山からの凱旋
黒い巨体が夜の闇に紛れて空から舞い降りる。
翼を畳んで地に伏せた竜の背から、見慣れた顔が飛び降りた。
「ただいまー」
夕飯の仕度をしていたミラノが顔を上げると、満面の笑みを浮かべているネフェロと目が合った。
「あら、お帰り。お勤めは果たせたの?」
「もちろん。たっくさん採ってきたよォ」
背負っていた麻袋をどさりと下ろす。
袋の口を緩めると、大小様々な大きさの鉱石がごろごろと姿を覗かせた。
「これだけあれば、色々作れるんじゃないかなァ。ねぇアノン?」
後方に振り返り、竜を見る。
アノンは首を持ち上げて翼を大きく広げる格好を取ると、元の人間の姿へと戻った。
具現化させたままの翼で宙に舞い上がり、ネフェロたちの隣に並ぶ。
「そうだな」
袋の中に手を入れて、鉱石をひとつ取り出し、彼は、
「良質の鉄鉱石だ。明日にでも加工して、道具を作ることにしよう」
「設備も何もないのに、鍛冶作業なんてできるのですか?」
セレヴィは小首を傾げた。
アノンはそんな彼に頷いて、鉱石を袋の中に戻した。
「剣の能力を使えば可能だ」
「その剣、そんなことまでできるんだ?」
同じ剣使いのネフェロが、興味津々とアノンの剣を見る。
「オレもその剣使えば、そういう色々なことができるようになるのかなァ?」
「……残念だがそれは無理だ。この剣は、誰にでも使えるというわけじゃない」
アノンは肩を竦めて、身体の前に剣を持ってきた。
「この剣が誰にでも使えるなら、俺はとっくの昔に狩人を引退しているさ」
「そっかァ」
「さ。晩御飯にしましょ。皆手を洗ってきてちょうだい」
ミラノは肉を盛り付けた器を片手に、竈の前で立ち上がった。
「今回から野菜があるわよ」
「御飯が進化したんだ。嬉しいねェ」
麻袋の口を閉じ、ネフェロはぴゅうと口笛を鳴らした。
「お腹一杯になるだけでも嬉しいけど、やっぱり御飯は美味しい方がいいよねェ」
返事はない。が、皆もそれには同意しているようで。
一同は各々の作業を切り上げて、夕飯のために手を洗いに川へと向かったのであった。




