血眼者の神
「アノン。ちょっといいんだな」
フィレールたちが仕留めた鳥の亡骸の処理をしていると、神妙な顔をしたクレテラが現れた。
顔を上げるアノンの顔に自らの顔を寄せ、クレテラは声を潜めて言う。
「──四方神が現れたんだな」
「────」
アノンの片眉が微妙に跳ねた。
クレテラの声は聞こえなかったらしい、ネフェロが小首を傾げてクレテラに問いかける。
「どうかしたー?」
「……申し訳ない、ちょっとアノンを借りるんだな」
クレテラはアノンの腕に手を回し、アノンを背負い上げた。
2人は天幕まで移動すると、周囲に誰もいないことを確認して中に入る。
車椅子にアノンを座らせて、クレテラは早々に話を始めた。
「いつかは現れると思ってたけど、予想外の早さなんだな」
「──四方神、とは何だ?」
アノンの質問に、一呼吸置いてクレテラは答える。
「血眼者を統べる存在。文字通り、神なんだな」
曰く。数多の血眼者の頂点に立つ存在があるという。
彼らは方角ごとに拠点を構え、それに因んだ名を持ち、血眼者の神としてその存在を誇示していた。
すなわち、東方神。西方神。北方神。南方神。4つの方位を治める4人の神たちだ。
彼らがどのような姿をしているのかは、誰も知らない。四方神に出会ったことのある人間は存在しないからである。
出会ったが最後、敵意を向けられた人間は、その存在を許されはしないだろう。
曲がりなりにも『神』の名を持つ存在だ。普通の血眼者以上に、彼らは危うい存在なのだ。
「四方神を狩ることができれば、計画は大きく前進するんだな。ある意味、これはチャンスなんだな」
「『武器』で倒せるのか? 神に通用するとは思えないんだが」
「そこは安心していいんだな。神とはいっても血眼者に違いはないんだな」
武器で狩れる、と断言して、クレテラはアノンの左手を取った。
いつになく真剣な眼差しでアノンの顔を見据えて、力の篭った言葉を紡ぐ。
「アノン……君が頼りなんだな。計画を成功させるために、どうか四方神を倒してほしいんだな」
「……了解した」
アノンは頷いた。
「相手が此処に出向いてきた時は──全力で戦おう。刺し違えてでも、倒してやるさ」
うん、と相槌を打って、アノンの手を離すクレテラ。
「頼んだんだな」




