親として 前編◻︎
前後編になります。
基本、前後編となってしまいます。
よろしくお願いします。
読んで頂けると嬉しいです。
「シャル、どうしたんだい?そんな真剣な顔をして。まぁ、座って。君も飲むかい?」
真剣な顔の原因を察しながらも何も知らないふりをしてシャルにワインを勧める。
シャルは言われた通りに俺の前のソファに座ろうとするが、俺が、ニコニコと笑うと、顔を赤らめ、俺の膝の上に座わる。
この部屋でのシャルの定位置はここなのだ。だが、恥ずかしがって未だにこちらに来ようとせず、顔を赤らめるシャルが可愛くて仕方が無い。
しかし、シャルから返ってきた言葉はいつもより真剣で何かを決意した凛としたものだった。
「シェリーの事で話があるの」
俺はやはりなと思う。シャルの様子から予想はしていた。
シェリーは普段通りだ。でも、何かが違う。今回の事もそうだ。前のシェリーなら絶対にしない事をやっている事が度々ある。俺でさえ何となく気づいていたのだ。母親ならなおのこと当然だ。
そう思っていると、シャルが思わぬ事を提案してくる。
「え?君の実家に療養に?」
療養については俺も考えていた。それはあくまで自分の息子を売り込もうとする夫人達や男避けを万全にした我が家の別荘の話で、シャルの実家の伯爵家は考えもしていなかった。
「今、シェリーが不安定なのはクリスも気付いているわよね?」
その言葉に頷く。
「だから考えたのだけど、知らない使用人がたくさんいる公爵家の別荘より、顔見知りで気心がしれたお父様が居る伯爵家で少しの間療養するのがいいと思うの」
「……」
「もちろん、私も一緒に行くわ。母親だし、本当に心配なの」
その、切実な訴えに確かにお義父様にはシェリーも懐いていたし、それもいいのかもしれないと思う。
それに、伯爵家ならばそこから王城に通うのにも転送術を使わずに済むし、ますますいい考えに思える。
普通に考えると、俺はその提案にすぐに乗っていただろう。
だが、あの家に行けば、あの義妹という名のモンスターもやってくるはずだ。
義妹だけならまだいいが、あの女の事だ息子達も連れてくるに違いない。
挙句の果てには自分の息子の誰かとシェリーを婚約させようとするかもしれない。いや、するだろう。あの女のシャルに対する執念は凄まじい。
それに、 いとこ同士の結婚は禁止されている国もあるが、この国では禁止されていない。
俺が渋い顔をしていると、
「あなたはシェリーが心配じゃないの?」
と、明らかに咎められる。
シャルが俺を名前でなく、あなたと呼ぶ時は内心相当怒っている時だ。
「最近のシェリーはとても5歳とは思えないのよ。考え方や、受け答えが大人びているのは教育のしすぎと血筋のせいだと思っていたわ。でも、子供らしい部分もきちんとあったわ。でも、最近のシェリーはなんて言ったらいいのかしら……子供らしくしているように、見せかけてる時があるような気がするの」
教育のしすぎ、か……
シャルはそう思っていたのか。でも、俺も引く訳にはいかない。
「前にも話したけど、シェリーは俺の目に似て濃さこそ違えど青い目をしている。この目は魔力保持者の証でもあるんだ。だからシェリーは少し大人びていて当然なんだ」
そう答えるが、シャルは納得しない。
「倒れたのも疲れが原因と言われたし、あなたがシェリーを公爵家の名に恥じないよう立派に育てようと厳しい教育をするのも分かるわ。でも、それでシェリーの大事な子供時代に子供らしく過ごせないのはどうかと以前から思っていたの」
以前から思っていたのか。シャルの訴えに俺は深く反省する。
シェリーを守るためと言いながらシェリーを精神的に追い詰め、子供らしさを消してしまったのは血筋ではなく俺だったのかもしれない。
それに確かに、幼い頃に友達と遊んだ想い出は何物にも変えられないものがある。
俺は周りの男共を牽制するあまり、その事を忘れていた。
シャルロットは言う時は言う子です。
ただ、それまでに色々考えちゃう訳ですが。
後編、前編に比べると短めですがよろしくお願いします。




