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始まりの開拓者たち  作者: 高柳神羅
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開拓地の成長と懸念

 四方神の討伐という明確な目標ができた。

 とはいえ、アノンのやることは今までと変わらない。

 鉄を精錬し、開拓に必要な道具を作り、現れた血眼者を狩る。

 そうして一月の歳月が流れた頃。

 遂に、開拓も順調に軌道に乗ったと言えるような出来事があった。

 井戸が完成したのだ。

 最後の蓄えだった鉄鉱石を使って作られた滑車を掘った穴に設置して、蔓を編んで作ったロープに取り付けた木の桶を吊るす。

 その出来栄えに、ロネは大喜びだった。

 自分の力で作ったものが形になったことが嬉しいようだった。

 形になったといえば──

 血眼者の襲撃に遭って壊されたといったこともあったが、ネフェロたちが手掛けていた家も無事に2軒目が建ち、皆の生活の場は天幕から家へと移行した。

 簡素な窓が付いた小さな家だが、それでも天幕よりは広い間取りを備えている。

 風呂があれば文句なしだった、というのはミラノの弁だ。

 それでも、風雨が凌げる場所というのは有難いものであることに変わりはない。

 それは誰でも同じ、であるはずなのだが。

 アノンだけは、家が建った後も天幕生活をやめようとはしなかった。

 当人曰く、長く天幕生活を続けていた身にはこちらの方が性に合っている、とのことだった。

 雑然と置かれている生活用品もそのままに、彼は今日も物資とにらめっこする日々を過ごしている。

 血眼者の襲来に備えて神経を尖らせながら──


「ふっ」

 短く息を吐き、アノンは手にした剣を一閃する。

 鋭い牙を剥き出して彼のことを威嚇していた虎型の血眼者は、眉間を断ち割られてその場にどうっと横倒しになった。

「最近増えたねェ。血眼者」

 虎が討伐されるところを間近で見つめていたネフェロが、言う。

 ここ最近になって急に頻発するようになった血眼者の襲来に思うところがあるようだ。

 以前は数日に1体現れる程度だった頻度が、多い時には1日に数回現れるようになったのだ。これを気にならないと言えば嘘になるだろう。

 剣に付いた血を指先で拭いながら、アノンは虎の死骸を見下ろし、答えた。

「この場所も開拓が進んできたからな。連中が嗅ぎつけてくるのも無理はないだろう」

 血眼者は人類の文明のにおいがする場所に好んで現れる傾向がある。

 此処ら一体で人間が住んでいる場所は此処だけなのだから、目撃例が重なるのもある意味仕方のないことなのだ。

 そっか、と呟いて、ネフェロはふと思い出したように尋ねた。

「そういえばさァ。モノイの方にも開拓地があるって言ってたじゃない? あっちは開拓進んでないの?」

「モノイは──」

 モノイの開拓者の顔ぶれを思い出し、アノンは肩を竦めた。

「先導者がああだからな。あまり期待はできそうにないな」

 ついと肩越しに振り返り、剣を持つ手に力を込める。

「どうなんだ? その辺りは」

「随分とお言葉なのサ。うちだって開拓はちゃんとやってるのサ」

 ぷうと頬を膨らませ、ブリスタは腕を組んだ。

「ただ、『武器』を手に入れる方が何倍も重要だって思ってるだけなのサ。そこは考え方の相違なのサ」

 力説する相方を、アーゼンはやや呆れたような眼差しで見つめている。

 色々と物申したいことがあるのだろうが、この場でブリスタに意見するのは得策ではないと考えているのか、口を挟む気はないようだった。

 ぴっ、と人差し指の先をアノンに突きつけて、ブリスタは声大きく宣言する。

「さあ、今日こそその武器、頂くのサ!」

「…………」

 ゆるりと槍を構えるアーゼン。

 アノンは短く溜め息をついて、彼女たちの方に振り向くと同時に剣を構えたのだった。

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