57話 黒ローブ騎士の正体 2
「立ってばかりでなんだ。座って話すとしよう」
いつの間にか用意された机と椅子に案内され、先に座ったのはラディアント第一王子だ。遅れて二人も座る。
「え、ええ」
先程の言葉、疎外感に少しばかり驚きを隠せなくて反応が遅れてしまう。
「まずは初めから説明をしたほうが分かりやすいな。一番初めはカインか、何故レストを怪しんだ?」
レスト、という名前をカインは聞いたことがなかった。
だが、ここまでの流れでその名前が寡黙の騎士だというのがすぐに理解する。
「怪しんだ、というかそれらしい事を言いましたからね。早く行かないと手遅れになるぞ、と」
「確かに、そんな言葉を聞けば怪しむな。それでティシアに尾行を頼んだという訳か」
「はい。私は大臣派の貴族に用事があったので、する暇がなかったというのが本音です」
カインに頼まれた時、ティシアは救われた。
フィラルシア様を誘拐されてラディアント第一王子は、カインに頼み事をした。それに対してティシアには何も頼まれることはない。
彼女は護衛の中で自分だけが頼りにされないことに歯がゆかった。
ラディアント第一王子に頼まれた仕事、それはカインの得意分野でありティシアがしても足を引っ張るだけ。
だから、代わりをすることもできずただ黙って見ているだけ。主がいない日々を過ごすという罪悪感に圧迫され続けなければならなかった。
それがカインの頼み事、レストの尾行という仕事に救われる。
「なるほど。彼女一人で集められる情報が僅か、だから私に頼み事をしたわけだ」
なるほど、それでラディアント第一王子は調べたのか。合点がいった。
ティシアも役に立つため、彼女は自分が何をすればいいか考えた。その結果がラディアント第一王子を頼る事。
彼女は騎士だ。諜報など、した事もないし三流以下だ。
それなら、情報を集める事が得意な人間に頼るのが得策である。
「今からその集めてきた情報を言おう。まずはレストの家だが、これを見て欲しい」
そう言って渡された羊皮紙、そこにはラディアント第一王子が集めてきた情報が載っていた。
載っているのはレストの家だ。彼の生まれ、親族、経歴などがありそれらを読んでいく。
「まず彼の生まれの家だが、今は既にない」
「どういうことだ?」
貴族の家がなくなる、というのは滅多にない。
何かしら大きな事がない限り、だ。
「前に会った王族の謀反の企て、その責任を取ってレストの家はなくなっている」
「それでない、という事ですか」
「そうでもない。そもそもの時点で、レストの生まれはその家ではなかった」
余計に分からなくなる。どういうことだ? 生まれの家ではない、ということはまさか……。
カインはラディアント第一王子の言いたい事が分かった。
ティシアはまだ分からないらしく、疑問顔で首を傾げている。
「どういうことです?」
「いない家の子になるよう、させられたということだ。誰かが自分の家の子だと知られたくなかったということだ」
カインの予想が正しければ、そういうことだ。答え、という訳ではない。
合っているかどうか、ラディアント第一王子の方を見ると彼はコクリと頷いた。
「結果から言うと、レストは大臣の妾の子だ」
妾、それは正式な妻ではない女性であり、何故大臣がレストの家族を偽ったか、その理由がなんとなくではあるが想像できた。
「この事が他の貴族にバレたら弱みを握られることになるな」
王族に謀反を考えている大臣、そのために自分は弱い所を見せてはいけない。
見せれば最後、喉元を噛み千切られて最後は貴族としての人生が終わる。
謀反をする、ということはそれ相応のリスクがあるのだ。
だから、大臣は妾から生まれた子を他人の家族になるように偽装工作を行った。
レストが大臣の子供、その事実があるだけで色々と黒ローブの騎士の動きが大体予測できる。
「夜に俺を襲ったのも、大臣派の貴族が大臣を急かしたせいか。それで大臣は自分の息子に命じた、と」
「だろうな。今頃、大臣はカインがやられた事にホッとしているだろうな。ただ、死体がないから死んでいるとは思っていないだろうが」
王族に謀反を考え、今まで生きている人間だ。用意周到であり、警戒心も高い。死体がなければまだ生きていると考えているだろうし、他の貴族から急かされたこともあって殺したいはずだ。
大臣派に寝返った貴族ではあるが、王族側に寝返ることもできる。
それをラディアント第一王子は快く受け入れるだろう。
今のパワーバランスを覆すためには、どうしても大臣派を寝返らせるか中立の貴族を取り込むしかないのだ。
そのこともあって急かされている大臣も平常心を保ってはいられないだろう。
「どうします? 大臣が襲ってくる未来が見えますけど」
「奇遇だな、俺もだ」
ふっふっふ、と不敵に笑うラディアント第一王子。何だろうか、凄く怖い。
「襲って来ますかね?」
大臣が襲って来ることに疑惑を抱いたのはティシアだ。
「だって、襲ったらバレますよ。そこまで踏み込んできますかね?」
「来るさ、あれなら来る。それに、バレなければいい。どこかの暗殺者を雇うも良いし、フィラルシアを誘拐したように帝国の人間を偽装させればいい」
フィラルシアを誘拐したのはレストではなく、そして、誘拐したであろう帝国の人間、この二つの線はまだ交わっていない。
しかし、ラディアント第一王子はその線はかなり濃厚だと考えていた。
彼が帝国の人間、という言葉を口にしたカインはふと思い出す。
「そういえば、フィラルシア様を誘拐したのは帝国の兵士なんですか? 私はあのあとから聞いてないんで知らないんですけど」
「正直に言えば分からん。だが、あの武器は帝国が作った物だ。あえて古い武器を使って偽っているようだが、私は帝国だと疑っている。最近、何かとあちらがきな臭くてな」
ほうきな臭い、それは何かが起きているのだろうとカインは予測した。
聞きたい、という欲求もあったがそれを聞いたら最後、またややこしい事に巻き込まれるのは目に見えている。
世の中、踏み込んでいい一線というものがあるのものだ。
「とにかくだ。三日後、大臣派の貴族のとある家と言ったが正確には大臣の家を襲撃する」
「きっぱり宣言しますね、確証は?」
もし襲撃して違いました、となるとかなりの大きな問題になる。
今までの会話を聞いていると、誰がフィラルシアを誘拐したのか全くといっていいほど分かっていない。
そんな状況でもし違えば、かなりの大きな問題になる。
「ないな。だが、残された選択肢はそこしかない。カインはそれまで療養。そしてティシアは攻めに加わるか守るか、どちらかを選んでくれ」
話題を変えたラディアント第一王子に、カインはどうするべきか悩んでいた。
このまま黙って指咥えて見えているか、それとも――――。
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