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始まりの開拓者たち  作者: 高柳神羅
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殺意を抱く炎

 がいん!

 剣と槌、ふたつの得物がぶつかり、交わる。

 アノンとサウスの力は全くの互角だった。

 このまま力比べになる──かと思いきや。

 サウスの槌が、内から噴き出た炎に包まれた。

 否。

 槌が、炎の集合体と化したのだ。

 急に手応えを失ったアノンの剣が空振りする。炎の間をすり抜けてサウスの胸の前で振り下ろされた剣が動きを止めると、再度炎が集合して槌の形を取った。

 阻むものがなくなった槌が、アノンの頭を打ち抜く。がっ、と鈍い音がして、アノンの額から血が滲み、垂れ落ちた。

 頭の芯を貫く衝撃に、アノンは歯を食いしばる。くらりと揺れる視界を何とか平常に保たせて、彼はサウスの顔に焦点を合わせた。

 剣を持つ手を捻り、振り下ろした体勢のまま剣を相手の心臓めがけて突き上げる。

 それを、サウスは身を引いてかわした。体ひとつ分距離を置き、彼は槌を元の炎へと変えながら笑みの形に作っていた唇を開く。

「汝が手にした東方神の力、出し惜しみしていては我には勝てぬぞ」

 炎が翼のように左右に広がる。

 次の瞬間、凶悪なラインを描く刃が特徴的な大振りの鎌がサウスの手中に出現した。

「見せてみよ。血眼者の魂を喰らう武器の真髄とも呼べる力を」

 鎌を振りかぶり、サウスが1歩を踏み出す。

 相手の狙いが首であると察したアノンは、わざと相手の懐に飛び込んだ。

 柄の長い武器は、懐が死角となる。離れるよりも接近した方が安全なのだ。

 鎌の射程から逃れつつ、下段に構えた剣を振り上げる。

 それは鎌の柄に阻まれて、ぎゃりっと耳障りな音を立てた。

「俺にも都合というものがあるのでね。そう簡単にリクエストに応えるわけにはいかないんだ」

 額から垂れてきた血を舐めて、アノンは笑みを浮かべた。

 剣を両手で持ち、相手の喉元目掛けて振るう。

 剣先がサウスの首を薙ぐ──寸前のところで、サウスは後方に大きく飛び退いた。

 鎌を右手のみで器用にくるりと1回転させ、左手を前方に向けて翳す。

 掌から炎が生まれ、帯状に大きく広がり、幾分もせずに全く同じ形状の得物をもう1本作り出した。

 2本になった鎌を構え、サウスはアノンを見据えて言った。

「それは、我如きが相手では力を振るう気にもならぬという意味か?」

 くっくっと笑い、地を蹴る。

 人の身でこなしたとは思えぬ素早さでアノンとの距離を一気に詰めた彼は、左右から同時に鎌を振り下ろした。

 交差する刃の軌跡を、アノンは上体を反らしてかわした。鼻の上すれすれを通り過ぎていった刃が幾本か髪を薙いだのを感じ取りながら、彼は上体を起こしつつ剣を一閃させる。

 剣先がサウスの腹を引っ掛け、斬り裂いた──が、浅い。

 斬れたのは衣だけだった。ほう、と感心の声を漏らすサウスにはダメージが入っている様子が全くない。

 鎌を携えた両腕を左右に広げ、サウスは目を大きく見開いた。

「ならば、本気にさせてやろう」

 ぼっ、とアノンの胸元に炎の花が咲く。

 ぼっ、ぼっ、と炎は幾つも発生し、人魂のようにアノンの周囲を取り巻いて燃え上がる。

 アノンは表情を険しくして炎を剣で払うが、その程度では炎は消えない。

 そうこうしているうちに炎は連なってひとつの大きな塊となり、アノンの全身を飲み込んで巨大な火柱を上げた。

 炎に閉じ込められたアノンを見つめて、サウスは問いかける。

「さあ、抗ってみせよ。この状況、汝は如何にして切り抜ける?」

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