてたまらなかった。
と、同時にここまで怒ることでもないだろう。ともまだ心のどこかで思っていた。
「だから謝る相手が違うだろう」
その父上の呆れたような言葉に、
「トラビス嬢に直接会って謝りたいです。場を設けていだけませんか?」
公爵の、そして父上の怒りを解くにはそう言うしか無かった。
しかし、返ってきた言葉は僕の期待したものではなかった。
「無理だ」
その言葉に、トラビス公爵に完全に嫌われる。そう思い、僕は目の前が真っ暗になるような錯覚を覚える。
「お前は、よりにもよってトラビス公爵の愛娘をバカにしたのだ。トラビス公爵の怒りが凄くてな。お前の息子、ウィルリッヒを殺す!そう言って俺の執務室へ怒鳴り込んできたんだ。あんな公爵を見るのは初めてだった。公爵家の勢力を上げてあのガキを殺してもを構わないんだぞ!とまで言ってきた。つまり、処刑覚悟でお前を殺すと言ったきた訳だ。
そして奴は辞表を叩きつけてきた。必死に説得して何とか保留という形にしてあるが、奴はもう王城には来ないだろう」
トラビス公爵が怒鳴り込んできた?
トラビス公爵が僕を殺すと言っていた?
トラビス公爵がもう王城に来ない?
それに、やってる事、言ってる事、全て王族への不敬罪ではないか。
あの、素晴らしいトラビス公爵がそんな愚かな行動を取るなんて……
僕よりあの娘を取るのか?
そんなのおかしい、何よりも優先されるべきは王族ではなかったのか?
でも、父上の怒り方は今まで見てきた中で1番凄かった。瞳の色も怒りから金色に輝いている。
あの、いつも冷静で無慈悲な父上が?
命じればすんだのでは?
しかし、そういう問題では無い事を父上のあの瞳が物語っていた。
目の前の父上と母上は黙って静かに考え込んでいる僕を見つめている。
父上の瞳はいつもの琥珀色に戻っている。
そして、その目からはどこか懇願するような、心配するようなそんな複雑なものを感じた。
そして、それは母上も同様だった。
……僕は間違っていたかもしれない。いや、間違っていたのだ。
両親にこんな顔をさせて僕はようやく自らの過ちに本当に気がついたのだ。
僕は王族なのだ。だから、全ての民は僕の言う事を優先させなければならない。そう教わってきたこともあり、そう思い、信じてきた。
しかし、実際は指導者が決まっても、トラビス公爵に指導を直接交渉でお願いしたりしていた。
その度に体が弱い娘が心配だから無理だと断られ、正直、プライドを傷付けられていたのも事実だ。
王族である僕より娘を選ぶなんてもっての外だと怒りも感じていた。
そのうち、公爵自体を見なくなり、怒りは増すばかりだった。
そして怒りの矛先は当然の如くトラビス嬢へと向かった。
最低だ。王族としてだけでなく、人としても最低な事を何年もし続けていたのだ。
迷惑かけるくらいなら死んでくれないかなとまで考えていた。
そして、あろう事か彼女を前に怒りと嫉妬から彼女を侮辱してしまった。
あんな奇行を行うくらい精神的に病んでいたというのに。
魔術の達人であるトラビス公爵が知らないはずが無い。
あの時はどうかしていたんです。
そんな言葉では許されないだろう。
僕は自分の事ばかりで尊敬するトラビス公爵の令嬢が療養に来ているにも関わらず、傷付ける事をバカにしながら平然と言っていたのだ。
療養の意味を知らない訳ではない。だが、あの時の僕の頭にそんな物はなかった。
それなのに、何も言わず、頭を下げたトラビス嬢の方が余程人間ができているとさえ思える。
その後、傷付いた令嬢は走り去ったが、もしかしたら泣いていたかもしれない。
その上、伯爵邸で言った事すら忘れていたのだ。
最悪だ。
よりによって療養に来ている人間になんという事を。
こんな僕じゃトラビス公爵に避けられていても当然だ。
それに、自分の子供を大事にしない親などいない。目の前の両親の姿を見れば否応なしに思い知らされる。
僕より娘を優先させる事は当然なのだ。
そして、父上に
「牢に入って反省します」
そう告げると、母上はどこかホッとした顔をし、父上は
「それがいいだろう。剣のアシュライン盾のトラビス両公爵あっての今の平和なのだからな。どちらも敵に回すわけにはいかない。お前が罪を認め、改め、自ら苦しい選択をするという事が公爵の辞表を撤回する条件でもあったからな」
つまり、僕が自ら牢に行くという選択をしなければ、王家と対立したという事だったのか。
あの公爵の娘の可愛がり方を思い出し、半端な罰では公爵の怒りが解けることは有り得ない事だったのだ。
そうなれば、国境を守っていた精鋭部隊を引かせ、他国からも恐れられている僕達の国、ワズワール王国の2つの守護神と言っても過言でない片方が居なくなる事で、国境の守備は乱れ、そらに漬け込むように攻め込まれる可能性もあった訳だ。
そんな優秀なトラビス公爵だったからこそ僕は尊敬し、近付きたかったのだが。
改めて自分の考え方の愚かさを思い知らされ、自分の思い上がりを改めて悔いるのだった。
反省を態度で示すにはどうしたらいいか?
僕はその事を真剣に考え、出した答えを口にする。
「入れるなら貴族用ではなく、平民の入る牢にお願いします」
僕にできる精一杯の謝罪と誠意は王族としては前代未聞のこの行動でしか示す事は出来ない。
公爵の怒りがとけ、以前の平和な状態に戻る事を僕は牢の中で祈り続けながら、己の行ってきた行為の数々を反省しよう。
それが今までの僕の行動によって傷つけられた人達への僕にできる精一杯の償いなのだから。
王子は純粋な子供で周りの大人達の意見に染まりやすかった事もあり、根っからの悪い子ではないと思います。
あと、きちんと父親の気質は受け継いでるはず。
これからに期待ですね。
人から言われるより、自分で気付いた方が効果的なのは分からなくもないけど、放置しすぎ!
次も読んでもらえると嬉しいです。




