新たな家族
「自分、イースいいます。東の方から旅してきましてん」
騒ぎを聞きつけて集ったフィレールたちに囲まれて、名乗りを上げた男は濡れた髪を手櫛で掻きながら語り始めた。
「生き残りの人類を探して都市の跡地を巡ってたんやけど──」
自分に注目している人間たちの顔を順番に見つめる。
「まさかこれだけの人数で跡地を開拓しようとしてるなんて、びっくりですわ」
話を聞くまでは、単なる野営地でサバイバルをしているだけの集団だと思っていたらしい。
イースは指先で頬を掻き、目の前のアノンに注目した。
「本気で争う気なんですかいな、血眼者と」
「ああ」
アノンは椅子の背凭れに立て掛けていた剣を手に取って、それを見せるように身体の前で構え、言った。
「やられてばかりじゃいられないからな」
「少なくともオレたちは命を懸けてるぜ。やってることは単なる家作りかもしれねぇけどな」
フィレールの言葉に、シャロンが相槌を打った。
ネフェロはにこにこと笑顔で彼らの会話に耳を傾けている。
成程、とイースは頷いた。
「人間はしぶとい、納得ですなぁ」
「他に生き残りを探してるならモノイに行くといい。そこにも一応開拓者はいる」
一応、の部分を強調して言うアノン。
彼からしてみれば、あれらを開拓者として見るにはいささか難儀な部分があるのだろう。
いや、とイースはかぶりを振った。
「皆さんに会うたんで、跡地巡りはもうええかな思てます」
旅をするのもなかなかしんどいんですわ、と言って、彼は肩を竦めた。
「皆さんさえ良ければ、此処に住まわせてもらえないかなぁと。ちゃんと働きますよって」
「家族が増えるの?」
ロネの言葉に、ぱっと表情を明るくしてイースは応えた。
「家族! いいですなぁ~、あったかい言葉、久々に聞きましたわ」
「此処は、来る者は拒まない。あんたがいたいと思うなら、いればいい」
椅子に座り直し、アノンはイースの顔をまっすぐに見つめた。
「その代わり、客人としては扱わない。開拓者の一員として扱わせてもらう」
「おおきに!」
イースはアノンの手を取り、ぶんぶんと上下に振った。
唐突の出来事に、アノンの表情が呆けたものに変わる。
それを見たネフェロがあははと声に出して笑った。
「アノンでもそんな顔するんだ。初めて見たよ」
「皆さん、よろしゅうに!」
ぴっ、と敬礼のポーズを取って満面の笑顔を浮かべるイース。
その子供のような振る舞いに、ロネもつられて笑ったのだった。




