オリーブオイル作り
畑の一角に、木が連なって生えている。
その木々の真下に立って、イースとセレヴィはきらきらと濡れ光る枝葉を見上げていた。
「これはまた立派な木ですなぁ」
「オリーブですね」
鈴なりに実っている果実をひとつ指でもいで、セレヴィは言った。
「オリーブは2種類以上の品種を一緒に植えなければ実が生らないんですよ。苗木がそれぞれ違った種類だったとは僥倖でしたね」
「へぇ。物知りですな、セレヴィさんは」
「一応、学者ですから……」
手にした桶に、収穫した果実を次々と入れていく。
雨上がりに採れた果実は、雨の雫を纏った宝石のようにつやつやと輝いていた。
「これだけあれば、良い油ができそうですね」
「こっちのトマトとかは? 収穫してええんですのん?」
「はい。そちらはお願いしても宜しいでしょうか?」
「了解ですわ」
2人はそれぞれ分担して、畑の実りを収穫していく。
採れた野菜は畑の横に待機させている荷車の中へ。この荷車はセレヴィが設計図を描き、アノンが製作したものだ。
「大漁、大漁」
収穫した野菜を載せた荷車を引いて、キャンプに戻る2人。
「ミラノさん。良いオリーブが採れましたよ」
荷車を倉庫の前に停め、桶を持って竈の前にいるミラノの元へ行く。
ミラノは鍋を持ってくると、その中に収穫したオリーブの実を入れた。
「早速油にしましょうか」
オリーブの実を潰し、丁寧に揉む。
ひたすら、油の粒のようなものが出てくるまで揉み続け、オイルと果肉が分かれてきたら洗っておいた麻袋に入れる。
袋に入れた果肉を搾ると、青い色のオイルが袋から染み出てきた。それを別の鍋に入れ、貯めていく。
フルーティーな香りに、へぇ、と言いながらイースが鍋を覗き込んだ。
「何や、油っぽくない匂いですなぁ」
「これを一晩置いておくと、果汁とオイルに分離するのよ。そうしたらオイルの部分だけを掬って、できあがりよ」
「ほー」
人差し指の先をオイルに付けて、ぺろりと舐めるイース。
「うん、果物みたいな味がしますな」
「油が手に入ったのは有難いわ。色々な料理に使えるもの」
言いながら、ミラノは鍋を天幕へと運んでいった。
「1から油を作るなんて、そんなことまでやっとるんですか。此処では」
感心の声を漏らすイースに、セレヴィは微苦笑しながら答えた。
「何もないですからね。此処は……」
最初なんてただ焼くだけしかできなかったんですよ、と言って、彼は空の桶を拾った。
「さ、採った野菜を倉庫に片付けないと」
天幕の方に注目しているイースに声を掛ける。
ふうん、と鼻を鳴らして、イースは先に倉庫へと向かったセレヴィの後を追いかけた。




