表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/11

発見

オイラはせいじょと一緒に、

赤い球を拾ってかかしに渡した。

「かかしのくいものになる」

そう、

せいじょは言っていた。


でも、赤い球がキレイだから、

オイラは一つ隠しておいた。

そして、たまに眺めていた。


その赤い球が、

なんだか変なことになっている。


「せいじょ、かかし、こっち来て」

オイラは二人を呼んだ。


せいじょとかかしがやってくる。


赤い球がなんか変なんだ。


せいじょとかかしが覗き込む。


赤い球は、赤くなったり、黒くなったりしている。


「これどうしたの?」

せいじょに聞かれた。


「キレイだから、ひとつ持ってたんだ」

オイラは答えた。


「あっ……、怒ってるんじゃないの。

なんでこうなっているのか知りたいの」

せいじょはオイラの頭を撫でた。


良かった。

せいじょは怒ってない。


オイラは教会の庭の隅っこのほうに二人を連れて行く。

「ここの砂の中に隠しておいたんだ」


「いつから?」

せいじょは尋ねる。


「一月ほど前」

オイラは答えた。


「かかし。一月ほど前に渡した赤い球、ある?」

せいじょはかかしを見た。


「こっち……こっち……」

かかしは、赤い球の保管場所に案内してくれた。


「一月以上前のモノはある?」

せいじょは確認する。


「これがそう」

かかしは指をさした。


オイラの持っていた球のようにはなっていない。


オイラの持っていた赤い球が、

熱くなっていく。


「熱くなってきた」

オイラはせいじょとかかしに見せた。


「なんか様子がおかしいから、外に持っていきましょう」

せいじょは言った。


オイラは走って、庭の隅っこに向かう。

そして、そーっと球を置いた。


(ぱきぱきぱき)

赤い球から音がする。


「なんか割れたよ」

オイラは指をさす。


せいじょはオイラを引っ張り、

抱きしめる。

せいじょの良い匂いがする。

せいじょは震えていた。


「大丈夫。私が守ってあげる」

せいじょはそう言った。


「怖いの?」

オイラは尋ねた。


「怖くない」

せいじょは言った。


(ぱん)

赤い球は砕け散り、

中から、

小さな甲虫が二匹出てきた。


「せいじょ。なんか赤い球から虫が出てきたよ」

オイラは言った。


せいじょは恐る恐る見る。

「本当だ」


せいじょは、甲虫をじっと観察する。

「これ、オスとメスだ」

そう言った。


「かかし。これどういう事かわかる?」

せいじょは尋ねた。


「これは実験動物です」

かかしはそう答えた。


「こいつらもオイラ達と一緒だ」

オイラはうれしくなった。


「もしかして、つがいを入れて、生存できるか確認してるってこと?」

せいじょはかかしをじっと見た。


「そうです」

かかしは答えた。


「ねぇねぇ。つがいって何?」

オイラは聞いた。


「この甲虫はオスとメスなの。それがつがいよ」

せいじょは答えた。


「なんでつがいで入れるんだ」

オイラは聞いた。


せいじょは真っ赤になって黙り込んだ。


「つがいだと、繁殖します」

かかしは答えた。


「繁殖って?」

オイラは聞いた。


「数が増えるってことです」

かかしは答えた。


「もしかして、今、虫や鳥が増えたのも、同じようなこと?」

オイラは尋ねた。


「そうです。赤い球が別の世界から、つがいを連れてきます」

かかしは答えた。


「えっ、じゃあ赤い球を集めるのは良くないの?」

せいじょは尋ねた。


「別に良くないわけではないです。赤い球は必要です」

かかしは答えた。


「取り過ぎたら良くないってこと?」

オイラは尋ねる。


「そうです」

かかしは答えた。


「今ある分でどれくらい持つの?」

せいじょはかかしを見た。


「五年分はあります」

かかしは答えた。


「ラーチ、しばらく赤い球を集めるのは、やめにしましょ。

かかし……、

その方が早く、この世界が回復するっていうことよね」

せいじょは言った。


「その可能性は高いです」

かかしは答えた。


せいじょは、

それを聞いて、ぼーっとしていた。


オイラは、せいじょがどうしたのかわからなかった。

でも、

聞いたら嫌がられるんじゃないかと思った。


……


湖にスライムを置いてから、三月ほど経った。

オイラ達は再び、湖に向かった。


ところどころあった赤い花はすっかりなくなり、

スライムたちの姿もまばらになっていた。


「スライム達はどこに行ったの?」

せいじょはきょろきょろしている。


「赤い花ばかり食ってるから、赤い花を探して遠くに行ってるんだ」

オイラは答えた。


「ふーん。そうなんだ」

せいじょは頷いた。


湖についた。

湖の周りからはすっかり赤い花は消えていた。

湖の中も透明になっていた。


「これだったら魚が釣れるね」

オイラは言った。


「水がキレイになって間もないから、魚がいたとしても、数が少ないんじゃない?」

せいじょは言った。


「せいじょ。頭いいな」

オイラはせいじょの頭を撫でた。


せいじょは驚いた顔をしたが、

目を閉じ、

少し嬉しそうだった。


なんかすごく可愛らしく思えた。


「あと半年くらいしたら、魚を獲っても良いと思います」

かかしは言った。


「じゃあ半年待とうか。その時は私にも釣りを教えてね」

せいじょはそう言い、オイラの頭を撫でてくれた。


「うん。わかった」

オイラは答えた。


オイラ達は教会に戻ることにした。


教会に戻る途中、

二匹の犬がいた。


「うわ。犬だ」

オイラは近寄ろうとすると、せいじょが手を引っ張った。


「ダメ。あれは犬じゃない。オオカミよ」

せいじょは言った。


「あれは犬っていうんだよ」

オイラはせいじょに言う。


「いいえ。あれは犬の仲間のオオカミという動物なの。人や家畜を襲うわ」

せいじょは、身構える。


犬は近づいてくる。

怖い感じはしない。


「せいじょ。手を放して。オイラが行くから」

そう言うと、

せいじょは手を放した。


オイラは、

しゃがみ込み、手を差しだした。

犬がオイラの手の匂いを嗅ぐ。

オイラだけではなく、

せいじょやかかしの匂いも嗅ぐ。


「ねぇ。かかし。この犬ってオオカミよね」

せいじょは尋ねる。


「はい。オオカミです」

かかしは答えた。


「じゃあ、逃げないと危ないんじゃない?」

せいじょの顔はこわばっている。


「いえ、この個体に殺意はありません。

単なる好奇心で、近づいてきているだけです」

かかしは答えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ