おまかせ狩猟生活
蔓を編んで作ったロープがあちこちに張り巡らされている。
ロープを手で伝い、張り具合を感触で確かめながらシャロンは森の中を歩いていた。
「……この気配」
呟きつつ、彼はある場所に向けて歩を進める。
特にロープが重点的に張り巡らされている場所に近付き、そこを覗き込めば。
「──鹿か」
ロープに絡まって身動きが取れなくなった小さな鹿が、ぐったりとした様子で横たわっていた。
ロープはシャロンが仕掛けた罠なのだ。彼はこの仕掛けを用いて、獲物を手に入れていたのである。
鹿はすぐに血抜きをして、内臓を抜き取り処理をする。
獲物を肩に担ぎ上げ、彼は辺りを見回した。
鬱蒼と茂る緑の波が、何処までも続いている。
獣の声に耳を傾けつつ、彼はキャンプに向かって来た道を戻り始めた。
水汲みに使っているいつもの川に到着すると、担いでいた鹿を下ろして、解体の仕度を始める。
ナイフを綺麗に水で洗い、内臓を抜く際に開いた腹から丁寧に皮を剥いでいく。
頭と骨を取り外し、素材になりそうな部分は選り分けて傍らに置いておく。
肉の塊は血の処理をして、運びやすい大きさに切り分ける。
そうして一連の作業を終え、シャロンは自身の腕や腹に付いた血を水浴びをして洗い流した。
肉を持ち、キャンプへと戻る。
肉はミラノへと渡し、もう1度川へ。
剥いだ皮と骨を水洗いし、よく絞ってから川原の上に広げて乾燥させる。
これらは以前手に入れた皮や骨同様に道具や衣服を作るのに使うのだ。
特に皮は、布がない現在の環境下ではかなり重宝した。
そろそろ何か作れるだろうか、と思案しつつ、シャロンは川原に腰を下ろして鹿の骨を手に取った。
最も太い部分にナイフを当て、少しずつ表面を削っていく。
作業を始めて数時間。
小刀の形になった骨を眼前に翳し、彼は納得した様子で頷いた。
傍の木に引っ掛かっていた蔦を採取し、葉を取り外して、骨の削っていない部分に丁寧に巻き付けていく。此処は持ち手となる箇所だ。
そうして完成した小さなナイフを携え、残りの骨と乾燥させていた皮を手に、彼は川を後にした。
空は日が大分西に傾き、薄暗くなり始めていた。
川と骨は天幕へと片付けて、竈へと足を運ぶ。
竈では、ミラノが鍋でとうもろこしを茹でていた。
「丁度茹で上がったところよ」
ミラノは鮮やかな黄色に色付いたとうもろこしを湯から上げ、サバイバルナイフで食べやすい大きさに切り分けた。
一切れをシャロンに渡し、残りは器に盛り付ける。
「どうかしら」
「ふむ」
シャロンはとうもろこしを口へと運んだ。
咀嚼して、ゆっくりと飲み込む。
「甘いな」
「そう?」
「我の好みの味だ」
「それなら良かったわ」
「あっ、コーン茹でたの?」
ひょっこりと顔を出したロネにもとうもろこしを振る舞う。
「やっぱり、野菜があるっていいわね。料理の幅が広がるわ」
「甘くて美味しいー」
ロネは笑顔でとうもろこしを頬張っている。
僅かながら華やかになった食卓に、ミラノは満足そうに微笑んだ。
「やっと料理人の本領が発揮できるってものよ。夕飯は期待しててちょうだい」




