↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
始まりの開拓者たち  作者: 高柳神羅
PR
53/79

彼の名は

 絶え間なく風が吹いている。

 木々のざわめきに囲まれて佇んでいるのは、イースとアノン。

 そして、そんな彼らを遠くから見守るロネ。

 これから此処で何かがあるにしては酷く穏やかな時が、彼らの間には流れていた。

 それは、まるで団欒をしているかのような、静かさで。

 温かみが、あった。

「お時間は取らせませんよって。安心して下さい」

「それは有難いな」

 翼を広げたアノンは、剣を携えた手を真横に上げて構えた。

「イースは本名なのか」

 彼が質問を口にすると、イースは微笑みながら頷いた。

「ええ。ほんまもんの名前です。もっとも、自分のことを名前で呼ぶんはごく限られとりますけど──」

 胸元に掌を添えて、言葉の続きを口にする。

「東方神。同族の間じゃ、そないに呼ばれとりますわ」

「血眼者の神自ら御足労とはな。そんなに、この開拓地は放置できない場所だったか?」

「開拓地は正直どうでもええんです。自分らがほっとけないんは──」

 ふっと微笑みを消すイース。

 一転して真面目な面持ちになった彼は、アノンが持つ剣を指差した。

「血眼者喰いの武器と、それを操る人間なんですわ」

「狩人さえいなくなれば、開拓地を潰すのは容易い──」

 アノンは口元に僅かに笑みを浮かべて、言った。

「納得だ」

「事情は把握されとるようで、安心しましたわ」

 イースは指差しの手を開いて、掌をアノンへと向ける。

 何もないはずの掌の先に、不可視のゆらめきが生まれ出た。

 揺れ動くそれは、周囲の空気を吸って大きく膨れ上がっていく。

 風の塊だ。イースは風を武器にして、アノンの剣に対抗するつもりなのだ。

「消させてもらいます。貴方と、その武器を」

「文句はないな。あんたの命、狩らせてもらう」

 アノンは宙高く舞い上がった。

 イースが放った衝撃波を身を捻ってかわし、高速でイースの懐に飛び込む。

 両者間の距離がゼロになったところで、剣を振るう。

 イースはそれを風を纏わせた手で掴み取った。しっかりと握っているにも関わらず皮膚が切れないのは、風が膜のように掌を覆っているからなのだろう。

 アノンの全力の一撃を受け止めたイースの腕が、ふるふると小刻みに震える。

 それを何処か嬉しそうに見つめて、イースは唇を開いた。

「ただでは転ばない。結構なことやないですか」

 剣を力で押し返し、アノンから身を遠ざける。

 髪を掻き上げて、彼は不敵な笑みを浮かべた。

「思ってた以上に、楽しませてくれそうですな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。