彩のある食卓を
トントントン……と小気味良い音が響いている。
ミラノがまな板の上で食材を切っている音だ。
シャロンの狩猟の成果、セレヴィとロネの畑の世話の甲斐があって、決して多くはないが彩りのある食材が彼女の手元にはあった。
開拓初日と比較すると雲泥の差である。
特に、塩。これの存在が、料理にバリエーションを齎していた。
同じ食材でも塩があるかないかによって、味が全く異なるのだ。
無理を言って持ってきてもらって良かった、と彼女は塩の存在に感謝した。
「塩があるなら胡椒も欲しくなるわよね」
シャロンが採ってきた名前も分からない林檎のような果物を細かく刻みながら、呟く。
「油も欲しいわ。……って言うのは贅沢かしら」
切った果物は鍋に入れて、鹿肉の角切りと一緒に煮込む。
肉の脂が程好く染み出て味が付いたところに、塩をひとつまみ。
「何処かにオリーブの木でも生えてないかしらね」
竈の火加減を確認し、薪を足す。
茄子を輪切りにし、鍋に入れて、中身がしっかり混ざるように掻き混ぜる。
全てに熱が十分に通ったら竈から鍋を下ろし、器に見栄えが良くなるように中身を盛り付ける。
もう1品くらい作ろうか……と思考を巡らせているところで、採集から帰ってきたシャロンがやって来た。
「ミラノ殿」
「お帰りなさい。何か採れた?」
問いかけると、シャロンは小脇に抱えていた麻袋を地面に下ろした。
口を開けると、中から大量の草が出てきた。
「食せる野草を採ってきた」
「草?」
どう見てもただの雑草にしか見えないそれに、ミラノは目を瞬かせる。
サラダ菜だと思えば……食べられるのかしら?
草笛の草によく似た形の葉を手に取って、彼女は尋ねた。
「生で食べられるの?」
「問題ない。我がよく口にしていた葉だ」
「へぇ」
葉を袋に戻し、空になった鍋を片手に立ち上がる。
「せっかくだし、その葉っぱで何か作りましょうか。洗いたいから川まで運んでくれる?」
「承知した」
「あー、お腹空いたー。御飯できてるー?」
遠くから鋸を担いだネフェロがやって来た。
働き盛りの食いしん坊たちがいるから、作り甲斐があるわよね。
ふっと笑って、ミラノは声を張り上げた。
「もう少しでできるから待っててちょうだい!」




