発見
オイラはせいじょと一緒に、
赤い球を拾ってかかしに渡した。
「かかしのくいものになる」
そう、
せいじょは言っていた。
でも、赤い球がキレイだから、
オイラは一つ隠しておいた。
そして、たまに眺めていた。
その赤い球が、
なんだか変なことになっている。
「せいじょ、かかし、こっち来て」
オイラは二人を呼んだ。
せいじょとかかしがやってくる。
赤い球がなんか変なんだ。
せいじょとかかしが覗き込む。
赤い球は、赤くなったり、黒くなったりしている。
「これどうしたの?」
せいじょに聞かれた。
「キレイだから、ひとつ持ってたんだ」
オイラは答えた。
「あっ……、怒ってるんじゃないの。
なんでこうなっているのか知りたいの」
せいじょはオイラの頭を撫でた。
良かった。
せいじょは怒ってない。
オイラは教会の庭の隅っこのほうに二人を連れて行く。
「ここの砂の中に隠しておいたんだ」
「いつから?」
せいじょは尋ねる。
「一月ほど前」
オイラは答えた。
「かかし。一月ほど前に渡した赤い球、ある?」
せいじょはかかしを見た。
「こっち……こっち……」
かかしは、赤い球の保管場所に案内してくれた。
「一月以上前のモノはある?」
せいじょは確認する。
「これがそう」
かかしは指をさした。
オイラの持っていた球のようにはなっていない。
オイラの持っていた赤い球が、
熱くなっていく。
「熱くなってきた」
オイラはせいじょとかかしに見せた。
「なんか様子がおかしいから、外に持っていきましょう」
せいじょは言った。
オイラは走って、庭の隅っこに向かう。
そして、そーっと球を置いた。
(ぱきぱきぱき)
赤い球から音がする。
「なんか割れたよ」
オイラは指をさす。
せいじょはオイラを引っ張り、
抱きしめる。
せいじょの良い匂いがする。
せいじょは震えていた。
「大丈夫。私が守ってあげる」
せいじょはそう言った。
「怖いの?」
オイラは尋ねた。
「怖くない」
せいじょは言った。
(ぱん)
赤い球は砕け散り、
中から、
小さな甲虫が二匹出てきた。
「せいじょ。なんか赤い球から虫が出てきたよ」
オイラは言った。
せいじょは恐る恐る見る。
「本当だ」
せいじょは、甲虫をじっと観察する。
「これ、オスとメスだ」
そう言った。
「かかし。これどういう事かわかる?」
せいじょは尋ねた。
「これは実験動物です」
かかしはそう答えた。
「こいつらもオイラ達と一緒だ」
オイラはうれしくなった。
「もしかして、つがいを入れて、生存できるか確認してるってこと?」
せいじょはかかしをじっと見た。
「そうです」
かかしは答えた。
「ねぇねぇ。つがいって何?」
オイラは聞いた。
「この甲虫はオスとメスなの。それがつがいよ」
せいじょは答えた。
「なんでつがいで入れるんだ」
オイラは聞いた。
せいじょは真っ赤になって黙り込んだ。
「つがいだと、繁殖します」
かかしは答えた。
「繁殖って?」
オイラは聞いた。
「数が増えるってことです」
かかしは答えた。
「もしかして、今、虫や鳥が増えたのも、同じようなこと?」
オイラは尋ねた。
「そうです。赤い球が別の世界から、つがいを連れてきます」
かかしは答えた。
「えっ、じゃあ赤い球を集めるのは良くないの?」
せいじょは尋ねた。
「別に良くないわけではないです。赤い球は必要です」
かかしは答えた。
「取り過ぎたら良くないってこと?」
オイラは尋ねる。
「そうです」
かかしは答えた。
「今ある分でどれくらい持つの?」
せいじょはかかしを見た。
「五年分はあります」
かかしは答えた。
「ラーチ、しばらく赤い球を集めるのは、やめにしましょ。
かかし……、
その方が早く、この世界が回復するっていうことよね」
せいじょは言った。
「その可能性は高いです」
かかしは答えた。
せいじょは、
それを聞いて、ぼーっとしていた。
オイラは、せいじょがどうしたのかわからなかった。
でも、
聞いたら嫌がられるんじゃないかと思った。
……
湖にスライムを置いてから、三月ほど経った。
オイラ達は再び、湖に向かった。
ところどころあった赤い花はすっかりなくなり、
スライムたちの姿もまばらになっていた。
「スライム達はどこに行ったの?」
せいじょはきょろきょろしている。
「赤い花ばかり食ってるから、赤い花を探して遠くに行ってるんだ」
オイラは答えた。
「ふーん。そうなんだ」
せいじょは頷いた。
湖についた。
湖の周りからはすっかり赤い花は消えていた。
湖の中も透明になっていた。
「これだったら魚が釣れるね」
オイラは言った。
「水がキレイになって間もないから、魚がいたとしても、数が少ないんじゃない?」
せいじょは言った。
「せいじょ。頭いいな」
オイラはせいじょの頭を撫でた。
せいじょは驚いた顔をしたが、
目を閉じ、
少し嬉しそうだった。
なんかすごく可愛らしく思えた。
「あと半年くらいしたら、魚を獲っても良いと思います」
かかしは言った。
「じゃあ半年待とうか。その時は私にも釣りを教えてね」
せいじょはそう言い、オイラの頭を撫でてくれた。
「うん。わかった」
オイラは答えた。
オイラ達は教会に戻ることにした。
教会に戻る途中、
二匹の犬がいた。
「うわ。犬だ」
オイラは近寄ろうとすると、せいじょが手を引っ張った。
「ダメ。あれは犬じゃない。オオカミよ」
せいじょは言った。
「あれは犬っていうんだよ」
オイラはせいじょに言う。
「いいえ。あれは犬の仲間のオオカミという動物なの。人や家畜を襲うわ」
せいじょは、身構える。
犬は近づいてくる。
怖い感じはしない。
「せいじょ。手を放して。オイラが行くから」
そう言うと、
せいじょは手を放した。
オイラは、
しゃがみ込み、手を差しだした。
犬がオイラの手の匂いを嗅ぐ。
オイラだけではなく、
せいじょやかかしの匂いも嗅ぐ。
「ねぇ。かかし。この犬ってオオカミよね」
せいじょは尋ねる。
「はい。オオカミです」
かかしは答えた。
「じゃあ、逃げないと危ないんじゃない?」
せいじょの顔はこわばっている。
「いえ、この個体に殺意はありません。
単なる好奇心で、近づいてきているだけです」
かかしは答えた。




