井戸掘り奮闘記
ごろごろとした石をバケツに積み込んで、ロネは穴の外にいるシャロンに声を掛けた。
「石入れたよー」
合図を待っていたシャロンが、バケツに結わえ付けたロープを引っ張り石を運び出す。
彼の周囲には、これまでに運び出した泥や石が大量に積み上げられていた。
「石が出てくるようになったか」
バケツから石を取り出したところで、アノンが様子を見にやって来た。いつもの翼を生やした姿ではなく、完成して間もない車椅子に乗っている。
「水が染み出してくるようになったか?」
穴の中に問いかける。
ロネはうんと頷いて、シャベルの先端で壁を擦った。
粘土層の土壁が、湧き水でしっとりとしている。それを改めて確認し、彼は穴の底から外を見上げた。
「ちょっとずつ出てきてるよー」
「そこまで来たのならもう少しだな」
アノンは剣を手に取り、車椅子を降りた。
穴の中に自ら潜り込み、壁に手を触れる。
冷やりとした感触を確かめて、彼はロネに言った。
「水が本格的に湧き出してきたら、掘るのは終わりにして水の汲み出し作業に移る。此処は少し周囲を広めに掘ってくれ」
「はーい」
アノンは穴から出て、車椅子に腰掛けた。
「そろそろ滑車が必要になるか。作っておこう」
「いたいた。アノン、ちょっとー」
天幕に引き返そうとしたところで、彼を呼ぶネフェロの声。
鋸を肩に担いだネフェロは、のんびりとした足取りでアノンの傍へとやって来た。
「釘がなくなりそうなんだけど、何とかなるかなァ?」
「あれだけあったのがもうなくなったのか」
「んー、結構使うからねェ」
家作りも2軒目となると慣れからか作業もスムーズに進むようである。
分かった、とアノンは頷いた。
「作っておく。釘が尽きたらすまないがこっちの作業を手伝ってやってくれ」
井戸を視線で指し示し、彼は天幕に向けて車椅子を転がした。
「滑車に……釘に……結構大量に使うな」
移動しながら、アノンは呟いた。
「また近いうちに採掘に出てもらわなければならないな」
鉄鉱石は、開拓作業が進むにつれて消費が激しくなっていた。
初めの頃にネフェロたちに採ってきてもらった蓄えは、今では大分少なくなっている。底をつくのは、この消費ペースだと時間の問題だろう。
今後の予定を思案しつつ、彼は天幕のカーテンを寛げた。




