↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
始まりの開拓者たち  作者: 高柳神羅
PR
55/79

理解し合う者

「ねえ──本当に、ぼくたちとイースは分かり合えないのかな」

 ロネは必死に2人に訴えた。

 彼は戦いの術を持っていない。そんな彼ができる、精一杯の自己主張の仕方であった。

「家族だって言ったじゃない。あったかい言葉だって笑ってくれたじゃない」

「ロネ君」

 ロネを見つめるイース。

 若草色の睫毛を揺らして、彼は微妙に淋しげな微笑を浮かべた。

「隔たりはなくならんのよ……人と、血眼者との間にある壁は」

「分かり合える存在なら、こうして争ったりしない」

 アノンは油断なくイースを見つめたまま、剣を構えた。

 彼は決着を着けるつもりなのだ。そうと分かる気迫が、佇まいから伝わってきた。

「何を言っても無駄だ。血眼者に人間の言葉は通じない」

「それでも──」

 ロネは叫んだ。腹の底から。精一杯に。

「分かり合えないからって、分かろうとする努力はやめたくない!」

「────」

 す、とイースは掌をアノンに向けて翳した。

 ロネへの言葉はなかった。無言のまま、構えを取ってアノンと対峙する。

 アノンが仕掛けた。剣を身体の前で構えたまま、翼を大きく広げ、イースに向かって突っ込んでいく。

 イースの掌が力の塊を生む。空間を歪ませ、圧縮した波動となってアノンへと降り注ぐ。

 アノンは避けない。両肩を切り裂かれながら、剣をまっすぐに立てて、突き出した。

 両者の影が交錯する。

 2人は眼前に迫った互いの顔を見つめ合い──

 イースの掌から、力が霧散して消えていく。

 ロネは目を丸く見開いた。

 がくり、とイースは体勢を崩した。

 淋しげな微笑を浮かべたまま──

 胸の中央を刺し貫いた剣に、左手をそっと触れさせた。

「──もしも」

 ごぷ、と開いた唇から大量の血が溢れて落ちる。

 顎を真紅に染め、イースは呟いた。

「自分が家族になろう言うたら、ロネ君はそれを受け入れてくれますのん?」

「……うん」

 ロネは何度も頷いた。

 見開いた眼から、涙が1粒、ほろりと零れて落ちていった。

「分かり合おうと思えば、仲良くなれるってぼくは信じたいんだ」

「……さいですか」

 イースは静かに目を閉じた。

「あったかい心、おおきに──」

 彼の全身が淡い光に包まれる。

 イースは数多の光の欠片となって、収束するように剣へと吸い込まれていった。

 後には彼が零した血の跡だけが残っていた。

 ふう、と深く息を吐き、アノンは静かに構えを解く。

 1度だけロネの方をちらと見て、すぐに視線をそらし、言った。

「──この世の全てがそれで決着着けられる物事ばかりだったら良かったんだろうがな」

「…………」

 ロネは目を伏せた。

 絶えず吹いていた風が、いつの間にかやんでいた。それはまるで、イースがこの地を去ったことを表しているかのようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。