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始まりの開拓者たち  作者: 高柳神羅
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心通わせて

 殺し合いを繰り広げる2人を、ロネは近くも遠くもない位置で見つめていた。

 此処で立っていても何の意味もないことは、彼自身よく分かっている。

 しかし、安全な場所に身を引くのは現実から逃げているような気がして嫌だったのだ。

 人と、血眼者。ふたつの存在は、本当に分かり合うことはできないのか?

 こうして殺し合う以外に両者が取れる選択肢は存在していないのか?

 イースとは、最後の最後で心が通い合ったのだ。あの時のように、ノースとも話し合える方法が何かしらあるのではないのだろうか。

 考えるが、良い案が浮かんでくるわけもなく。

 ただ、いたずらに時ばかりが過ぎていく。

 アノンは満身創痍だ。剣に身体を蝕まれながら、それに抗い剣を振るっている。

 ノースはアノンからの攻撃を受けて身も心も弱っている。それでもなお、戦っている。

 このままでは共倒れだ。

 そんな状況を、見過ごせるはずがない。

 だが、どうすればいい? どうすれば、この状況をひっくり返せる?

『──ロネ君』

 ふと。名を呼ばれたような気がして、ロネは辺りを見回した。

 家。風呂。天幕。それらが順番に目に映る。

 特に変わったものは見受けられないが──

『ロネ君』

 まただ。小さいが、確かに呼び声がする。

 これは──天幕の方から聞こえてくるようだ。

 ロネは小走りで天幕へと向かった。

 天幕のカーテンを捲り、中を覗き込む。

 アノンの生活スペースになっている天幕の中は、生活用品が散乱して大分狭くなっている。アノン当人は気にしていないのか、片付ける気もないようで、手入れもされず放置されている品も大分見受けられた。

『こっち。此処や、此処』

 声の出所は、その生活用品の山の中からだった。

 こっちか、これかと手に取っては置いてを繰り返し、ロネが選んだのはガラスでできた水差しだ。

 イースが初めて此処に来た時に持っていた品である。

『良かった。声、ちゃんと届いたんやな』

「その声は──イースなの?」

 水差しを見つめて、ロネは問いかけた。

『せや』

 小さな声で、水差しは答えた。

『魂の一部を、こっちに逃がしたんよ』

 その喋り方は、確かに東方神イースのものだった。

 アノンの一撃を受け、剣に魂を取り込まれたはずの──

『いっぺん、じっくり話し合いたい思うてなぁ』

 水差し(イース)は生きていた頃と何ら変わらぬ調子で言った。

『人間と血眼者が共生する、そないな夢みたいな話──本気で実現できる思うてるんよね、君は』

「うん」

 ロネは頷いた。

「イースとはこうして分かり合えたんだもの。きっとできるって、ぼくは思ってる」

『他の者(モン)はそないな風に考えてはおらんようやけどな』

「……何で、皆は争うことばっかり考えるんだろう」

 ロネの疑問に、イースはさあなぁと応えた。

『自分と違うモンを拒絶するのが人間ちゅうもんや。そないに考えるんは不思議なことやあらしまへんよって』

「ノースとアノンの戦いを、ぼくは止めたい。なのに、身体が動かないんだ」

 ロネは俯く。

「今こそ、動かなきゃって思ってるのに」

『ノースは好戦的や。横から何かを言われた程度じゃ止まりまへんで』

 身体があったら、肩を竦めていただろう。そんなニュアンスを含めた言葉を掛けるイース。

 ロネから注がれる視線を受け止めて、しゃあないなと呟いた。

『……自分が言うてみましょ。まあ、無駄やとは思いますけど』

「本当?」

『何や、賭けてみたくなったんですわ。ロネ君の、心遣いに』

 ふふっと笑って、イースはロネに自分を持って現場に行くように促した。

『平穏でいるのがいいんは皆同じや。そういう世を作ってくれる言うんなら、自分はその指標に乗っからせてもらう。単純に、それだけや』

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