大道具の重要性
「設計図?」
「はい」
鸚鵡返しに問うてくるアノンにセレヴィは言った。
「設計図に書き起こした品を作って頂けないかなと思いまして」
開拓に必要不可欠な大型の道具を、設計図に書き起こして製作する。
セレヴィがアノンに持ちかけたのはそういう話だった。
先のミラノの話にあった荷車などがその筆頭だ。
小道具だけではない、大道具を揃えて開拓をするための力にする。それが重要なのではないかと彼は考えたのだ。
「実際に作業を行ってみて、開拓に必要なのは小道具ばかりではないと思ったのです」
「成程な」
アノンは相槌を打った。
「俺は殆ど動いてないからな。俺よりは、あんたたちの声を聞いた方が何を必要としているのかが分かるか」
「引き受けて頂けるでしょうか」
「善処しよう。むしろ何が必要だと言ってくれた方が、俺の方としても有難い」
家の設計図を描いた紙を引っ張り出して、それをセレヴィに手渡す。
「設計図を描くならそれの裏を使ってくれ」
「ありがとうございます」
「とりあえず、鉄が手に入り次第畑仕事の道具を作ることは決まっている。作るとしたらその後だな」
椅子の背凭れに立て掛けていた剣を手に取り、椅子から降りる。
背に翼を召喚して、彼は重たい身を持ち上げた。
「車椅子を作られた方が宜しいのでは?」
セレヴィの提言に、アノンは肩を竦めた。
「俺にはこれがあるし移動が全くできないわけでもないから大して気にもしてなかったが、やはりあった方がいいか?」
「移動の度にいちいち剣を持つのは大変そうだと思っただけでして、貴方が気になさってないのでしたら無理に言うつもりは」
「能力を使うのが全く苦じゃない、というわけじゃない。ただ優先順位が低いからほったらかしになっていただけさ」
椅子をちらと見て、言う。
「暇を見て車を付けておくよ」
「何処かへお出かけですか?」
「木材置き場の方に、ちょっとな」
ばさりと翼をはためかせ、彼は天幕の外に出て行った。
1人残されたセレヴィは、設計図に視線を落として、よしと小さく頷いた。
書く物を調達して──仕事はそれからだ。




